ファッション

ロンドンでも韓流ブーム 現地業界人に聞く韓国人デザイナーが愛される理由

 ロンドンでの韓国勢の勢いが止まらないようだ。主要なコンセプトストア、ブラウンズ(BROWNS)、ドーバー ストリート マーケット ロンドン(DOVER STREET MARKET LONDON)、マシーンA(MACHINE-A)などもこの数シーズンでメンズ・ウィメンズ共に韓国人デザイナーによるブランドの取り扱いを増やしている。主なブランドは「レジーナ ピョウ(REJINA PYO)」「アーダー エラー(ADER ERROR)」「ヘイン・ソ(HYEIN SEO)」「カンヒャク(KANGHYUK)」など。ソーホー地区の一等地にはアイウエアブランド「ジェントル・モンスター(GENTLE MONSTER)」が約450平方メートルの旗艦店を昨年夏にオープンした。ファッションだけではない。百貨店のコスメコーナーに行くと“アジアンビューティコーナー”が設けられアジア発のコスメ・スキンケア商品が置かれているのだが、ほとんどが韓国製品で、日本や中国製品はわずかだった。

 イギリス市場において韓国人デザイナーの魅力は一体何なのか?「ヘイン・ソ」「カンヒャク」、ジュエリーブランド「ボートン(BEAUTON)」を扱うマシーンAのビジネス・マネジャー兼シニア・バイヤーのミア・ポアリエ(Mia Poirier)は「韓国人デザイナーのブランドがイギリスをはじめヨーロッパで成長しているのは自然な流れだと思う」と話す。「一番大きな要因は、韓国出身の学生がヨーロッパ(アントワープやロンドン)でファッションを学び、西洋の教育と彼らのバックグラウンドが組み合わされる点にある。両方の文化を持ち合わせた創造の新しい視点は、ヨーロッパの人々にとって新鮮で刺激的に映る」と付け加えた。また数年前からほぼ毎シーズンソウル・ファッション・ウイークに参加しているという彼女は「ソウルの小売市場はこの1〜2年で精力的に変化し街を訪れるたびに新しい発見があり、ソウル・ファッション・ウイークもシーズンごとに規模を増している。互いの国の留学生や観光客も増え、相互的に刺激し合っている」と、近年のソウルの街の変化も影響していることを示唆した。

 筆者が暮らすパリでも韓国人デザイナーによるブランドをよく見かけるようになったと感じるが、ロンドンほどではない。フランス人は辛いものが苦手な人が多いからかもしれないが韓国料理レストランも数える程しかなく、街を歩いていてもロンドンほど韓国人観光客も多くない印象だ。イギリスや韓国について特段詳しいわけではないが、今回ロンドンを訪れた際、ブランドロゴや商品パッケージのデザインなどがイギリスと韓国の製品は似ているように思った。配色や文字フォント、グラフィカルなデザインがどこか共通しているというのは、パリでは感じたことのない感覚だった。両国が共通のデザインセンスを持っているのか、もしくは韓国が海外市場向け製品のデザインを上手にその国に合わせて開発しているのかは分からないが、何かしらの共通点があるのではないかと思う。

 ジェ・イ(Jae Lee)「ジェントル・モンスター」グローバル・プロジェクト・マネジャーに、ヨーロッパの1店舗目となる旗艦店の場所にロンドンを選んだ理由を尋ねると「迷うこともなくロンドンだった」と即答した。「民主的で、他者を受け入れる多様性に満ちたオープンマインドなロンドンは、ブランドの哲学や方向性が街の雰囲気にぴったり合うと感じたからだ。オープン前からロンドンに顧客もいたが、たとえブランドを知らない人であってもすぐにブランドの特性を理解し、容易に関係を築けると思った。ファッション性が高く、芸術的で大胆なアプローチは、この街の人々が求めるもの」と、街や人々との親和性について語った。

 韓国人デザイナーのブランドを多数そろえる韓国発のセレクトショップ、トム グレイハウンドがパリでも人気を集めている。1月18日には、韓国発アパレルブランド「システム(SYSTEM)」を導入するにあたってパリ・ファッション・ウイーク公式スケジュールでプレゼンテーションを行った。同ブランドは1990年にスタートし、韓国国内にウィメンズ2店舗、メンズ1店舗を構えるビッグブランドで、満を持しての国外進出となる。エカテリーナ・グラズノヴァ(Ekaterina Glazunova)=トム グレイハウンドバイヤーは「『システム』は韓国で『アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)』のような立ち位置で、国内でかなりの人気ブランド。すでに顧客からの反響も大きい。韓国人デザイナーによるブランドはユニークだが実用的なデザインと、”韓国製”の高いクオリティー、さらにリーズナブルな価格帯が魅力。トレンドのアイテムに大きな予算をかけたくない人にとっても賢明な選択だ」と語った。

 この韓国勢の勢いが単なるブームで終わるのか、定着するのか今後引き続き注目したい。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

辻愛沙子と語り合う業界に必要な新しい教養 見た目に伴う先入観や偏見を考えよう

6月14日号の「WWDJAPAN」は、社会派クリエイティブを追求する辻愛沙子アルカ最高経営責任者(CEO)監修のもと、社会課題にまつわる“新しい教養”を対話しながら学びます。コーヒーを片手に社会問題を語り合う、大人に向けた新しい教育の場「ソーシャルコーヒーハウス」を立ち上げた彼女と、ファッション&ビューティ業界だからこそ大切に考えたい、見た目や容姿にまつわる偏見や先入観について対話します。一般的に…

詳細/購入はこちら