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渋谷・新宿・銀座のファッションビルが一斉臨時休業、その舞台裏

 小池百合子・東京都知事の3月25日夜の自粛要請の会見を受け、この週末は渋谷や新宿、表参道、銀座などの主要な商業施設やショップが一斉に臨時休業する。ターミナル駅直結のルミネや渋谷スクランブルスクエア、駅から離れていても高い集客力を持つパルコ、有力セレクトショップが集積した渋谷の神南エリアや原宿のキャットストリートなどの路面店の多くも、感染拡大を防ぐためショップをクローズする。その舞台裏を追った。

 先陣を切ったのは、かつてのギャルの聖地「渋谷109」だった。臨時休業のリリースがメディア各社に一斉に届いたのは26日の午後2時。自粛は東京都などの当局にとって非常に便利な言葉で、法的に有効な通達を出したわけではなく、あくまで企業側に自主的な経営判断を求めるもの。商業施設を運営する商業デベロッパーからすれば、自らが休業を宣言すればテナント側に家賃の減額などの休業補償負担の可能性が出てくる。ファッションビルとして決して大きくない渋谷109でもテナントは大小含めれば数十社になる。わずかな時間でテナント側と交渉することは実質的に不可能であるため、運営会社SHIBUYA109エンタテイメントがどこよりも早く休館を宣言したのは、木村知郎社長の英断だったと言えるだろう。休業の理由も秀逸だった。「『渋谷109』の臨時休館を通して、当館をご利用してくださっている若い方々に、感染の予防と拡散防止の重要性をより感じていただきたい」(同社広報)。

 渋谷109の臨時休館宣言を受けて、大手ファッションビルや大手セレクトも休業へと動き出した。ユナイテッドアローズやビームス、ベイクルーズ、アダストリアなどの大手セレクトや大手SPAは同日昼過ぎまで、「ファッションビルや商業施設の判断を待って路面店をどうするかを決める」という姿勢だった。セレクト大手は、有力なセレクトショップが密集する神南エリアやキャットストリート、裏原宿などの路面店が強い渋谷・原宿に多数のブランドやショップを点在させており、有力なファッションビルの動向いかんで路面店の営業も決めることになる。ある有力セレクトは夕方前から、ファッションビルから都心店舗の休業の連絡を受け始めたと明かす。

 ルミネは、ルミネ新宿やルミネ有楽町など各店舗のウェブサイトを先行させる形で臨時休業のアナウンスを開始。メディア各社には午後6時半ごろに一斉にリリースを送った。ルミネ新宿やルミネエスト新宿、ルミネ横浜など都心の大型店は全館休業で、大宮店や荻窪店など都心から少し離れた店舗は食品フロアのみ限定的に開業する。パルコは渋谷と池袋、上野を臨時休館し、原宿を象徴するファッションビルであるラフォーレ原宿も休館する。表参道と銀座ではラグジュアリーブランドの路面店が休業も発表、高級ブランドが集積した銀座の象徴的な高級モール「ギンザシックス」も休業する。

 多くのファッションビルにとって休業は苦渋の決断だ。2年連続の暖冬とアパレル市場の低迷に、新型コロナショックが直撃。ファッションビル大手のルミネはすでに3月分の最低保証家賃の減額に動いている。新型コロナが急拡大しているイタリアやイギリス、米国の一部の都市のように街全体がロックダウンすればさらなる打撃になるとはいえ、“自粛”という曖昧な通達で休業し、痛手を被るのはファッションビルとその入居テナントであるアパレル企業だ。ある大手商業デベロッパーは「感染予防や感染拡大の防止が重要なのはもちろん理解できる。それなら政府や当局がはっきりと休業を強制すべきだ。自粛という曖昧な要請では、われわれとテナントの間で休業の際の損失責任のなすりつけ合い発展しかねない」と指摘する。 “週末の自粛“が来週以降も続くことになれば、痛手はさらに大きくなる。