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リカルドの「バーバリー」2シーズン目は英国の反骨と伝統にフォーカス 目玉は圧倒的なコート提案

 前シーズン、お祭りのような大規模なショーで幕を開けたリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)による新生「バーバリー(BURBERRY)」。紳士淑女からパンクな少年少女まで全方位をカバーするデビューコレクションでは、ブランドのヘリテージとリカルドの新味がガッチリはまっていた。この間、さまざまなブランドで進められたデザイナー交代劇の中でも、幸せな一例として捉えられる向きが業界内では強い。期待の2シーズン目となる2019-20年秋冬は、前回への自信と手応えを感じさせる内容。イタリア出身の異邦人リカルドによる「英国とは何か?」というアプローチを踏襲しつつ、より自由に、アグレッシブになった。

 近現代アートの美術館、テート・モダンの円形の空間にイスが並べられ、周囲を工事現場のような金網がおおう。ショーが始まると、その金網をキャップやショーツ姿の若者たちがよじ登り始める。そんな演出に驚いていると、ラガーシャツをアレンジしたミニドレスの女の子や、トラックパンツの男の子が現れる。前シーズンはエレガントな“淑女”“紳士”カテゴリーで始まり、やんちゃな“少女”“少年”へと続いたが、今季はその逆の構成だ。

 コートが主力のブランドだけに、手を変え品を変えのアウター提案が圧倒的。シグネチャーの一つであるダッフルコートはダウン素材で表情を変え、ハウスチェックのトレンチコートはブランドロゴをプリントして大胆にアレンジ。ダウンベストが腰からぶら下がったようなテーラードコートも目をひく。ファーフリー宣言はしているが、どうやらシアリング(ムートン)は使用している。

 際立っているのが、ウールコートやテーラードジャケットのぴっちり体に沿うようなシルエット。ライン入りジャージやGジャンなど、カジュアルなアイテムと合わせていてもそれが分かる。「ジバンシィ(GIVENCEY)」時代の後年はストリートスタイルに注目が集まったリカルドだが、もともとテーラリングの巧みさは折り紙付き。“紳士”“淑女”のカテゴリーに突入し、スーツやシンプルなキャメルのコートといったアイテムが増えると、それがより浮き上がってくる。

 といっても、“紳士”“淑女”もコンサバなだけのエレガンスではなく、ウイットやひねりを感じさせる内容。TBモノグラムのブランケットを背負ったトレンチコートがその代表だ。“紳士”“淑女”と“少年”“少女”のカテゴリーを超えたミックスも前回より活発で、たとえば大御所モデル、ステラ・テナント(Stella Tennant)はキャメルのエレガントなスーツに、ストリート気分いっぱいのビーニー(ニットキャップ)姿で登場した。

 フィナーレは、壁によじ登っていた若者たちからの大歓声の中をモデルが歩いてくる演出。そこで改めて考える。この若者たちは一体誰?この演出の意味は?そこにこそ、今回のショーに込めたリカルドの意図が隠されている。

 聞けば、今回のショー会場は2部屋あり、もう一部屋は一直線のランウエイに階段状の客席を備えた古き良きショー空間だったという。映像で確認すると、金網から若者が囲む部屋とは対照的な空間が広がる。今季のテーマは“テンペスト”。言わずとしれたシェイクスピアの名作だが、そこに描かれた反骨心や自由さと、伝統的で型の確立された価値観という英国の二面性を表現したかったのだという。もちろん、金網の若者は反骨と自由の象徴であり、“紳士”“淑女”と“少年”“少女”がオーバーラップするスタイリングもこうした考えによる。

 「デビューコレクションで⽬指したのは、ブランドを語る上で⽤いるべき新しい⽂字や記号を作り出すこと。2シーズン⽬の今季は、それらを使って新生『バーバリー』の第1章を書き始めた」とリカルドは語り、手応えはバッチリのよう。日本に目を向けると、今春は百貨店に3店出店すると共に、ポップアップストアも積極開催し、有力セレクト店への卸も再開した。市場拡大に向けて営業面でパワー全開だが、リカルドのクリエイションがそれを後押ししそうだ。