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スノーピークがデジタル時代に“キャンピングオフィス”を本気で提案する理由

 アウトドアブランドのスノーピーク(SNOW PEAK)は2016年、ITを活用した企業コンサルティングを行うハーティスシステムアンドコンサルティングと共同で“キャンピングオフィス”推進のための新会社、スノーピークビジネスソリューションズを設立した。自然と関わることで個人も社会も健全な成長ができるという考えのもと、今年5月には東京・渋谷の複合施設「渋谷キャスト」にキャンピングオフィスをオープンしたばかり。デジタル時代に新会社を立ち上げてまで、企業向けにアウトドアを提案する理由について、村瀬亮・社長に聞いた。

WWD:村瀬社長が立ち上げたハーティスシステムアンドコンサルティングという会社はITを使った企業コンサルですが、どうしてアウトドアに行き着いたのでしょうか。

村瀬亮・社長(以下、村瀬):もともとITを活用して人材の健全な成長をサポートする企業として、自分たちもワクワクしながら会社作りをしたいと考えていました。そもそも会社って創業当時は少人数でなんでも楽しみながら仕事をしているのに、人数が増えて会社の仕組みができるにつれてある意味つまらなくなってしまうんですよね。もちろん制度は必要ですが、会社にいるからお金をもらえるという考えが生まれてしまう。自分で何かを生み出してその対価としてお金をもらえるということを新入社員にも説教になることなく分かってほしかった。だから、何をすれば社員も会社も健全に成長させられるか、自分たちでいろんな施策を自発的にやるようにしてきました。

WWD:その中でキャンプにも挑戦したと?

村瀬:ここ4年くらい地方創生や環境問題が深刻だなと思って、そうした課題を放置したままテクノロジーだけを進化させるのはすごくはかないと思ったんです。テクノロジーだけで会社を成長させることは難しくありませんが、僕らがやっていること自体が環境のためになるべきだなと。そんな中でキャンプをしながら仕事をすることは面白いし、チームビルディングも成り立つだろうという仮説を立てました。自然に関わることで本質的に仕事への向き合い方、考え方が変わるんじゃないかと。

WWD:それを実践したんですか?

村瀬:まずは5年くらい前に社員旅行という名目で徳島県の神山町というIT起業家が集まる地方都市へ見学に行きました。その後、「スノーピーク」の製品を買って、高知県でNPO団体が管理する施設の駐車場を借りて、僕1人が1週間こもることにしたんです(笑)。

WWD:もともとアウトドアが好きだったわけではないのですか?

村瀬:趣味でたまに山へ行く程度でした。1週間やってみたんですが、体験を通じて自分自身がすごくワクワクを感じたんです。会議室とは違って将来のことも外にいると考えやすくて。でも、実践したのがちょうど4月の初めで新卒社員の入社式に出られなくて(笑)。その時は山を背景にモニターで参加するという強硬手段に出たのですが、新入社員への償いではないですが、今度は5人分くらいのキャンプ用品を大人買いして、新入社員とともに愛知県の会社の近くの公園で1晩過ごしました。こうした経験から、ちょうど名古屋にショールームを出すというタイミングだったので、オフィスの中でも芝生を敷いてテントを立てるという“キャンピングオフィス”を作ってみようと思ったんです。

WWD:自身の経験を通じて、ビジネスを生み出したと。

村瀬:オフィス内でもある程度自然を疑似体験できるだろうと。実際にショールームにテントを張ったらIT企業なのに打ち合わせをテントでさせられるとか、ワクワクするとか、やはりクライアントから反響がありまして(笑)。でもなぜこんなことをしたのかと聞かれたら、自然に関わることで本質的に仕事への向き合い方が変わるというきちんとしたストーリーがあるわけです。この思いを広げるためにも、ぜひスノーピークに話をしたいと思い至りました。

WWD:村瀬社長からの提案だったのですね。

村瀬:何度か講演会などで山井(太スノーピーク)社長とお会いして、いざ会社で話をさせてもらったら意気投合しちゃって。2回目にあった際には一緒に山井社長から新会社を作ろうという話になりました。キャンプをする人は人口の6%くらいしかいないので、スノーピークとしても残り94%の人たちに自然を体験してほしいと。

WWD:スノーピークビジネスソリューションズという会社はどのような体制なのでしょうか。

村瀬:社員はスノーピークから2人、ハーティスから2人、計4人です。その他営業や広報などは外部パートナーという形で委託をしていて、これもヒエラルキー式ではない企業のあり方を模索しようとある意味実験的な組織にしています。

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