PROFILE: (左)髙垣道夫/アクセ専務(右)髙垣佳代子/アクセ常務

日本には、ファッションシーンを作ってきた目利きたちがいる。彼・彼女たちはどのように感覚を研ぎ澄ませ、何を目利きし、時代を動かしてきたのか。背景にある考えや哲学を知ることで、今のバイヤーたちにも大いに学びとなるはずだ。
セレクトショップ「パリゴ(PARIGOT)」を運営するアクセは1925年の創業で、今年100周年を迎えた。その歴史もさることながら、広島・尾道という地方発のセレクトショップが麻布台ヒルズやギンザ シックスという都内一等地に出店し、商売を継続しているケースは他になかなかない。同社でバイイングをリードするのは、髙垣圭一朗会長、孝久社長のきょうだいである道夫専務(メンズ)、佳代子常務(ウィメンズ)。日本のセレクトショップ文化をアップデートし続ける2人に聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年9月8日号からの抜粋です)
失敗もたくさんして、
心底ファッションを楽しむこと
WWD:「パリゴ」の立ち上げは1992年。
髙垣佳代子常務(以下、佳代子):尾道という、若者が少ない街にどうやって若者を呼ぶか。それで現会長とセレクトショップを立ち上げたが、ブランドにアプローチしても、「尾道なんて田舎ではうちのブランドは売れない」「既に広島に取引先がある」などと断られてばかり。今となってはそうそうたるブランドを扱うようになったが、諦めずに、隙間を縫うようにステップアップしてきた。
髙垣道夫専務(以下、道夫):2009年にオープンした広島店で本格的にメンズを扱うことになったが、その時もブランドからは門前払いばかりだった。なんとかオープンに漕ぎ着けても、同業者の「なんだ、この程度(のブランドしかそろえられなかったの)か」という視線を感じ、相当悔しい思いをした。見返してやろう、お客さまにいい店だとさえ思っていただければ、絶対に未来は拓けると思ってやってきた。
WWD:日本は各地に名店セレクトショップがあるが、「パリゴ」のように都内にも進出しているケースは多くない。
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道夫:地方発で都心の高額賃料を払ってやっているところは他にあまりない。当社は有楽町ルミネや丸の内仲通り沿いに出店していたこともあるが、コロナ禍も経験し、客と向き合いじっくり接客した方が強みを生かせると考え、都内は麻布台ヒルズ、ギンザ シックスという落ち着いた館への出店に舵を切った。来年は岡山に男女複合店を出店、再来年は別業態の「ジャパンデニム(JAPAN DENIM)」でも出店を計画している。
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