ファッション

カール・ラガーフェルドの元秘書が秘蔵コレクションをオークションに出品 「ルイ・ヴィトン」や「シャネル」の希少アイテムも

カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)の長年のパーソナルアシスタント兼ボディーガードを務めたセバスチャン・ジョンドー(Sebastien Jondeau)が、ファッションやアート作品などを含む希少なコレクターズアイテムの数々をオークションハウス「ジュピター(JOOPITER)」に出品することを発表した。

「ジュピター」は、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)が2022年に創設したデジタル・オークション・プラットフォーム。今回のジョンドーによるオークションのタイトルは、「The Collection of Sebastien Jondeau: My Life With Karl Lagerfeld(セバスチャン・ジョンドーのコレクション:カール・ラガーフェルドとともに歩んだ私の人生)」で、3月3日まで世界各国からの入札を受け付けている。

生前、ラガーフェルドは、身近な人々に対して非常に気前が良かったという。頻繁に足を運んでいたパリのセレクトショップ、コレット(COLETTE)でショッピングをした際には、ジョンドーが気になるものを見つけても、それをラガーフェルドに知られるとカゴいっぱいに買い足してしまうことを心配して、あえて口をつぐむこともあったほどだという。「なかでも印象的だったのがガジェット類だ。ある日コレットに行ったとき、彼はiPadを30台ほど購入していた。まだ他の店ではiPadを扱っていない頃で、それを『シャネル(CHANEL)』のスタッフ全員に配っていた」と語る。「彼は、私や身近な親しい人たちに、本当に気前よくしてくれた。『これが好きか?あれは欲しいか?』と聞いてきて、私が『いや、大丈夫です。もう十分持っています』と断ると、『そんなに遠慮しないでくれ』と返されてしまう」。

「ルイ・ヴィトン」の特注品や「シャネル」の希少アイテムも出品

注目のロットには、推定落札価格15〜25万ドル(約2325~3874万円)の、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)が1985年に制作した「Chanel, from Ads」と題された絵画や、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」によるトースターやテーブルリネン、カトラリー、クリスタル製サーモスを収納できる特注の“朝食用スーツケース”が並ぶ。後者は2002〜03年頃に制作されたもので、10〜20万ドル(約1550~3100万円)での落札が予想されている。

「ルイ・ヴィトン」の朝食用スーツケースはもともと、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMHグループ会長兼CEOのがラガーフェルドに贈ったものだ。ジョンドーによれば、ラガーフェルドは旅先に必ず、お気に入りだったフランスのサンドイッチパンブランド「アリーズ(HARRYS)」のパンを持参し、アメリカ滞在中はニューヨークのザ マーサー ホテル(The Mercer Hotel)が冷蔵庫に用意してくれる「I CAN’T BELIEVE IT’S NOT BUTTER」のマーガリンを塗って食べていたという。なお、ザ マーサー ホテルはラガーフェルドとファレル・ウィリアムスが親交を深めた場所でもある。ファレルはのちに、「シャネル」の広告キャンペーンやスニーカーコラボレーション、カプセルコレクションにも参加することになった。

ファッション愛好家たちが競い合うことになりそうなのが、「シャネル」2014年春コレクションの“グラフィティ”バックパックだ。すでにコレクターから高い人気を誇るこのバッグは、ジョンドーが旅の必需品として愛用していたもので、自身とラガーフェルドのパスポートをはじめ、本人いわく“クレイジーな”アイテムを詰め込んでいたという。

写真家ヘルムート・ニュートン(Helmut Newton)の代表作である1981年“モンテカルロシリーズ”からのヌード作品2点も出品される。ラガーフェルドはジョンドーに3点セットを贈ったが、そのうち1点は特別な思い出があるため手元に残すという。きっかけは、ジョンドーが10代の頃、ニュートンの“ワンダーウーマン”のポスターを部屋に飾っていたと打ち明けたことだった。長年の憧れを語ったジョンドーに対し、ラガーフェルドはほどなくしてオリジナル作品を贈ったのだ。

そのほか、ラガーフェルドが晩年に信頼を寄せたメンズウエアデザイナー、エディ・スリマン(Hedi Slimane)によるブルゾンや、「ゴヤール(GOYARD)」のトランク、「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」のゴールドジュエリー、「バンフォード(BAMFORD)」がカスタムしたポール・ニューマンダイヤル仕様の「ロレックス(ROLEX)」“デイトナ(Daytona)”なども出品する。

最も珍しい品物の一つが、2014年に「ルイ・ヴィトン」が創業160周年を記念したプロジェクト「The Icon and the Iconoclasts」のために制作した、専用スタンドとトランク付きのサンドバッグだ。このバッグは限定25点で販売され、ジョンドーのものはシリーズのNo.2だ。本人は、「手元に置いておきたかったのですが、置く場所がなくて」と語る。

ラガーフェルドは、「シャネル」のスポーツ関連製品のテストもジョンドーに任せていた。その中の一つである黒のカーボンファイバー製サーフボードは、予想落札価格1万〜1万5000ドル(約155~232万円)とされている。このサーフボードはラガーフェルドのサイン入りで、実際にジョンドーがサン・バルテルミー島で頻繁に使用していたものだ。

オークションに出品するものは、すべてがラガーフェルドからの贈り物というわけではない。2016年にジョンドー自身が購入した、コレットと「ベスパ(VESPA)」コラボレーションの一点物のスクーターも出品され、これは1万〜1万5000ドル(約155~232万円)での落札が見込まれている。

「ジュピター」のグローバルセールス責任者ケイトリン・ドノヴァン(Caitlin Donovan)は、このオークションを「友情と忠誠心、そしてラガーフェルドが体現した文化的影響力の“生きた記録”」と表現する。「今日のコレクターが求めるのは、物語と作者の存在が感じられる品々だ。製品自体の質の高さと文化的意義が重なるとき、市場は必ずそれに反応する。今回の出品物の多くは、ファッション、アート、デザインに影響を与えた"起点"となる作品であり、ラガーフェルドの創造的な世界に近接していたという事実が、他には代えがたい物語性を与えている」と語る。ラガーフェルドが85歳で逝去してすでに7年が経つが、その遺産は今も色褪せることなく輝き続けている。「彼の美学と哲学は、年齢も時代も超えて、世代を越えて参照され続けるだろう」とドノヴァンは締めくくった。

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