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オタクの世界からストリートシーンへ 異色の19歳漫画家JUN INAGAWA

 アメリカひいてはストリートシーンにおいて、「ドラゴンボール」や「NARUTO-ナルト-」など日本のアニメ・漫画が大人気なのは言うまでもないが、いま日本人漫画家JUN INAGAWAが世界中のストリートシーンを騒がせているのはご存知だろうか。

 現在、渋谷のディーゼル アート ギャラリー(DIESEL ART GALLERY)で個展を開催中の彼は、いわゆる“アキバ系”と言われる美少女をモチーフとした萌え系のイラストを描く19歳の“オタク漫画家”。しかし、彼が他のオタク漫画家と大きく異なるのは、その経歴だ。彼がまだ高校生の頃、インスタグラムに投稿した1枚のイラストをきっかけに、エイサップ・バリ(A$AP Bari)の「ヴィーロン(VLONE)」や人気ラッパーのスモークパープ(Smokepurpp)など、ストリートシーンにおけるビッグネームと、次々コラボ。シーンでも類を見ない異色の経歴を持つ人物となった。

 一見、萌え系とストリートは相反するカルチャーだが、いわく「共通する感覚があった」と話す。ストリートシーンにおけるサクセスストーリーから、思い描く未来像とはーー。

WWD:もともと日本で生まれ育った?

JUN:日本で生まれて、小学校を卒業してすぐに父親の仕事の関係でアメリカのサンディエゴに移住しました。父親は日産の車のデザイナー。絵を描くようになったのは、父親の影響です。

WWD:実際に絵を描くようになったのはいつから?

JUN:5〜6歳だと思います。父親が「AKIRA」や「攻殻機動隊」の世代だからちょくちょく見せてくれることはあったんですけど、幼い頃の僕には絵のタッチが独特すぎて苦手で……「クレヨンしんちゃん」や「ドラえもん」、朝7〜9時のゴールデンタイムにやっていたアニメを模写してましたね。美少女の絵に傾倒したのは小学6年生くらいからで、「プリキュア」がきっかけです。

WWD:男の子で「プリキュア」を観るのは珍しいと思います。

JUN:小さい頃からアニメを見ることが当たり前の生活だったので、2次元にも抵抗はなく、「かわいければいい」みたいな感じでした。でも小学生って観るアニメが「プリキュア」か「ドラゴンボール」にわかれると思うんですけど、やっぱり男子で「プリキュア」を観てるのがバレると気持ち悪いって言われるから、「ドラゴンボール」が好きなふりをして誰にも言わないで、影でこそこそ「プリキュア」を見てました(笑)。「プリキュア」は僕の美少女好きの原点です。

WWD:将来像として具体的に漫画家を意識したのはいつ頃?

JUN:小学3年生から思っていて、5〜6年生のときには周りに「漫画家になる!」って言ってました。とにかく絵を描くことが好きだったので、クラスの友達に似顔絵を描いて配ったり、友達を題材にした漫画を自由帳に描いたりしてましたね。

WWD:絵のタッチに影響を受けたり、尊敬する漫画家はいますか?

JUN:あまり「この人!」って方はいないんですけど、描き始めた最初の頃は「アイシールド21」や「ワンパンマン」の村田雄介先生の絵ばかりまねて描いてました。だから僕の絵ってかなり村田先生に似てるんです。村田先生のアメコミ風な影のつけ方と、喜怒哀楽の表情の描き方がすごい好きですね。

WWD:村田先生は他の漫画家よりコントラストが強い印象です。

JUN:白黒はっきりしてますよね。たぶんですけど、アメコミを参考にしているんだと思います。海外の漫画の多くは影の描き方をはじめ、顔も骨格も筋肉のつき方もリアルに寄せた描写なんです。

WWD:それこそアメリカに住んでいたら、マーベル作品などのアメコミにはハマらなかった?

JUN:映画は観るんですけど、漫画には全く興味がないですね。正義が悪を倒すスーパーヒーロー系って人間味がないからあまり好きじゃなくて、逆にアンチヒーローとかブラックヒーローとか人間味のある敵の話が好き。性格が悪い「デッドプール」には親近感が湧きます(笑)。

WWD:絵は独学?

JUN:絵画教室に通ったことはあるんですけど漫画とは全然違うので、人物からデッサンまでほぼ独学ですね。好きな先生の絵を模写して自分の絵に昇華させるみたいな。絵は村田先生っぽくて、趣味が萌え系だから僕のオリジナルのスタイルが生まれたんだと思います。

WWD:人物画のイメージが強いですが、風景画も描くんですか?

JUN:1作品だけですが、今回の個展にも風景画があります。ただビルのようにまっすぐなものを描くのが苦手。ビルなら崩壊したものを描く方が好きですね。将来漫画家になったら、背景はアシスタントの人にお願いしたいです(笑)。

WWD:具体的に“オタク”になったのはいつ頃?

JUN:14〜15歳のときですね。「けいおん!」や「らき☆すた」のように女の子がわーきゃーしているのがすごい好きで、そこから「ラブライブ!」にハマり重症化しました。「ラブライブ!」の映画は鑑賞券のグッズほしさに40回は観ましたね。

WWD:やはり秋葉原にはよく行くんですか?

JUN:秋葉原はただ散歩するだけでも飽きないです。それに、いる人は“分類”が同じだから話さなくてもホーム感があるんですよ。アニメのTシャツを着てても、バッジをたくさんつけてても偏見の目で見られない。外に行く理由が秋葉原、みたいな引きこもりが引きこめる外の空間ってイメージで、新宿や渋谷から近い同じ日本なのにオタクが占拠する違う国って感じ。