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今こそ「オタク」を愛しましょう︎︎ エディターズレター(2020年7月17日配信分)

※この記事は2020年7月17日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

今こそ「オタク」を愛しましょう︎︎

 「オタク」と聞いて、「キモっ」って思う人は、そろそろ考えを改めるべきかと思います。現在私は「オタク」と聞くと、「わぁ♡」と思ってしまい、その後は、矢継ぎ早に“小学生レベル”の質問を繰り出す始末です。「どうして好きなんですか?(←多分、答えづらい)」「どのくらい好きなんですか?引くレベルのエピソードを是非お一つ(←多分、さらに答えづらい)」「最近、一番のビッグニュースは?(←これは答えてくれるけれど、半分も理解できないw)」あたりは、確実に聞いてしまう(笑)。そしてその答えは大抵、私の目を輝かせてくれるのです。

 「オタク」の価値を再考したのは数年前、時計担当を拝命した時でした。当時の私は、トゥールビヨンと言われても、「なんか~、高額な機構ですよね?」くらいのレベル(正直、今も大差ありませんがw)。ゆえにバーゼル・ワールドのような世界的見本市を取材しても、「時計ブランドって、こんなにいっぱいあるんですね」と思うばかりで、そんなブランドによる数多のプレゼンテーションは呪文のようでした。

 そこで出会ったのは、業界人に多い「パテック フィリップ」の熱烈信者、いわば「『パテック』オタク」です。同ブランドのカンファレンスで隣に座っていると、スクリーンに新作が投影されるたび、必ずボソリと一言呟きます。心踊りました。そして代表的時計“ノーチラス”の新作が投影された時は、「そう来るワケか」と言うんです。「どう来たんですか⁉︎教えて!!」。今すぐ聞きたい衝動を抑え、後で話を聞きましたが、その返答はもう覚えていません(笑)。記憶にあるのは「病的レベルの“ノーチラス”愛」と、「ゆえに賞賛と建設的批判が同時に溢れ出てきた」こと。「ブランドにとって、こういう意見って大事なんだろうな」と素直に思ったのです。その後時計ブランドからは、「愛好家=インフルエンサー」という話を度々耳にします。特定のブランド・特定のモデルを愛して収集する愛好家は、未来につながる賞賛と批判ができる人。その意見とコレクションは立派なコンテンツで、SNSの世界を中心に絶大なる影響力を放っています。ゆえに幾つかの時計ブランドは新製品、特に復刻シリーズの発売に際しては、そんな「時計オタク」にアドバイスを求めるそう。「オタク」との上手な付き合い方と言えるでしょう。

 愛すべき「オタク」は、ビューティ業界にも多数存在します。最近、「WWDビューティ」編集部員から話を聞いて興奮したのは、「アディクション」の人気製品“ザ アイシャドウ”のリニューアルで出動した「オタク」たち。全99色の大リニューアルはそれだけでも大きなニュースでしたが、私の心を震わせたのは、その「オタク」たちの動きです。彼女たちは「特定班」を名乗り、どの色がリニューアル後も残留し、どの色が残念ながら廃盤になるのか?を瞬時に特定。その情報と活躍自体がコンテンツとなり、SNSでバズりまくったのです。“特定班”、ゴイスー!!愛が凄まじい!!是非、「アディクション」のクリエイティブ・ディレクターのKANAKOさんに会ってほしい(笑)。弊社でつなぎたい!!そんな妄想を掻き立ててくれた逸材です。

 ブランド主導ではない、ユーザー主導のコンテンツ(UGC)の価値が高まっています。「オタク」を刺激してUGCにつなげるのは、一案ですね。基本的には「愛」に溢れる人たちです。ポジティブなUGCにつながる予感、しませんか?

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