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「ウジョー」パリ進出ショーの裏側 “日本のシンプルな服”へのフラストレーションから生まれた“不完全な形”の服

 西崎暢デザイナーによる「ウジョー(UJOH)」は、パリ・ファッション・ウイークのオフスケジュールで2020-21年秋冬のコレクションを発表した。16-17年秋冬シーズンからミラノでショー形式で発表をし、パリでは展示会をしていたが、今季満を持してパリでショーを行ったかたちだ。

 ショー当日のバックステージは、慣れない開催地であわただしいだろうと予想してしていたが、実際は非常に落ち着いた雰囲気。そこにいる人それぞれが、いつまでに何をするべきなのかを把握しているようだった。

 西崎デザイナーもリラックスした様子で、ショー前にもかかわらず丁寧にインタビューに応じてくれた。バックステージの落ち着いた雰囲気について言及すると「海外で発表するのは4度目になるから、するべきことは分かっている」と西崎デザイナー。パリで発表している「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」でパタンナーを長年務めていた西崎デザイナーにとって、「パリは見せる場としての目標の地だった」と語る。

 パリに来るに際してチームを増強したという「ウジョー」だが、中でも、スタイリストに水谷美香を迎えたことは大きかったと話す。「ほかの件で一緒に仕事をしたことがあり、今回も依頼したが、彼女はプロフェッショナルで、スタイリングはもちろん何もかもが変わった」と語る。

 今季のコレクションの出発点は、日本のシンプルな服へのフラストレーション。シンプルなパンツやシャツ、ニットに、“スケバン”の長い丈のプリーツスカートにインスパイアされたという巻きエプロンや、ライフジャケットを着想源にした片袖だけを通して脇で留めたジャケット、左右で分離できるブルゾンなど、不完全な形の服をアクセサリー感覚でレイヤードすることで、大胆さと新しい服の形を追求した。「作っている過程の“服”に惹かれるものがあり、これを自分たちのアプローチの一つとして、グッと凝縮したコレクションにしたかった。切りっぱなしや断ちっぱなしなどラフな作り方ではなくて、きちんと洋服として成り立つものだけれど不完全な形をしていることで大胆さにつなげたかった」と西崎デザイナー。

 ショーのヘアメイクを手掛けたのは、これまでもタッグを組んできたオダマユミ=メイクアップアーティストとチナツ=ヘアスタイリスト。メイクのテーマは“スキンユニフォーム”で、肌の一環としてのマスクを意識してあえて色や装飾を加えず、モデルそれぞれの肌になじむような色のファンデーションだけでメイクを作った。ヘアは、これまでよりもレイヤードが増えた服を加味して、主張が少ないリラックスしたローポニーテールで、強さとマニッシュ感はテクスチャーで表現した。

 モデルがヘアメイクを終えた後、ヘア&メイクアップアーティストにメイクをしてもらっている女性の姿があった。ショーのフィナーレで来場者に顔を見せるためにデザイナーが事前にバックステージでメイクをすることはあるが、誰だろうと疑問に思っていると、西崎デザイナーが「僕の相方です。今回から一緒にフィナーレに出ようと思って」と教えてくれた。そして、メイク中の妻の西崎亜湖(あこ)チーフパタンナーとヘア&メイクアップアーティストに、「僕には(ヘアメイクは)何もないの?」と冗談を飛ばして場の雰囲気を和ませる。亜湖チーフパタンナーは、ブランド設立時から暢デザイナーと共にデザインとパターンを手掛け、ブランドの成長を支えてきた存在だ。“妻”ではなく“相方”と呼ぶところに2人の関係を一瞬だが垣間見た気がした。

 ショーのフィナーレには西崎夫妻がそろって登場し、来場者からパリ進出の祝福を受けた。「ウジョー」は今後もパリでの発表を続けていきたいという。