ファッション

「ジミー チュウ」がメンズ強化に本腰 小木“Poggy”基史との協業で取り組む伝統の更新

英国ロンドン発の「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」は、2026年春夏シーズンからメンズ・コレクションの刷新に踏み出した。その背景には、売り上げ全体の6〜7割を占めるウィメンズではグラマラスな世界観やアイデンティティーが確立されている一方で、これまでメンズは明確にイメージを表現しきれていなかったという実情がある。そこでパートナーに選ばれたのが、ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)でキャリアを積み、独立後はファッションキュレーターとして活躍している小木“Poggy”基史だ。もともとサンドラ・チョイ(Sandra Choi)=クリエイティブ・ディレクターと長年の知り合いである彼は、「ジミー チュウ」の“スタイルキュレーター“としてサンドラとタッグを組み、メンズの再構築に取り組む。2人に協業の背景や共有するビジョンから今後の方向性までを聞いた。

対話を通して生む新たなメンズ・コレクション

WWD:まず、メンズの刷新を考えたきっかけは?
サンドラ・チョイ「ジミー チュウ」クリエイティブ・ディレクター(以下、サンドラ):以前からメンズ・コレクションは存在していましたが、正直に言うと、しばらく十分な時間とエネルギーを投資できていませんでした。でも2年ほど前から、「あらためてメンズをどう位置付けるか」を本格的に考え始めたんです。それが始まりでした。

WWD:Poggyさんとの出会いは?そして起用の理由は?
サンドラ:Poggyと知り合ったのは、彼がまだUAのバイヤーだった2011年。それから交流があり、21年には一緒にエリック・ヘイズ(Eric Haze)とのプロジェクトにも取り組みました。親交を深める中で感じたのは、ファッションで“遊ぶ“ことができる人だということ。そして、メンズには独自のルールや歴史、構造のコードがありますが、私のバックグラウンドはウィメンズですからメンズのことを完璧に分かっているとは言えません。それを本当に理解しながら、現代的な視点を持ち込んでくれる人を考えた時、Poggyしかいないと思いました。

WWD:“スタイルキュレーター“は聞きなれない肩書きですが、具体的にはどのような役割を担っているのでしょうか?
小木“Poggy”基史「ジミー チュウ」スタイルキュレーター(以下、Poggy):僕は普段から“ファッションキュレーター“と名乗っていますが、実際にやっているのはファッション・ディレクターのような仕事。肩書き名で定義されるのは好きではないので本当は肩書きもなくていいと考えていますが、やはり仕事をする中で求められるので、アート界でよく使われる“キュレーター“という言葉を使うようになったという背景があります。「ジミー チュウ」の“スタイルキュレーター“という肩書きでは、サンドラと対話を重ねながら、どういったアイテムを作ったら良いか、どういう男性に履いてもらいたいかを具体化しています。

WWD:サンドラさんが、“スタイルキュレーター“としてのPoggyさんに期待することは?
サンドラ:まず、私は若い頃から日本のカルチャーに強く引かれていました。そして日本にはとても高い水準があるということも知っています。特にメンズでカギになるのは、何が重要かを理解し、どうやって最高のものを作るか。伝統は重要ですが、それをどう前進させるかということを考える必要もあります。その点、英国ブランドである私たちがインスピレーションにおいて大切と考えるのは、英国らしさ。私たちがとても英国的なアイデアを出したとき、Poggyは「なぜ?」「どう表現する?」といった問いを投げかけたり、私たちが見落としがちなことを提示してくれたりします。そこからアイデアが変化することもあり、“鏡”のような存在として彼がいることは大きな助けになっています。
もう一つ期待しているのは、「ジミー チュウ」の男性像を確立することです。「ジミー チュウ」の女性像は誰もが思い浮かべられるけれど、メンズはまだ明確とは言えません。彼はどんな人で、何を持ち、どういったテイストや価値観を備えているのか?その形成に取り組んでいきます。その点、“スタイルキュレーター“という言葉はとても純粋だと考えています。キュレーターとは物事がどう作られるかに執着する人のことであり、Poggyはまさにその通りの人ですから。

WWD:では、日本人のPoggyさんから見た英国らしさとは?
Poggy:日本の女性がパリに行くと高揚するように、僕はロンドンが大好き。ロンドンには音楽やストリートカルチャーがある一方で、サヴィル・ロウやジャーミン・ストリートに行くと、男がアガるようなクラシックなファッションもある。その両方が共存していることが英国らしさだと思います。

“メンズはルールを理解してこそ、打ち破れる”

WWD:「ジミー チュウ」の新たなメンズ・コレクションや男性像を確立する上で大切にしていることは?
サンドラ:メンズは、ウィメンズで確立されたような“グラマー“のイメージだけに制限したくありませんでした。もちろんウィメンズにおいても現代のライフスタイルを反映してスニーカーやブーツなど幅広い製品を展開していますが、特にメンズシューズには“決まり“のようなたくさんのルールがあります。そのルールを理解してこそ、初めて打ち破ることができると思うんです。つまり、それは作りや構造、素材を正確に捉えた上で、私たちのアイデアを取り入れて遊ぶということ。例えば、ピザを作る時には、特定の小麦粉が必要ですよね。それと同じで、メンズシューズを作る時には適した素材と作り方を選ぶことが重要です。そして、デザインする時に私が常に重視しているのは、美しさにどこか尖った要素を加えること。そのコントラストによって、美しさを際立たせることができますから。素材やカットも大切な要素です。「ジミー チュウ」の男性像は、スマートでありながら興味を引く一面を備えている人。ハイ&ローの感覚もカギになっています。

Poggy:「ジミー チュウ」といえば、レッドカーペットのヒールシューズというイメージが強いですよね。その点でいうと、男にとってレッドカーペットに最もふさわしいストレートチップは、定番ゆえに忘れられがちかもしれませんが、重要なアイテム。それだけでなく、グラムロック的なブーツであったり、パンクを感じさせるデザインがあったりと、英国ブランドだからこそできることを大切にしたいと考えています。

WWD:先日公開された2026年春夏メンズのキャンペーンでは、Poggyさん自身も含め3人のカルチャークリエイターを起用し、リアリティーのある男性像を描いているのが新鮮でした。
サンドラ:キャンペーンで表現したのは、一つのことにフォーカスしながらユニークなアプローチで取り組む3人のパーソナルなスタイル。スキルや信念を持ったリアルな人たちの着こなしと「ジミー チュウ」のシューズが結びついています。

Poggy:今回出ていただいたスピーカーアーティストのデヴォン・ターンブル(Devon Turnbull)さんや、盆栽の生産者であり職人の小島鉄平さんは、“生きがい“を持っている人たち。今はスニーカーとスエットで世界を飛び回れる時代ですが、ストレートチップを履いてパーティーに行くといったことも、“生きがい“につながっていくと思うんですよね。

WWD:ブランドとしての今後の展望は?
サンドラ:ビジネスという点でいうと、現在ウィメンズが全体の6〜7割を占めていて、ライセンスのフレグランスも好調です。そんな中でウィメンズは守るべき柱ですが、まだ規模の小さなメンズはより自由に実験できるフィールドだと考えています。ただ、メンズとウィメンズそれぞれの美学は互いに影響し合うもの。メンズで育てていくコミュニティーの感覚をゆくゆくはウィメンズにも取り入れ、最終的には一つのユニバーサルな世界観を築きたい。伝統は守るだけではなく更新するものなので、そのための対話を続けていきます。

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