フォーカス

不屈の「コム デ ギャルソン・オム プリュス」 2021年春夏のショーで見せた8分間の輝き

 「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS以下、オム プリュス)」は、2021年春夏コレクションを東京・南青山の本社で発表した。7月にオンラインで開かれたパリ・メンズ・コレクションには参加せず、国内でバイヤー、スタッフ、メディア向けに3回のミニショーを行った。会場は本社7階のフロア。新型コロナウイルスの感染予防対策で約40の座席は間隔をとって配置されていた。パリでのショーはいつも大混雑で、スタンディングの場合は服が見えるポジションを素早く確保したり、ランウエイが見える隙間を探すのに苦労したりしていることを考えると異様な空間であり、張り詰めた空気に緊張感が高まった。

逆境に屈しない“メタル アウトロー”たち

 定刻の10時になると壁面にはアーティストのアルベルト・ビタール(Alberto Bitar)が手掛けた映像が投影され、無機質なフロアをモノクロの街が彩る。登場したモデルたちはその風景と呼応するような無彩色で、全身メタリックな素材のウエアをまとっていた。デザイナーの川久保玲がテーマに掲げたのは“メタル アウトロー”。宇宙服のようにギラギラした化繊から、アルミホイルのようなシワっぽいもの、箔をプリントした素材まで、服にメタリックなポイントを取り入れて逆境を乗り越える強さを表現した。細身のスーツや燕尾服、ラップスカートや膝丈のショーツなど「オム プリュス」らしいウエアが、さまざまな光沢によって異質な強さを手に入れる。

 ほかにも共通していたのは、全てのルックがテーラードを中心に構成されていたことだ。パンクなピタピタのスーツやパステルカラーのリラックスフォーマル、ライダースジャケットのカジュアルやシックなブラックドレスなど、あらゆるスタイルでジャケットやコートを打ち出した。メンズの定番服を重ねて縫い付けたり、破いたり、再構築したり、左右非対称にしたりすることで“王道”を破壊していく。とはいえ退廃的な重たさはなく、複雑な構造を読み解いていく楽しさがある。定番となった「ナイキ(NIKE)」とのコラボシューズは“エア カーニヴォア(AIR CARNIVORE)”がベースで、軽快だ。ショー開始前に抱いていた緊張感はいつしか高揚感へと変わり、8分間のショーはあっという間にフィナーレを迎えた。

 新型コロナウイルスの影響でファッション業界全体が窮地に立ち、現在は上質でタイムレスな服さえも売れない状況が続いている。またファッションショーに対しても、合理性の観点から懐疑的な声が増えつつある。そんなファッションの魔法が解けつつある中でも“アウトロー”を貫く「オム プリュス」の強い姿勢はたくましく、フィジカルのショーだからこそ感情がここまで揺さぶられたのかもしれない。「簡単で楽な服ばかり選んではいないか?」「つくられた価値観に無意識に流されてはいないか?」「意志と覚悟をもってファッションと向き合っているか?」――「オム プリュス」のショーはいつもそんなメッセージとともに見る者の背中をぐいっとつかみ、思考をファッションの本質へと引き戻してくれる。