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110周年のコンバースがコラボビジネスで目指すもの

 2018年、コンバース(CONVERSE)が110周年を迎える。倒産に陥った同社をナイキ(NIKE)が03年に買収し、売上高は2億ドル(約226億円)から20億ドル(約2260億円)に増加した。14年の売上高は前年比15%増で、15年の売上高も同21%増と好調だったが、16年は同2%増にとどまった。さらに17年の5〜8期の決算は、前年同期比で16%減となった。

 アンドリュー・チャンピオン(Andrew Champion)=ナイキ最高財務責任者(CFO)はこの決算について、北米において供給過多を抑止することができなかったためと説明したが、コンバースの競合他社も同じような売上高推移を見せていることを考えれば、スニーカー市場の競争激化と加速し続ける発売サイクルも理由になりそうだ。例えば04年にVFコープ(VF CORP. INC.)に買収され、現在の売上高は23億ドル(約2599億円)というヴァンズ(VANS)は、14年に前年比17%増、15年に同16%増だった売上高は、16年に6%増にとどまっている。

 そんなコンバースは変革に向けて16年にはトップ人事を入れ替え、前ナイキ チーフ・マーケティング・オフィサーのジム・キャルフーン(Jim Calhoun)を社長兼最高経営責任者(CEO)に、前ナイキ シニア・マーケティング・ディレクターのジュリアン・カーン(Julien Cahn)をチーフ・マーケティング・オフィサーに任命した。

 また、16年は“チャックテイラー(CHUCK TAYLOR)”の進化版“チャック モダン(CHUCK MODERN)”を発売し、同時にラッパーのヴィンス・ステープルズ(Vince Staples)やモデルのウィニー・ハーロウ(Winnie Harlow)、ドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界(STRANGER THINGS)」の主演女優、ミリー・ボビー・ブラウン(Millie Bobby Brown)らのセレブやインフルエンサーを起用したキャンペーン「フォーエバー チャック」をスタートした。

 しかし17年は、コンバースが囲い込みたい消費者ターゲットやスニーカー市場にとって激動の年だった。5月に入社し、コンバースのグローバル・コミュニケーション・チームを率いるコビー・ブルックリン(Khobi Brooklyn)は、「17年は消費者やユースカルチャーに訴えかけるために多くの努力をした年だった。スニーカーカルチャーはピークを迎え、あらゆるブランドがコラボし、スケートライフスタイルがファッションの多くを占めるようになった年だ」と話す。

 5月には「アンディフィーテッド(UNDEFEATED)」とコラボした“ワン スター(ONE STAR)”を発売。続いて7月にはタイラー・ザ・クリエイター(Tyler, the Creator)とのパートナーシップ締結を発表し、ポップなカラーリングの“ワン スター”をはじめとするコラボライン“ゴルフ ル フルール(GILF LE FLEUR)”をスタートした。ブルックリンによれば、タイラーが手掛けたスニーカーは発売から1日で売り切れたという。スニーカーの祭典「スニーカーコン(SneakerCon)」の共同創始者ユー・ミン・ウー(Yu-Ming Wu)は「コンバースのコラボは毎回売り切れになるけど、ここまでの熱狂は見たことがない」とコメントしている。

 これまでコンバースはアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)やフーチュラ2000(Futura2000)といったアーティストとのコラボの他、タイラーをはじめ、エイサップ・ナスト(A$AP Nast)、マイリー・サイラス(Miley Cyrus)といったラッパーやセレブとのコラボ、「ミッソーニ(MISSONI)」「ジョン・バルベイトス(JOHN VARVATOS)」などのファッションブランドとのコラボがあるが、17年には「ジェイダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」と長期パートナーシップを結んだ。12月に「ジェイダブリュー アンダーソン」とのコラボコレクション“GLITTER_GUTTER”の発売で店頭に行列ができたのは記憶に新しい。加えてストリートブランド「ノウ ウェーブ(KNOW WAVE)」との長期パートナーシップもウワサされている。

 こうしたコラボは製品だけでなく、コンテンツにまで及ぶ。例えば、16年にはマイリーやミリー・ボビー・ブラウンといたセレブが友人にインタビューするユーチューブシリーズ、“Public Access”がスタートし、タイラーが手掛ける自身のテレビ番組「Nuts + Bolts」では、コンバースとのコラボシューズの製作を追うドキュメンタリーを公開した。さらに、タイラーはフット・ロッカー(FOOT LOCKER)タイムズ・スクエア店でコラボスニーカーを購入した最初の100人に向け、サプライズショーを開催した。

 そんな努力が功を奏し、同社の17年通期決算の売上高は前年比6%増を記録した。

 「それぞれのコラボにそれぞれのファンがいる。われわれはハイファッション過ぎないブランドとの良いバランスと、消費者とのコミュニケーションを大切にして、それぞれの消費者にとって何がベストな体験なのかを探し続けている。コラボしたものは、それぞれのアーティストのDNAを反映した特別なものでないといけない。パートナーシップの中には、ニッチなものもある。だが、そのおかげでよりクリエイティブなものを市場に送り出すことができている」とブルックリンは語る。