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“真”のインフルエンサーをデータ解析するマーケティング企業が、ファッション業界で目指すもの

 「WWDジャパン」12月2日号の特集では、10~20代前半の“SNS世代”の意識を調査した。巻頭企画として行った全国の服飾専門学校生役1600人へのアンケート調査内での「気になるインフルエンサー」項目では、1位に動画クリエイターのけみお、2位に姉弟インフルエンサー、よしあき&ミチのミチ、3位に渡辺直美らが名を連ねた。しかし、学生たちに選ばれた彼ら(彼女ら)はSNS世代に本当に影響力を与えているのか?そんな疑問を明らかにするため、本特集では、SNS上のデータ解析を通じて、インフルエンサーの調査や企業・ブランドのPR・マーケティングにおけるマネジメントやコンサルティングなどを行う企業、アンドオブの塩原宣章マーケティングPR、ディレクターに「SNS世代に真に影響を与えることのできるインフルエンサー」の調査を依頼。結果を紙面に掲載した。そもそもアンドオブは何をする会社なのか。解析を通じて得たデータをどのように用いているのか。塩原ディレクターに聞いた。

 塩原ディレクターの経歴は多岐にわたる。IT系の企業を経て立ち上げ期の「クリスチャン ダダ(CHRISTIAN DADA)」(2020年1月に休止を発表)の取締役に就任。東京の気鋭セレクトショップなどにも在籍し、その後は希船工房に入社してアパレルやグッズなどのモノ作りや新規事業などに関わってきた。それ以外にも、キャンプファイヤーにも参画するなど、数々の企業に在籍していたが、彼がSNS解析を行い始めたきっかけはアパレル業界にいた際のとある体験が大きい。「ファッション業界で働き始めたのは31歳とかなり遅く、周囲との関係値が全くなかった。特にPRには興味があったが、上の世代の人たちは自分が築いた人脈をほかの人に解放したがらない。師弟関係のようなものがPR界の間にはできていて、あとから参入してもなかなか上にいけなかった。一種の不条理を感じていて、その不条理を否定したいと考えていた」と塩原ディレクター。

 そんな業界の不条理を感じていた彼がSNS領域での可能性に気づいたのは、希船工房にいた際の出来事だ。「ある人気バンドのメンバーが作っていたモノを買ってくれて、その際のSNSを見て、翌日から彼らが買ったものと同じものを購入したいという声が殺到した。アーティストをスタイリングして、雑誌に掲載すれば売れるという従来の流れではなく、アーティスト個人のSNSを通じて、ファンを動かすことができると強く感じた。ビジネスをする上でわれわれは、ファンに負けないくらいに敏感であるべきで、それを数字で示したかった」と当時を振り返る。後に、キャンプファイヤーで企業がSNSを駆使し、コミュニティーを作ることで多額の資金を調達する事例などを見て、SNSの力を再認識。18年にアンドオブを設立し、SNSのデータ解析を始める。

 当初は芸能事務所に所属するアーティストの公式SNSのデータを定点観測する業務などを請け負っていたアンドオブだが、徐々に解析データを用いてPR・マーケティングのほか、新商品開発などにおけるコンサルティング業務を行うようになる。同社の本格的なサービス運用事例の第一号となったウィメンズブランドでは実績も残した。「最初の仕事はインフルエンサーをクリエイティブ・デイレクターに起用した、インフルエンサー活用型のブランドビジネスだったため、PR・マーケティングにおいてどのようなインフルエンサーと相性がいいのかを非常に気にしていた。運用後はフォロワーの伸び率や売り上げが10倍になるなど、一定の効果は上がった」。また、アンドオブが行うSNS解析はファッション業界外でも活用できるという。「例えば、高校生に対して、飲料メーカーの緑茶をどう売るかといった施策であれば、その緑茶のSNSアカウントと、高校生に人気のインフルエンサーのアカウントを解析し、両アカウントの相違点、もしくは共通点から施策を考えるなどもできる。そのほか、地域活性化などもSNSを通じてできると考えている」。

 アンドオブの事業を通じて、既存のPR業界を覆そうとしている塩原ディレクターは今後、何を目指すのか。「感覚を論理的に説明できるような環境を作りたい。特にファッション業界では、感覚が重用されてしまっているが、外の人に説明ができない。例えばブランドの営業の間には、さまざまな戦略があるが、PRには論理的な戦略がなく、どの雑誌に掲載してもらえればイメージがいいか、といったことを感覚で話してしまっている。実際に社内でもPRが何をしているのかが他部署からはよくわからず、PRのマネジメントの依頼を当社が受けることもある。既存のPRのあり方を否定しようとしているので、トラブルは非常に多いが(笑)、感覚を言語化する仕組みを作ることで、PRと連携した戦略的なビジネスを立案できるようにしたい」。