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花に溢れた「ルイ・ヴィトン」2020年春夏メンズ 仮想の街に込められたダイバーシティーへの思い

 2020年春夏シーズンのメンズコレクションを取材する記者2人が、見たまま感じたままにコレクションをレビューします。先輩記者Mは15年間メンズコレクションを見続けてきたベテラン、後輩記者Oは取材歴3年目。時には甘く時には辛口に、それぞれの視点で最新コレクションを語り合います。

後輩O:さて、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」はヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)がメンズ アーティスティック・ディレクターに就任して3シーズン目となりました。会場はドフィーヌ広場。モノグラム入りのベンチを設置したり、クレープやジェラートをサーブする屋台があったりして、一帯を街にしてしまいました。僕が「ルイ・ヴィトン」のショーを見たのはまだ2回目ですけど、ポップアップやパーティーといい、観客をワクワクさせる演出が本当に上手い。風船で作った帽子を被ってショーを見てる人もいましたし。

先輩M:それは、ワタクシのことですね。今更思ったのですが、後ろの方にジャマでしたかね(笑)。失礼しました。演出は、ヴァージルのプランを実行できるLVMHの資本力にもビックリだけど、最初から初志貫徹しているのは、誰でも共感できる価値にフォーカスを当てること。虹色のランウエイで大勢を巻き込むこと、キング・オブ・ポップのマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)の影をチラつかせること、晴れた日に公園に行ってお茶したりジェラートを食べたりすること。どれも、人種や性別、宗教、価値観に関係なく「そうそう、いいよね」って言える当たり前を大事にしてる。

後輩O:そうですね。素直に感動できます。今回の演出もとても響きました。一瞬、旅行にでも来たような気分にさせてくれましたし。コレクションは、またまたボリューミーなシェイプでしたね。一点一点のサイズが大きいし、オーガンジーを3重にレイヤードしたシャツや、プリーツが入って裾に向かって広がるアウターなんかはさらに巨大。スーツもストリートウエアの感覚で作っているから、自由で面白い。反面、顧客幅はかなり絞られそうな気はしました。この春からメンズのプレを強化したり、ベーシックな定番アイテムを“ステープルズ エディション バイ ルイ・ヴィトン(STAPLES EDITION BY LOUIS VUITTON)”としてブランド化したりと、着やすいアイテムを増やした分、コレクションは自由な感覚で作っているということなんでしょうか?

先輩M:そうだね。ベーシックは別ラインでしっかり提案する体制を整えた分、今回のコレクションは冒険が多かった。身頃を全部切り離した後にヒモでつなぎ直したブルゾンとか、総プリーツのブルゾンとか。セットアップは上下が異なるパステルカラーで、シルエットこそ変わらないけれどフレッシュ。若い世代が憧れてくれそうだった。とはいえ、やっぱりポイントはアクセサリー。今回は“モノグラム”も“ダミエ”も、フロッキープリントみたいな3Dモチーフ。こちらはネオンカラーゆえにキャッチーで、またも争奪戦が繰り広げられそう。

後輩O:3Dのダミエかわいかったですねー。ヴァージルは本当にアクセサリーが上手い。コレクション取材をしていても、チェーン付きのボックス型のショルダーバッグ“ソフトトランク”を持っている人をたくさん見かけます。バリエーションで見せていた三角形のボストンバッグも良かったし、ほかにも色々ありました。トートやワンショルダー、クラッチを連ねた“着るバッグ”もついに出てきましたね。ここ数シーズンはポケットがたくさんついたブルゾンやベスト、パーツウエアが数多く出てきて、それらのことを分かりやすく“着るバッグ”と表現していましたが、まさか本気のやつが出てくるとは。

先輩M:ずっと「トランクやバッグからスタートした『ルイ・ヴィトン』らしい洋服とは?」って考えているからね。色も、素材も、形もさまざまなバッグは、ダイバーシティー(多様性)を何よりも重んじているヴァージルらしいし、やっぱりアクセサリーがビジネスの柱の「ルイ・ヴィトン」らしい。今シーズンは、「花は1つとして同じものがない」って考えのもと、SMAPの「世界で一つだけの花」みたいなコレクションを見せてくれました。いろんなバッグを、いろんな人が、いろんな風に楽しんでくれると、ファッション業界はまだまだ元気になれるね。