「ユニクロ(UNIQLO)」の“ワイヤレスブラ”が、軽い着け心地やナチュラルなシルエットを好む欧米の消費者にも支持され、海外での売り上げを伸ばしているという。「背景には、コロナ禍のステイホーム期間中に実感した心地よさを、アフターコロナでも求め続ける風潮がある。セルフウェルネス、心身の健康意識から、快適性を求める傾向が高まっている」と、ウィメンズインナーのMDを担当する炬口佳乃子(たけのくち・かのこ)商品企画担当部長は話す。そうした流れに後押しされ、世界的にノンワイヤーがブラジャーの主流になってきていることを実感しているという。
ユニクロは2003年にワイヤー入りブラとノンワイヤーブラを発売し、ブラジャー市場に参入。11年にノンワイヤーブラに一本化した。ターニングポイントとなったのは、16年に登場した“ワイヤレスブラ ビューティライト(20年に“ワイヤレスブラ/3Dホールド”に名称変更)”。「ノンワイヤーブラとワイヤーブラの良さを両立させたブラ」として注目を集めた。以来、機能性と快適性を追求しながらさまざまな進化を遂げている。19年には独自の立体構造によるカップを採用し、「一人ひとりの胸に寄り添うブラ」としてアップデート。23年12月に再びリニューアルし、体温によってじんわり柔らかく伸びるパーツをカップに内蔵し、一人ひとりの胸によりなじんでよりフィットする現在の仕様となった。
シーンや気分で
ブラのワイヤーあり、なしを使い分け
25年1月には、同じカップの仕様でカップ上部から肩、バックにメッシュを使用してより軽さや涼しさを追求した新デザイン“ワイヤレスメッシュブラ/3Dホールド”(2290円)を発売。炬口部長は現在、パリのファーストリテイリング イノベーション センターを拠点に、グローバルでウィメンズインナー部門の指揮を執っているが、“ワイヤレスメッシュブラ/3Dホールド”の商品説明会に合わせて、一時帰国した。
ユニクロが日本国内で実施したインターネット調査では、ワイヤーブラを普段から着用している人は48.2%、ノンワイヤーブラを着用している人は42.2%、ブラカップ付きのインナートップスを着用している人は46.0%となったという(n=604、23年9月実施。〜49歳女性)。これは、「ワイヤーブラだけ、ノンワイヤーブラだけと限定して着用している人は少なく、シーンや気分、ファッションによって使い分けている人が多い」ことを表しているという。そういった消費者のブラジャーの選択肢の広がりも、ユニクロの“ワイヤレスブラ”の好調につながっているようだ。
23年12月にリニューアルした“ワイヤレスブラ 3Dホールド”には、「ホールド感がいい」「締め付け感がない」「フィット感がいい」などの声が多く、中学生のファーストブラや卒乳ブラとして購入する人など幅広い層に支持されている。浸透するに伴い「もっとほかの色柄が欲しい」「違うデザインが欲しい」との声が上がり、ファッションでもトレンドのシアー感を取り入れた“ワイヤレスメッシュブラ3Dホールド”の発売に至ったという。
「シンプルでも美しいものは作れる」
海外では、アメリカンスリーブなどのデザインを採用した「ユニクロ」のブラトップがTikTokをきっかけにブレイク済みだ。「ブラトップは22年に兆しが表れ、23年に火がついた。22年に比べ24年の海外でのブラトップの売り上げは2倍以上」になったという。ブラトップがフックとなって“ワイヤレスブラ”の認知が広がり、購入につながるケースが増えているという。
現在パリを拠点にする炬口部長は、国によって下着に求める要素が違う事も実感している。例えばフランスにおいては「(ユニクロが得意とする)快適性・機能性だけでは買ってくれない。感性が満たされないと店の入り口にすら近づいてもらえない」と語る。「世界共通で売れるブラジャーを追求する一方で、ローカル対応したブラジャーが必要になってくる」として、今後はローカルに根差した商品の開発も視野に入れている。
「機能性・快適性を備えつつすてきなブラジャーだと思ってもらうことが非常に大事。それはデコラティブに装飾するということではない。少しのカッティングや肌見せの分量などで微差を突き詰めていけば、シンプルでも美しいものは作れる。今後はそういった目線で商品を改良していきたい」と炬口部長は意気込みを語る。