ファッション

フィリップ ・リムに聞くサステナブルな洋服づくりVol.2  商品だけでなく、働き方もサステナブルである必要性

 デザイナーのフィリップ・リム(Phillip Lim)はブランド立ち上げ当時から“ワードローブ・ステープル(定番アイテム)”をモットーに、あらゆるシーンでも着られる、上質で美しい洋服を手掛けてきた。それはサステナブルなマインドセットにも通ずるもので、“長く着られる服こそサステナブル”とうたう。また2020〜21年秋冬コレクションはファッションショーをスキップし、2月に店舗に業界内外の人を呼んでイベント形式でコレクションを発表した。その決断にも、サステナビリティを捉えた考えがあるそうだ。そんなフィリップに、ファッションショーのスキップを決断した理由について聞いた。

WWD:20〜21年秋冬コレクションはなぜショーをスキップしたのか?

フィリップ・リム(以下、リム):ときには大胆な決断も必要でしょう?ファッションショーを開催するには多くの時間やコスト、労力が掛かるし、とにかく多忙になる。そもそもファッションシステムが見直されている中、ここまで負担が掛かるものをやる必要があるのかと思ったのと、正直心身ともに疲弊していた。私にとってファッションショーでコレクションを発表することは当たり前になっていたが、無理に頑張ってショーにこだわる必要もないと思ったんだよ。忙しくて時間が一瞬で過ぎていく毎日で、一度立ち止まりたかったんだ。

WWD:イベントには業界人はもちろん、友人や子どもなど多くの人が駆けつけていて、そんな大勢の人に囲まれるフィリップさんはとても幸せそうな表情でした。

リム:1日掛かりのイベントだから疲れたけどね(笑)!最後はヘトヘトだったけど、正しい選択だったと今は自信を持って言えるよ。みんながSNSなどでイベントを告知してくれたおかげもあり、業界関係者から他業界の人、インフルエンサー、学生、子ども、隣人まで、あらゆるバックグラウンドの人が何百人も来てくれた。本当にインクルーシブなイベントだったよ。みんな楽しそうで、店内に流れたエネルギーそのものがとてもポジティブなものだった。今の時代には必要なエネルギーだったね。

WWD:フィリップさんのようなベテランがショーをスキップしたことは、大々的なショーを開くほどの資金力がない若手デザイナーにとっても、良い刺激になったのでは?

リム:そうだね。直接話はしていないけれど、リテーラーやバイヤーからはとても良い評判を頂いたし、新たなアイデアのきっかけになったらうれしい。私自身も学んだことは多々あったよ。例えば当日の来場者から分かったのは、「3.1 フィリップ・リム(3.1 PHILLIP LIM)」というブランドが年齢やジェンダー関係なくあらゆる人に支持いただいていること。普通ブランドはターゲット層を決めることが多いけれど、いい意味では私のブランドは“定義づけ”するのが難しいと思った。どのようなシーンでも、トレンドに左右されずに何年も着られる服、そして機能的な服を作っているから、そうなるのは自然だと思うけど。若い子もたくさん来てくれて、サステナビリティについても色々聞いてくれたよ。

WWD:イベントに切り替えて、少しは休めることができたのか?

リム:全員2〜3週間の休みをとることができた。シーズン前にここまで長期的な休みを取るのは初めてだったよ。チーム全員にとっていい息抜きになったし、充電期間となったね。以前のようなペースで駆け抜けていたら、確実にいつかパンクするところだった。ビジネスの健康的な存続には、持続可能な働き方がいかに大切かを痛感したよ。

WWD:フィリップさんはこのように社員のケアをすることこそサステナブルと以前言っていた。

リム:サステナビリティは決して簡単なことではなく、いろいろな人にとって悩ませることもあるだろう。社員をケアするというのは無理な働き方を強要しない、というだけでなく、一人一人が発言力・行動力を持てるようにすること。サステナビリティには一つの“正解”がないからこそいろいろな意見があってもいいし、多様な意見が言いやすい環境にするべきでしょう?みんな平等に扱わないと、サステナブルなビジネスは作れないよ。商品はもちろん、働き方もサステナブルであることは同じくらい大切だと思う。

—Vol.3に続くーー

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

ファッション&ビューティメディア大特集 一緒に働く人も目指す人も必読!

11月29日発売の「WWDJAPAN」は、毎年恒例のメディア特集です。今週号には10社、14媒体、そして総勢32人の個性豊かな編集者が登場します。特集は、コロナ禍で編集長に就任&復帰した「25ans」と「MEN’S EX」そして「ハニカム(HONEYEE.COM)」編集長の座談会からスタート。「おめでとう」より「大変だね」と言われることが多かった編集長は、コロナが背中を押したかもしれない新事業への…

詳細/購入はこちら