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EC発の店舗革命、中国で見た最新オムニチャネルから学ぶこと

 中国でもっとも通販が売れるという11月11日(通称・独身の日)にあわせて、大手EC企業JD.comの取材のために北京を訪れた。到着した日の無人店舗視察に続き(それについての記事はこちら)、翌日は大手家具チェーン「曲美」へ向かった。「曲美」は30年の歴史を持つ老舗家具店で、すでに中国国内に1000店舗以上を出店している。最近では「ストレスレス(STRESSLESS)」を運営するエコーネス(EKORNES)というノルウェー家具企業を約600億円で買収して話題になった。

 そんな「曲美」は今年、JD.comとの包括的提携により、2007年にオープンした北京の実店舗をフルリニューアル。家具に加えて、雑貨や家電、内装など、生活の全てがそろう総合店として新装を遂げた。1万2000平方メートルの店内で150ブランドを取り扱い、店内には実際の家と同じサイズのモデルルームが15もある巨大なショップだ。

 このお店ではJD.comが提供する小売店舗向けの“リテール・アズ・ア・サービス”というソリューションを導入している。具体的には在庫やデータの連動と、AR技術など店頭でのテクノロジーの活用だ。JD.comでの売り上げデータに基づいた店頭ラインアップの効率化や、店頭の値札をデジタル化することで、オンラインに合わせた価格変更、口コミの表示などを可能にしている。また、「O倉庫」というJD.comの独自在庫システムを導入。店頭にある商品の在庫リスクをJD.comが持ち、売れた場合のみ「曲美」の売り上げが立つという、いわゆる百貨店の消化仕入れと同じ仕組みをとっている。

 こうしたシステムによって10月単月で来客数は昨年同月比で3倍、売り上げが2倍、客単価や60%増加したという。特に消化仕入れ型の在庫パターンは実店舗にとってリスクが少なく、売れ行きに合わせて入れ替えもできるので、空間の限られたリアル空間でより良い体験を提供したいという店舗のニーズにも合致するだろう。

 翌日、独身の日には朝からホテル近くにある生鮮食品を扱うJD.com直営の「セブンフレッシュ(7FRESH)」を見学した。訪れたのは今年1月に本格オープンした「セブンフレッシュ」1号店だが、現在は中国国内にすでに3店舗を出店している。店内はいわゆるスーパーと変わらないが、ここでもさまざまなテクノロジーが導入されているそうだ。

 まず、ロスを減らして店頭回転率を上げるために、AIを用いた売れ行き予測を行っている。実際に野菜は1日で完売するといい、商品の回転率は通常のスーパーと比べても3〜4倍早いという。もちろん商品ごとにQRコードをつけた単品管理をしており、商品の詳細な情報や同じ商品の口コミを店頭で見ることができる。水槽を泳ぐ鮮魚にまで、きちんと個別のQRタグがつけられている。

 もう1つの特徴が、店頭在庫を使ってオンライン注文に対応しているということ。半径3km圏内であれば、アプリからの注文で30分以内の配送を実現している。配送料は1点でも無料だ。今後はオンラインでの売り上げを50%まで引き上げたいらしく、店内では注文の入った商品をピックアップする専門の従業員がつねに動き回っていたのが印象的だった。100人近いスタッフのうち、ピックアップ要員は16人いるという。

 支払いはもちろん無人レジで、ほとんどのお客がウィーチャットペイや京東ペイを使って決済をしていた。現在実証実験中の自動追尾型カートでは、利用者の登録をしたカートに商品を入れるだけで合計金額を算出し、そのまま店外へ出ると登録した決済手段で会計される仕組みだという。

 取材当日は独身の日のネットにあわせたキャンペーンを行っており、店内は朝からかなりのにぎわいだった。実際に10日の売り上げも通常の土曜日と比べると30%増だったといい、11日はさらに50%増の売り上げを見込む。何より印象的だったのは、リアル店舗を持ちながら、「オンライン比率を50%まであげたい」という考え方だ。そのためには「オフラインでの接客や品ぞろえをしっかり整えることで信頼を得、オンラインでの売り上げをあげる」と考える。店舗責任者いわく「店舗はオンラインのための倉庫でもある」そうで、まさにオムニチャネルを体現した店舗だと感じた。