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IT企業からそごう・西武に転身 異色の百貨店マンがオープンイノベーションで開発するD2C売り場

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 そごう・西武は9月、西武渋谷店パーキング館1階に、D2Cブランドを集めた売り場「チューズベース シブヤ(CHOOSEBASE SHIBUYA以下、チューズベース)」をオープンする。約700平方メートルの売り場は「メディア型OMO※1ストア」をうたい、D2Cブランドと消費者とが出合い、購入できる場を目指す。同事業を率いるそごう・西武の伊藤謙太郎事業デザイン部新業態推進担当部長は、広告代理店やIT企業を経てそごう・西武に入社した、百貨店業界では異色の経歴の持ち主。「チューズベース」は変革を迫られている百貨店ビジネスにどのような刺激を与えるのか。伊藤部長に聞いた。
※1 オンラインとオフラインの融合

WWD:「チューズベース」事業立ち上げの経緯は。

伊藤謙太郎そごう・西武事業デザイン部新業態推進担当部長(以下、伊藤):前職は広告代理店やIT企業でクライアントのコンサルティングのような仕事をしていたが、その中で「実業がしたい」という思いが募り、取引先だったそごう・西武への入社を決めた。入社後もデジタル領域に興味があって、「百貨店としてこういうことをやるといいのに」といった案を持っていたが、大きな組織の中ではそういったアイデアを部分最適の形で生かすことはできても、一気通貫で実現することが難しい。むしろ、ゼロから新規事業として立ち上げた方が早い。それで2019年春に(林拓二)社長に事業案をプレゼンし、事業として本格化した。僕の経歴について話すと社内でもびっくりされることが多いし、社長もそういった部分に可能性を感じてくれたのだと思う。

WWD:D2Cブランドを集めた売り場というアイデアはどこから。

伊藤:事業を構想し始めたのは入社間もなくの18年夏ごろ。僕自身買い物は好きだが、忙しさもあって店頭で買うよりもECで買うことの方が多い。日用品は「アマゾン(AMAZON)」などでまとめて購入するが、こだわりの一品はSNSで見かけて、興味を持ってECで買うというケースがここ数年増えている。「ミスターチーズケーキ(MR.CHEESECAKE)」や「バルクオム(BULK HOMME)」、韓国コスメなどをそういう形で購入したし、僕の周りもそういった買い方をしている人が多い。また、D2Cブランドの起業家の友人も多いので、そういう人が輝ける場を作りたかった。今の時代はブランドを立ち上げるのが容易で、同時に消費者の好みは多様化している。しかし、なかなかブランドと消費者とが出合う場所がない。だったら出合いの場を作ればニーズがあると考えた。

 僕自身の体験として、SNS映えする写真にひかれて購入した商品であっても、実際家に届くとモノとしての魅力に欠けるといったことが何度かあった。だからこそオンラインで出合って、オフラインで試す場には大きなニーズがあると思ったが、オフラインでタッチポイント設けようとすると非常に大ごとになる。ブランドにとっては出店しやすいことが大事だと思い、RaaS※2型のサービスにした。ECモールに出店する感覚で、リアル店舗に出店できる仕組みを整えている。

※2 Retail as a Serviceの略で、小売りのサービス化を指す。さまざまな意味を含むが、ここでは月額課金などのサブスクリプション型で店頭スペースをブランドに貸し出し、販売員やその教育、物流などもパッケージで提供する新しい小売りモデルのこと

WWD:RaaSとしては、昨年8月に米サンフランシスコ発の「ベータ(B8TA)」が日本に上陸し、話題になっている。「ベータ」は売ることを主目的にしていないと公言しているが、「チューズベース」も同様の考えか。

伊藤:「チューズベース」はしっかり売っていく店だ。客とブランドとの出合いを創出し、そして売れるということが、客とブランドの双方にとって価値の最大化につながる。客は購入機会を、ブランド側は販売機会を失わない。(「ベータ」のような)ショールーム型RaaSは、どちらかというとPRに特化した店かと思う。短期間での認知獲得への貢献度は高いが、販売、購入という面では機会損失があるのではないか。ただ、どちらがいい悪いといった話ではなく、提供する価値が違うということ。ブランドや客に目的で選んでもらえばいいし、他のRaaSと一緒に市場を盛り上げていきたい。

WWD:しっかり売っていく店となると、ブランド側との取引条件も、「ベータ」のような月額料金制とは異なってくる?

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