海外のファッション・ウイークでは、やっぱりパリが存在感を発揮しています。ウィメンズでも、ニューヨークとロンドンは若干青息吐息。メンズでは、ミラノさえジリ貧です。ブランドはパリに集中する傾向にあり、加えて2026-27年秋冬シーズンは「面白いな」と思える若手の台頭も印象的でした。
なぜ、パリ・ファッション・ウイークは面白いのでしょうか?いろんな理由があると思いますが、やはり資金力と、他の街に比べると抜きん出て面白いコレクションにまつわる「文脈」、また、その「文脈」を高く評価する傾向だと思っています。
例えば「ディオール(DIOR)」は今季、パリ市内のチュイルリー庭園でいつも通りに開催したファッションショーの招待状を、そこにある金属製のイスのミニチュア2脚と一緒に送りました。「自然光の下でも成り立つ洋服が作りたかった」というジョナサン(Jonathan Anderson)のコレクションの本質を表現すべく、場所はいつも通りでしたが、これまで通り池の上に床を敷いて自然光を遮るテントで覆うのではなく、池を取り囲むように八角形のガラスハウスを組み立てて陽の光がふんだんに降り注ぐ会場を設えました。コレクションは、チュイルリー庭園で見ることができる、さまざまな自然にインスピレーションを得ています。ミニ丈やデニムなどのカジュアルなアイテムは、パリの中心部にある庭園という場所柄でもあります。人々が自然と集い、豊かな自然と何気ない交流を楽しむ場所だからこそ、気取らないアイテムも必要なのです。そんな何気ない交流を象徴するからこそ、招待状と一緒に送った椅子のミニチュアは1脚ではなく2脚。そして「ディオール」はショーの当日、インスタグラムで、ジョナサン・アンダーソンがまさにその椅子に座って“ファッション界のセラピスト”と言われるポッドキャスターのベラ・フロイト(Bella Freud)(精神分析で有名なフロイトのひ孫です)と、今回のコレクションについて語るインスタグラムを投稿しています。この対話は、ジョナサンが「ディオール」で重視する姿勢でもあります。庭園から発想を広げ、招待状から会場、プロモーション、そして肝心のコレクションで、その文脈を表現する。クリエイティビティはもちろん、こうした文脈の表現に全力を注ぐ姿勢は、我々ファッションショーを読み解く人たちが「ディオール」に感心してしまう理由の1つです。
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