ファッション

【2026年春夏パリコレリポート番外編】若手注目株の新作は?早着替えする「ジュリ ケーゲル」、ユーモアあふれる「ゾマー」

2026年春夏パリ・ファッション・ウイークのリポートは、ブランドごとの速報や3回の総集編でお届けしましたが、今回は「連載 注目若手デザイナーへの10の質問」で取り上げた4ブランドの新作コレクションをご紹介。それぞれの世界観や強みを生かしながら、ユニークな演出を取り入れたショーを見せてくれました。日本でも取り扱い先が徐々に増える新進ブランドのこれからが楽しみです。

ランウエイで早着替え!?
忙しい現代女性を映し出す「ジュリ ケーゲル」

ベルギー・アントワープ発の「ジュリ ケーゲル(JULIE KEGELS)」は、デビュー2シーズン目にしてパリコレの公式スケジュールのプレゼンテーション枠に入り、4シーズン目になる今季はショー枠に昇格しました。会場となったのは、地下鉄6番線パッシー駅の高架下(6番線は一部の区間、地下ではなく地上を走っています)。“クイック チェンジ“をテーマに、オフィスから夜の社交の場まで1日中アクティブに活動する女性たちの姿をイメージしました。

スタイルの軸は、テーラリングやシャツ、ニットにペンシルスカート、プリーツスカート、ワンピースなど、働く女性のワードローブにありそうなアイテム。ウエストを絞った砂時計シルエットやランジェリーライクなアイテム、サテンやシアーな素材使いでフェミニンに仕上げています。

ただ、デザイナーのジュリが思い描いた現代の女性たちは忙しすぎるのか?洗濯バサミで摘んだ跡がそのまま残ってしまったかのようにシャツやカーディガンの肩が盛り上がっていたり、モデルがランウエイを歩きながら肩のホックを外して昼から夜のスタイルへと“早着替え“したり。そんな遊び心を感じるアイデアは彼女らしく、今季も可愛かったです。

鮮やかな色柄とユーモアあふれる「ゾマー」

インタビューでも「楽しくて喜びにあふれるエネルギーを、すべてのクリエイションに注ぎ込みたい」と話していたデザイナーのダニアル・アイトゥガノフ(Danial Aitouganov)とスタイリストのイムル・アシャ(Imruh Asha)による「ゾマー(ZOMER)」は、今季もカラフルでプレイフル。大胆な色使いやプロポーションを取り入れつつも、リアリティーとのバランスを探求したコレクションを披露しました。

幼さから花嫁の女性らしさまでの成長をイメージした今季の提案は、スポーティーなトラックジャケットやフーディー、レギンスパンツ、ピチTから、スカーフヘムが揺れるドレスや総スパンコールのドレスまで。赤やピンク、パープルといったビビッドカラー、レトロな花柄やマルチカラーストライプ、ハートモチーフを取り入れた迷彩柄を自由にミックスし、ポップなムードを打ち出します。

ショーで最も目を引いた巨大なバックルのベルトやバレッタ形のトップス、たすき掛けした大きなエンゲージリングなどは、あくまでもショーピース。ですが、ホルターネックドレスのストラップがバッグのハンドルになっていたり、ネクタイを蝶結びしてボウタイにしたり、かなりさがった位置にベルトを配した大胆なダブルウエストでローウエストのデザインを表現したりと、ウエアラブルなスタイルにも彼ららしい遊び心が反映されています。

また、会場には巨大なカラーパレットを用意。何人かのモデルはその上に乗り、ランウエイに足跡を残しながら歩いていきます。足元に目を向けると、履いていたのはこれまでも協業しているフィンランドのスポーツブランド「カルフ(KARHU)」と制作したメリージェーンスニーカー。そんなコラボシューズにもちゃんと目が行く演出を取り入れているところが、ニクいです。

振り返ってみると今季は大胆な色柄合わせを生かしたジョイフルなエネルギーにあふれていましたが、「ゾマー」のショーもまさにそれを象徴するブランドの一つでした。そして、毎回デザイナーの“代役“が登場するフィナーレを楽しみにしているのですが、今季はなんと2匹の可愛いワンちゃん。思わず笑みがこぼれました。

バレエのオーディションを再現した「アランポール」

バレエダンサーからデザイナーに転身したアラン・ポール(Alain Paul)による「アランポール(ALAINPAUL)」のテーマは、”オーディション”。お馴染みとなっていたシャトレ座を離れ、今季は学校の体育館を会場に選びました。中に入ると、そこはさながらオーディション会場。客席の前には長机が並び、クリップで留められた資料や鉛筆、水とグラスが置かれています。

アランは今季、ファイナリストまで残った「LVMHプライズ」と特別賞を受賞した「ANDAMプライズ」で審査を経験した今年を振り返るとともに、バレエダンサーとして初めてオーディションに臨んだ8歳の記憶へと立ち戻ったそう。得意とするテーラリングとダンサーたちのウォームアップウエアをミックスしながら、まるで着替えの途中のような不完全な着こなしを提案しました。

例えば、デザインはテーラードジャケットの片側のラペルにシャツのようなパーツをくっ付けたり、タンクトップをランダムに重ねたり、極端にオーバーサイズのショーツをつまんでひだを作ったり、ドレスやシャツを斜め45度に歪ませたようなデザインで仕立てたり。タイツや伸縮性のあるバンドを細長い生地のように使い、等間隔で留めて作ったドレスやスカートもあります。また、モデルはコートの上にタンクトップをストールのようにかけていたり、古い衣装の断片を縫い合わせたコートを抱えてランウエイを歩いたり。パリ・オペラ座のエトワールであるジェルマン・ルーヴェ(Germain Louvet)ら実際のダンサーもモデルとして起用し、オーディションから広がる世界を追求しました。

繊細な色と素材感で詩的な世界を描く「ルオハン」

中国発の「ルオハン(RUOHAN)」は今回、「アンリアレイジ(ANREALAGE)」のショーと時間がバッティングしていたため、ショーを見ることができず。ルック写真で拝見しました。

マレ地区にある国立図書館の中庭で披露されたコレクションは、夏の午後の記憶や光と影の移ろいから着想したそうで、夕暮れ時の空を想起させる色が印象的。ワックス加工を施したキュプラやコットンボイル、コーディングリネンなど光沢や透け感のある上質な生地を生かし、詩的でクワイエットラグジュアリーなクリエイションに引き続き取り組んでいるようですが、写真だけだと分かりづらい部分もあり。来シーズンは、ぜひ生で見られればと思います。

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