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「スノーピーク」山井梨沙社長 従業員700人を率いる若きリーダーの求心力【ネクストリーダー2021】

 2017年にスタートした「WWDJAPAN ネクストリーダー」第3回の受賞者であるスノーピークの山井梨沙社長。当時の山井社長は副社長で、昨年3月に創業家3代目として、社長に就任した。32歳での抜てきだ。山井社長1年目の20年12月期(2月12日発表)は、売上高が前年同期比17.6%増の167億6400万円、営業利益が61.6%増の14億9300万円、純利益は約2.5倍の10億4800万円と増収増益だった。密を避けたキャンプブームの追い風もあったが、積極的にメディアの前で語る山井社長の存在が、ブランド知名度をますます高めていると言っても過言ではない。その山井社長が今年の「WWDJAPAN ネクストリーダー2021」で審査アドバイザーを務めた。若きリーダーは何を語るか。

WWD:2020年3月に社長に就き約1年、気持ちの変化は?

山井梨沙スノーピーク社長(以下、山井):社長に就任したタイミングで、コロナで状況が悪化してしまい、自分にとっては試練の多い年でした。振り返れば、それを乗り越えて自分自身も成長できた年ではあったけれど、倒産リスクを考えて資金繰りを考え直さなければならなかったり、経営面でも周りの助けがなければ乗り越えられなかった。一方で、30年後にどうなっていたいか、会社の可能性を今一度見直せる年になったので、そういう意味では非常に良い1年でした。

WWD:社長就任時は32歳だったが、年齢的な部分でネックに感じたことは?

山井:仕事をする上で「女性だから」「年齢が若いから」ということを周りに感じさせないように努力してきました。社長に就任した時点での世間的なネガティブな意見はかなりの数を目にしましたが、それには結果で示すしかない。自分が32歳でも、女性でもやれるということを示さないといけないと思いました。

WWD:結果を出すために、どういったことを心掛けている?

山井:自分一人で達成できることではないというのは前提にあります。その上で、自分が社長に就任できた一番の要素は信念がめちゃくちゃ強いこと。周りからやるなと言われても絶対にやり抜く強さは、自分のリーダーシップだと思っています。こうしたら絶対によくなるという勘所と、絶対に実行して成し遂げる、前に進む強さは大事にしています。

WWD:国内外でおよそ700人の従業員を抱えている。従業員に伝えている言葉は?

山井:スノーピークは、モノを売るだけの会社ではありません。それは創業から変わらない価値ですが、それを今一度、言語化して伝えることを経営側になった時から続けています。その先に、体験を通じてライフバリューを創出するブランドになろうということを再定義しました。最近はスノーピークがお客さまにライフバリューを提供するだけではなく、一緒に働いているスノーピークの従業員全員がライフバリューを高められる会社になろう、と伝えています。

WWD:社長に就任して初めて伝えた言葉を覚えていますか?

山井:社長に就任したときに0からのスタートだなという感覚が自分の中で芽生えて、「とにかく20年30年先の未来を会社と社会に対して作っていく」。そして、新潟に本社があるアウトドアブランドの会社として、「地方発の世界で一番クリエイティブな会社にしていきたい」とお伝えしました。

WWD:これからのファッション業界、アウトドア業界をどう見ますか?

山井:アウトドア事業はグローバルでプレゼンスが上がっています。資本主義経済、文明社会の中で失われているものは自然の力じゃないと取り戻せません。スノーピークは企業の社会的な使命として「人間性の回復」を掲げています。アウトドアは、文明の進歩に比例して増えていく――その自負はありましたが、コロナをきっかけにそのタイミングがかなり早まったと感じています。一過性のブームではなく、自然との関わりが重要であると再認識されて、日常的に楽しむ人はどんどん増えていく。昨年は当社も在庫のやりくりだったり、年間の販売数量を計画し直したり、販売タームも大きく変えたりしました。今年もそれを反映している部分はあります。ファッション業界にとっては当たり前だったことが当たり前ではなくなったので、商売構造を変えていくきっかけになったのではないかと思います。

WWD:10年後のスノーピークをどう描く?

山井:もともとはキャンプの事業を軸としてきましたが、改めて、キャンプの要素は人間が自然の中で生活する営みそのものだと気づきました。インフラの整っている東京に住んでいれば、あまり人と協力しなくても生活が成り立ちますが、自然の中ではそうはいかず、衣食住を営むことで人とのつながりが強くなると考えます。私が14年に新規事業として始めたアパレルを含めて、今は、「衣・食・住・働・遊」、人が生きる全てのライフステージに価値提供できるブランドになりました。まだまだキャンプのコアビジネスの割合が大きくはありますが、キャンプの価値観をもっと変えて、自然思考に生きるためのブランドに成長させたいと思います。

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