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グッチが多様性を推進する「チェンジメーカーズ」プロジェクトを開始 まず北米で5億円超の予算

 「グッチ(GUCCI)」は、ECで販売していたバラクラバ帽風のトップスが黒人差別だと指摘を受けて2019年2月に謝罪し、再発防止策として多様な人材の採用や社員教育、世界中のデザイン学校と提携した奨学金の提供などを含めた多様性とインクルージョン推進プログラムの実施を発表している。それがいよいよ「グッチ・チェンジメーカーズ(GUCCI CHANGEMAKERS以下、チェンジメーカーズ)」として具体的に動き出した。

 マルコ・ビッザーリ(Marco Bizzarri)社長兼最高経営責任者(CEO)は、「『チェンジメーカーズ』は4年前にスタートした取り組みの一部として18年に社内で発表されていたが、2月に起きた件によってさらに推進された。さまざまなプログラムを予定しているが、まずは北米でアフリカ系アメリカ人やその他の有色人種コミュニティーの若者を対象としたものをスタートする。6月にはアジア太平洋地域でも同様のプログラムを実施し、グローバルに順次展開していく」と語った。これに伴い、北米での5年間にわたる活動を支えるべく500万ドル(約5億4500万円)の基金と、150万ドル(約1億6350万円)の奨学金プログラムが設立された。アジア太平洋地域でも同様の基金が別途設立される。

 「チェンジメーカーズ」は、多様なコミュニティーのリーダーや人権活動家、弁護士など識者15人で構成されたチェンジメーカーズ協議会(CHANGEMAKERS COUNCIL)の助言を受けて実施する。同協議会にはニューヨーク・ハーレムの伝説的テーラーであるダッパー・ダン(Dapper Dan)ことダニエル・デイ(Daniel Day)や、弁護士兼著述家のヤシーン・エルデック(Yaseen Eldik)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授のエリック・アビラ(Eric Avila)、ラッパーのウィル・アイ・アム(Will.i.am)らも参加しているほか、北米の非営利団体とも連携するという。なお、グッチ アメリカに新たに設けられる執行役員職の“多様性とインクルージョン担当グローバル・ディレクター”はまだ任命されていない。

 同社は1万8000人の全社員を対象とした多様性に関する教育プログラムを実施することに加えて、ローマの本社でメンターと共に働くことができる交換プログラムや、多様な背景を持つデザイナーを5人採用することを発表しているが、手続き面で難航している部分もあるという。ビッザーリCEOは、「ローマ本社で異なる文化的背景を持つ人々を雇用する場合、ニューヨークのように簡単にはいかない。適切な人を探し、ここまで移動させ、かつ現場になじんでもらうのは簡単なことではないし、ビザなどの煩雑な事務手続きもある。新たに任命する執行役員は多様性に関してある程度の経験を必要とするが、そうした人材をイタリアで探すのは難しいので、米国で採用するつもりだ。なるべく早く任命したいと思っているが、妥協せずに適切な人材を探したい」と述べた。なお、5人のデザイナーについては世界中の応募者の中から20人にまで絞られており、近々アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)=クリエイティブ・ディレクターとの面談が行われる。交換プログラムについても、すでに3人の社員が選定された。

 バラクラバ帽風のトップスが初めて登場したのは18-19年秋冬コレクションで、騒ぎになったのはその約1年後だったが、そのようにソーシャルメディアで大騒ぎになったことと、最近「グッチ」の売上高が飛躍的に伸びていることには相関性があるのではないかと推測する向きもある。ビッザーリCEOは、「話が大きくなって驚いたが、この件では会社も私も非常に多くのことを学んだので、前向きにとらえていきたい。多様性に関するプログラムを実施するが、絶対に間違いを犯さないとは約束できないし、創造性を発揮したことで間違いを犯してしまうこともあると思う。今後はコミュニケーションや対話をいっそう大切にして、世界にはさまざまな文化があることを意識しながら製品を作っていく」と述べるにとどめた。