ビジネス

“らしい”ボランティアは、ビジネスを強くする エディターズレター(2021年3月5日配信分)

※この記事は2021年03月05日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

“らしい”ボランティアは、ビジネスを強くする

 産学連携の取り組みには常々注目していますが、先日、とある学校の先生からちょっとした愚痴を伺いました。「いろんな企業から余った生地をご提供いただく機会が増えたのですが、正直、困っています」という悩みです。先生の最後の一言は、強烈でした。「ハッキリ言えば、ゴミを僕たちに押し付け、スッキリしているんじゃないか?って思うんです」との言葉です。グサリと来ますね。

 例えばこの記事(「アレキサンダー・マックイーン」がアーカイブ生地をイギリスの学生に寄贈)の通り、ラグジュアリーブランドが仕入れたメッチャ良い生地なら、生徒も、学校も嬉しいでしょう。でも、生地なら「全部大歓迎です!」じゃないですよね。送る側は「サステナブルな取り組みだった。学校にも貢献できた」と思うのでしょうが、ただの自己満足というケースもありそうです。

 そんな事情も手伝い、最近は、企業のアクションも多様化しています。例えばとあるデザイナーは、生地ではなく、売れ残った商品を母校に提供。その洋服を解体しながら、デザインやパターンについて講義するというオマケ付きです(生徒や学校には、むしろコッチの方が嬉しいかもしれませんw)。某ラグジュアリー・ブランドは、緊急事態宣言に伴う店舗休業で販売できなかった洋服を地元の人々に提供したそう。いずれも「スゴいハナシだな」と驚きますが、よくよく考えるとそのデザイナーは、古着の解体などを繰り返して手にしたデザインアプローチが醍醐味の方。そのラグジュアリー・ブランドは、“地産地消”や“人間味溢れる資本主義”を提唱しています。その行い自体がブランドらしいから、そのアクションは利益こそ生みませんがブランディングに繋がっています。改めて、サステナブルにはいろんな形があって、ブランドらしく取り組めるんだと感じます。

 話はサステナブルから逸れますが、私たちは昨春、プリントメディアの定期購読者の皆さんに電子版を無料解放するというアクションに取り組みました。一番の理由は「在宅ワークが増え、会社に届いて回覧されるケースが多い『WWDジャパン』を読む機会が奪われているのでは?」と考えたからですが、私は「『WWDジャパン』が『WWDJAPAN.com』で読める、プリントメディアがデジタルメディアで楽しめるというのは、全てのコミュニケーション手段が等しく重要と考える『ONE WWDJAPAN』の理念ともマッチするのでは?」と信じました。おかげさまで、プリントメディアの定期購読者には喜んでいただけてエンゲージメントが深まったし、期間中のデジタルメディアは高パフォーマンスでさらなる成長につながりました(もちろん、コレだけが要因ではありませんw)。

 大義と“らしさ”が揃ったアクションは、例え直接的にお金を生むことはなくても、意味を持つんだと痛感したのです。

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