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帰ってきたメンズコレドタバタ日記Vol.3 背筋が伸びる「プラダ」にイタリア版楳図かずおの「MSGM」

 さぁ、ミラノメンズも中盤戦。今日も晴天、張り切って街を駆けずり回りたいと思います。

11:25 サルヴァトーレ フェラガモ

 近頃「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」は、とても良きです。メンズは「ランバン(LANVIN)」出身で、僕が敬愛するルカ・オッセンドライバー(Lucas Ossendrijver)門下生のギョーム・メイアン(Guillaume Meilland)が、クリエイティブ・ディレクターのポール・アンドリュー(Paul Andrew)と作る体制。ポールが求める着心地と美しさの両立を、ギョームがツイストを効かせながら生み出すカンジがとても良いのです。「タイムレス」の価値が増している昨今の時代感にもマッチしています。

 取り立てて「ワォ!」と驚くアイテムはありません。中盤に1回だけ登場した、レザーのピタピタサロペットくらいでしょう(アレは一体、なんだったんだろうw?)。でもダブルのチェスターも、スキッパータイプのざっくりニットカーディガンも、スーツ地で作ったノースリーブのダウンベストも、程よいリラックスシルエットや機能性でちょうど良い。しかも長く着られそう。良い服とは装飾の多いモノではなく、細部まで工夫を凝らした洋服なんだと諭してくれます。

 これがもうちょっと店頭に並ぶようになると嬉しいなぁ。思いきってセレクトショップへの卸とか始めませんか?既存の顧客もしくは新たな消費者に、ウエアを中心とした新しい「フェラガモ」の世界が築けそうな気がします。

12:20 エトロ

 さぁ、お次はデザイナー業界随一の野生児(⁉︎)、本能に純粋。ゆえに誰よりも感受性が高く、それが共感の源となっている「エトロ(ETRO)」メンズです。

 ショー開始20分前のバックステージは、こんなカンジ。メンズのクリエイティブ・ディレクター、キーン・エトロ(Kean Etro)は、さすがの人気、そして余裕っぷりです。

 このキーンさん、「一体、どういう生き方をしたら、そうなるの⁉︎」というくらい素直で、大胆で、人間力の高い人。おそらく社内のスタッフは大変な場面も多いでしょうが(お察しますw)、外から見ると「なんて素敵!その通り‼︎共感しちゃう‼︎!」というオジサマです。今期のクリエイションも、そんな感じでした。バックステージで、「洋服選びは、宝探しみたいなもの。見つけたら嬉しくなっちゃって、だからこそ古くなっても愛し続けられる洋服が必要だ」と話したキーンさんの最新コレクションは、正統派のチェスターコート、艶っぽいシルクシャツ、パンツ、それに乗馬ブーツというクラシカルエレガンス。ストリート勢の一部が姿を消した、今期のメンズシーンと呼応します。

 そう、人間力の高いキーンさんは、多分トレンドなんてあんまり意識しないのに、結果、時流をキャッチするのです。彼の、そんな「大当たり〜!」な瞬間を何度か目の当たりにすると、「人間の本能って、スゴい!」と思わずにはいられません(笑)。

13:00 エルメネジルド ゼニア & Z ゼニア

 タクシーに乗って、「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」の展示会へ。先シーズンにスタートした、自社で完全リサイクルする素材によるコレクションは、カシミヤからウール、化繊に至るまでのバリエーション。洋服を作る際に生まれる残布を糸に戻し、また生地にして洋服を生み出します。そんな洋服にのせたのは、なぜか今シーズン頻出のオプアート。「エルメネジルド ゼニア」の場合は、チェックやストライプなど、メンズにとって欠かせない柄を何回も重ねて、不思議な視覚効果を生み出します。柄を幾重にものせたのは、そもそもの洋服の生産はもちろんですが、リサイクルならなおさら、いろんな人の手、そして思いが重なり合っているから。ファクトリーから生まれたブランドゆえ重んじる生産の過程を柄にすると、こうなるワケです。

 「Z ゼニア(Z ZEGNA)」は、アレッサンドロ・サルトリ(Allessandro Sartori)らしい玄人っぽい色合い。こちらは、“目”が重なりシュールでした。

14:20 MSGM

 ファーストルックだけを見るとコンサバにシフトした「MSGM」ですが、 いやいや、ぶっ飛んだ一面も覗かせます。今シーズンは、デザイナーのマッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)が10代の頃夢中だったというホラー映画を生み出した、イタリアの奇才ダリオ・アルジェント(Dario Argento)監督にオマージュを捧げました。マッシモのメンズは、イタリアで生まれ育った自らの原体験を、若々しいスタイルで描くのが上手です。みなさん昔「リング」とか「貞子」を友達と、暗い部屋でポテトチップスを食べながらドキドキ見たりしませんでした?あのときの映画の世界観を、今ドキなワンサイズオーバーのフォーマルに落とし込んだと言えば、分かりやすい気がします。

 ということで描かれたモチーフは、黒猫(不気味)、毒キノコ(毒々しいカラーリング)、食虫植物(リアル)、そして楳図かずお的なキャラクター。最近立て続けだった「アタッカーYOU!」「キャプテン翼」に続く、「日本のマンガへのオマージュ3部作の完結編?」と思うくらいイラストは楳図です。コレ、欲しいなぁ。でもこんな洋服で電車に乗ったら、誰も両隣に座ってくれないでしょうか(笑)?

14:45 マルニ

 「マルニ(MARNI)」の展示会へ。昨日、一番のナゾとお話したショーを解明すべく伺いましたが、「答えはフランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)の頭の中」とのお言葉だけを賜り、あとははぐらかされました(笑)。「そんな!もうちょっとヒントを‼︎」とも思いますが、フランチェスコに言わせれば、きっと「正解なんてない」のです。コレクションは、各々が自由に解釈してくれて良し。今期は、いつも以上にそんなカンジなのだと言います。重要なのは、「proportion with no imposition」、日本語で言えば「強制なき提案」と言ったところでしょうか?解釈の自由を保証します。

 ということでアイテムは、相変わらずバラバラなサイズ感。コレ、一応全部「48」というサイズなんですけれどね(笑)。自由に解釈し、自由に選んで、自由に着る。それが今の「マルニ」なのです。

15:20 アスペジ

 若干タッチ&ゴーになりましたが、「アスペジ(ASPESI)」の展示会へ。来月末には東京・南青山に旗艦店がオープンします。これまでの「アスペジ」と言えば、シャカシャカナイロンの機能的ブルゾンのイメージ。ところがそれは「アスペジ」のごくごく一部で、本当はシャツからパンツ、ジャケット、コートまで揃うトータルブランドなのです。ワンピースなども提案するウィメンズは、さらに大きなコレクションを有しています。

16:25 プラダ

 「プラダ(PRADA)」は、ファーストルックからいつもと違います。「精悍」なのです。ピタピタのニットベストにノースリーブシャツ、折り返しの大きなプリーツパンツというスタイルで始まった2020-21年秋冬メンズは、スリムなシルエット、フォーマル中心の洋服よりむしろ、コンパクトなシルエットゆえ背筋をしゃんと伸ばしたモデルの凛とした佇まいが印象的でした。その姿はまるで、広場を模した会場に設けた彫刻、いや、実際は紙で作った模型のようなオブジェなのですが、とにかく凛々しい貴族のようです。

 ただ、単なる懐古主義、今季のミラノメンズに蔓延している伝染病のような病を跳ね返すのがミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)。次第にひざ下丈のアノラックやレインブーツなど、ストリートやワークウエアと融合し、かつての貴族服を現代の男性像に近づけます。バリエーションは前回のウィメンズ同様、従来に比べるとかなり控えめ。キーアイテムを絞ってムダなモノは作らない、ミウッチャ流の“断捨離ミニマリズム”でサステナブルの価値を説くかのようです。

17:10 セラピアン

 お次は「セラピアン(SERAPIAN)」。工房取材を兼ねて、「カスタムオーダーのバッグを作ってみませんか?」とのお誘いをいただき、体験させていただきました。今回は、無数の切り込みを入れたレザーパネルに色とりどりのレザーを通す“モザイク”というラインのカスタム体験。ブランドはリシュモングループに買収されたばかりですが、先祖代々ブランドを守ってきた3代目のジョバンニ・セラピアン(Giovanni Serapian)がお手伝いしてくれます。

 僕がオーダーしたのは、こんなバッグ。今ファッション業界のみならず世界にとって欠かせない価値観、ダイバーシティー(多様性)を象徴するレインボーを本体にドカンとあしらってみました。と言うより、虹をバッグにしてみたかった、そんなカンジです。オーダー体験のレポートは、3カ月後に完成するバッグとともに別途お届けします。もうすぐギンザ シックスでポップアップが始まりますよ!

18:10 トッズ

 さぁ、夜も遅くなってきたけれど、まだまだ続きます。「トッズ(TOD’S)」です。メンズは新クリエイティブ・ディレクター、ヴァルター・キアッポーニ(Walter Chiapponi)が就任。ウエアからバッグ、シューズに至るまで一新です。ウエアは、クラシックで洗練されたムードを残しながら、スポーティーに。“ゴンミーニ”には、ブーツタイプが登場しました。スニーカーは、レトロランのムードかな?ブラウン、カーキ、そしてネイビー。メンズに不可欠な色からのスタートです。

18:50 ミッソーニ

 フィナーレは、「ミッソーニ(MISSONI)」。カラフルなニットで心ウキウキ。今日も楽しい会食で1日が終了です。