ファッション

250ブランドが出店 20代の若きリーダーが仕掛けるアジアブランド専門EC「60%」【ネクストリーダー2021】

 創業間もないアジアブランドのみを販売するオンラインセレクトショップ「シックスティーパーセント(60%)」が、感度の高いコアな品ぞろえで、グングンと売り上げを伸ばしている。現在、韓国やインドネシアなど10カ国、約250ブランドを取りそろえるが、年内には500ブランドを超える見込みだ。今では「日本未上陸のアジアブランドを買うなら“シックスティーパーセント”」という認識が広まりつつあり、ブランドからの引き合いも強い。さらに、ヤマトホールディングスと大手ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインが4月1日に新設した、国内外のスタートアップ企業に投資する「クロネコ イノベーション ファンド」からの出資も決定している。「シックスティーパーセント」を運営する2人に、企業のこれから、肌で感じるアジアンファッションの将来性を聞いた。

WWD:コロナ禍でEC市場全体が伸びている。この1年を振り返ると?

真部大河シックスティーパーセント最高経営責任者(CEO)兼共同創業者(以下、真部):新型コロナウイルスの影響かは、計測し切れていないが、売り上げは前年の約10倍以上。緊急事態宣言下で急速に伸びたというより、昨年4月は本格的にECをスタートして1年も経っていないタイミングだったので、伸び代しかなかった。シンプルに顧客が求めるブランドを集めることができたのが前提で、一部のファンのニーズも満たせたのが、売り上げ伸長の要因だと推測している。

WWD:顧客の属性は?

松岡那苗シックスティーパーセント最高執行責任者(COO)兼共同創業者(以下、松岡):韓国やインドネシアなどのブランド情報をSNSで集めて、代行会社を使ってでも購入していた、いわゆる“ファッション通”。だからこそ「日本未上陸のアジアブランドを購入するなら『シックスティーパーセント』」という認識が広まりつつある。

WWD:出店ブランドは、どのように増えている?

松岡:お客さまのリクエストから、新規ブランドが続々と増えている。ブランドがSNSなどで発信する「シックスティーパーセント」への出店情報を、さらに他ブランドがチェックして、依頼が来るという流れも出来つつある。韓国からは毎週何件か出店希望メールが届き、出店ブランドも約8割が韓国。

WWD:やはり韓国ブランドが、1番盛り上がっている?

松岡:K-popをきっかけに、日本だけでなく世界的に韓国ブランドの需要が高まっている。目当てのブランドを探す過程で「シックスティーパーセント」に辿り着くことも多く、結果的に韓国ブランドの需要が増えている。

WWD:次に注目している国は?

真部:インドネシア。人口2億人以上で、ファッションのマーケットが大きい。地方格差はあるが、ジャカルタなどの都心部では、ファッションにお金をかけるし、ヒップホップなどの音楽も盛り上がっていて、スケートカルチャーのようなサブカルも若い世代に人気。ローカルブランドも多いが、みんな英語を話せるので、対象がグローバルになる。サブカルと紐づいた情報を発信しているブランドが多く非常に面白い。

松岡:インドネシアはファッションの盛り上がりがズバ抜けている。マレーシアのファッションウイークに行った際に、ファッションを含めたエンタメに対するお金の使い方が日本の3倍以上だと感じた。

次のステップは
日本ブランドをアジアで売る

真部:インドネシアしかり、これからは日本ブランドがアジアで売れると思う。日本のブランドは質も高く、クリエイティビティーにも溢れている。次のステップでは日本ブランドを集めて、アジアで売っていきたい。アジア諸国は所得水準も上がり、ファッションやエンタメに使うお金も増えている。SNSの普及でブランドのファンもボーダレスに付きやすい状態。今は売上比率の8~9割が国内だが、海外のマーケティングやプロモーションが出来ていない中で、すでにこれまでで40カ国ほどから受注がある。今後、中国やタイ、インドネシアなどで事業を展開するなら、日本のブランドはかかせないので、一緒にグローバルで展開したい。

WWD:逆にアジアブランドのみを集めたECが、今まで無かった理由をどう考える?

真部:まず「アジアのブランドを世界に発信したい」というモチベーションを持っている人が少ないのかなと。越境ECのようなビジネスモデルは難易度も高く、面倒なことが多いので好きじゃないとやれない。僕たちはファッションが本当に好きだからやっているけど、わざわざこの領域を選ぶ人がそもそも少ないと思う。

松岡:アジアは時差がないし、物流もとても簡単に集約されている。大変だが頑張れているのは「アジアブランドを応援したい」という想いがベースにあるから。

WWD:「クロネコ イノベーション ファンド」からの資金調達でどう変わる?

真部:やはり、いくらカッコいいものを扱っていても、送料が高いままだったり、安定してお客さまに商品を届けることができないと売れない。越境ECならなおさら。アジア及び世界中に迅速かつ安く商品を届けられるようにフルフィルメントの部分を今年はしっかり強化したい。その際には、ヤマトとさまざまな形で連携できるはずだ。

WWD:発送日数や送料は、具体的にどう変わる?

真部:9割以上の商品は海外からの発送で、現時点だと購入から平均7~10日で手元に届くが、長期的にはそれを1週間以内で届けられるようにしたい。海外ブランドを現地の価格で購入し、それが1週間以内に届くのは、お客さまにも納得していただけると思う。長期的な展望としては「シックスティーパーセント」の物流網や越境ECとしてのソリューションをアジアのブランドに提供していくことも考えている。

WWD:ソリューションの提供まで目指す理由は?

真部:ECモールはどちらかというとダウントレンド。一部のトップレイヤーはこれからもシェアを拡大させていくと思うが、基本的にはどこも自社EC強化の流れが進んでいる。その中で「シックスティーパーセント」が提供できる価値は、第1が独自性のあるプラットフォームでアジアブランドを世界に発信すること。第2がそこで生まれたスケールメリットやソリューションをブランドに還元すること。自社の商流や物流を使ってもらえるなら、僕たちもスケールメリットを得ることができる。

WWD:2018年の企業から約3年。ここまでの成長は想定内?

真部:構想に1年かかったので、実際にはまだ2年しか運営していない感覚があるが、想定通り。当初から確信を持っていたレベルで伸びていて、単月での黒字化も早い段階で達成している。チームも20人ほどになっており、さらに採用も強化している。まだまだこれからアクセルを踏んでいくフェーズ。

WWD:20代の2人が尊敬するリーダーとは?

松岡:YOONさん。アジア人で世界のファッション領域で活躍しているし、“ガールズクラッシュ(女性が憧れる女性)”的な意味でも尊敬している。

真部:「ワンピース」のルフィ。マンガ全般が大好きだが、特に「ワンピース」は30周くらい読んでいる(笑)。“麦わらの一味”はそれぞれの苦手を補い合えるチーム。そしてルフィは一味の命運を左右するような大事な戦いでは必ず勝つ。だから仲間もついてくる。僕は優秀じゃないので自分ができないことを補ってくれる人が仲間として居続けてくれるように、会社の命運を左右するような重要な意思決定など1番大事な戦いでは絶対に勝たなければいけない。そこは常に意識している。

“アジアンブランドを買いたい”という
概念を生むことが使命

WWD:今後、どんな企業を目指す?

真部:「シックスティーパーセント」を「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」や「アマゾン(AMAZON)」のような1つの巨大なプラットフォームにしたいわけではない。アジアブランドのかっこよさや世界観を消さず、その上でビジネスとしての規模も追求することを目指している。SNSの普及でローカルブランドにも世界中からのファンが付くようになったが、商品を届ける手段はドメスティックなまま。総合的に“アジアブランドを世界中でどこよりも売っている会社”を目指したい。

松岡:アジアのブランドの良さはスピード感。いい意味で歴史がなく、盛り上がりはじめたのはここ3~4年だが、ビジネスの規模感は国内ブランドよりも大きく、ファンも多い。今、アジアのデザイナーの多くは“攻めのステージ”だと感じていて、「シックスティーパーセント」でも即日契約、即日入店が多い。将来的には「パリのブランドを買いたい」と思うのと同様に「アジアのブランドを買いたい」という概念を生めたら。

村上杏理:1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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