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ベルギーが生んだ期待の新星 デビュー2シーズン目にして業界のプロから高評価を得るジュリ・ケーゲル【連載 注目若手デザイナーへの10の質問】

海外ファッション・ウイークを現地取材するWWDJAPANは毎シーズン、今後が楽しみな若手デザイナーに出会う。本連載では毎回、まだベールに包まれた新たな才能1組にフォーカス。10の質問を通して、ブランド設立の背景やクリエイションに対する考えから生い立ち、ファッションに目覚めたきっかけ、現在のライフスタイルといったパーソナルな部分までを掘り下げる。

初回に取り上げるのは、ベルギー人デザイナーのジュリ・ケーゲル(Julie Kegels)。1998年生まれの彼女は、アントワープ王立芸術アカデミーを卒業後、「メリル ロッゲ(MERYLL ROGGE)」やピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)率いる「アライア(ALAIA)」でのアシスタント経験を経て、2024年アントワープを拠点に「ジュリ ケーゲル(JULIE KEGELS)」を立ち上げた。

同年2月、パリ・ファッション・ウイーク期間中にプレゼンテーションを開き、初のコレクション「50/50」を発表。全身が映る大きな三面鏡を使って、前後でデザインが全く異なる遊び心あふれるデザインを見せた。続く9月には、初のランウエイショーを開催。ヨーロッパのブルジョア的エレガンスとカリフォルニアの気楽なムード漂うサーフカルチャーを融合したコレクションを披露した。デビューからまだ2シーズンにして、早くもバイヤーからもメディアからも高い評価を得ている期待の新星は、どんな人物なのだろうか?

1:出身は?どんな幼少期や学生時代を過ごしましたか?

生まれ育ったのは、ベルギーのアントワープです。そこで、幼い頃から芸術とクリエイティビティーへの愛を育んできました。私は好奇心旺盛な子どもで、常に新しいことを探求し、学ぶことに熱心でした。また、両親もよく展覧会に連れて行ってくれましたし、歴史や人々に関する興味深い話をしてくれましたね。そのおかげで、想像力が豊かになったのだと思います。

私はシュタイナー学校に通っていたのですが、成績よりも個人としての成長に重きを置く環境でした。とても協力的で、信じられないほどのインスピレーションを与えてくれた先生たちには、今も感謝しています。ただ、その後、伝統的な高校への移行は大変でした。私は学業に集中するようになり、良い成績を収めるために一生懸命で、“ガリ勉“としか言いようのない存在に変わってしまいました。でも、ずっとファッションのキャリアを夢見ていましたね。

2:ファッションに関心をもった原体験やデザイナーを志したきっかけは?

幼い頃の私は大きな夢を抱いていて、すっかり美しさに魅了されていました。マダム・グレ(Madame Gres)やポール・ポワレ(Paul Poiret)、ココ・シャネル(Coco Chanel)といったアイコニックなデザイナーに関する本を読みふけり、教室で彼らについてのプレゼンテーションもしました。当時9歳だったクラスメートは、私のスピーチにはまったく興味を持ってくれませんでしたけどね!そして、はっきりを覚えている記憶の一つは、ジャン・ポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)のキッズコレクション。とても美しい赤の色合いのプリーツスカートがあって、毎日そのスカートの夢を見るほど夢中になりました。

初めて作った服はベルトがスカートになったものだったんですが、ベルトの下に布を貼り付けただけ。そんなシンプルでちょっとした作品でしたが、ものすごく誇りに思っていました。振り返ってみると、その小さなプロジェクトは私のファッションへの愛が始まった瞬間のように感じます。

3:自分のブランドを立ち上げようと決めた理由は?

特定の瞬間を挙げることはできません。だって、子どもの頃からずっと抱き続けてきた夢でしたから。その当時でさえ、ファッションの世界がいかに難しいかということを周りから念押しされましたが、私にとっては、そんな世界がミステリアスで一層魅力的に感じたんです

4:学生時代から過去に働いたブランドまで、これまでの経験で一番心に残っている教えや今に生かされている学びは?

私が学んだ最も大切な教訓は、常に自分の心に忠実であり続けること。心臓がドキドキするようなことがあれば、それは正しい方向に進んでいるサインだと思います。逆に、何も感じなければ、それは進路を変えるための明確な指標。自分の本能を信じることは、時に気が遠くなるに感じることもありますが、極めて重要です。

5:デザイナーとしての自分の強みや、クリエイションにおいて大切にしていることは?

異なる世界を融合させて、自分ならではのものにすることが大好きです。私の目標は、人々の心に響き、記憶や感情を刺激するようなデザインを生み出すこと。私の作品が、何かとのつながりを呼び起こしたり、誰かの人生に懐かしさや喜びをもたらしたりすることができたら、一番幸せです。

6:活動拠点として、今暮らしている街は?その中でお気に入りのスポットは?

ブランドも、私も、本当にホームだと感じられるアントワープを拠点にしています。私のお気に入りスポットはいくつかありますが、一つはスヘルデ川(別名:エスコー川)沿いの岸壁。そこに広がる荒々しい灰色の空間は、顔に吹き付ける風と相まって、私にエネルギーをもたらしてくれるんです。

もう一つの大切な場所は、フレイダグマルクト(Vrijdagsmarkt)にある私のパートナーが経営するブティックホテル、ア プレイス アントワープ(A Place Antwerp)。ホテル前の広場は今でもオーセンティックで、過度に観光業の影響を受けずにアントワープの素朴な精神を醸し出しています。近くには、街で最高のビールを楽しめる古いカフェ、デ・コルソ(De Corso)もありますよ。

7:ファッション以外で興味のあることや趣味は?

ファッション以外だと、気分転換のためのスポーツや、旅行、人との会話など、アクティブでいるようにしています。これらのアクティビティーは、フレッシュな視点とインスピレーションを与えてくれますし、エネルギーを充電してクリエイティビティーを発揮し続けられるようにしてくれます。

8:理想の休日の過ごし方は?

街の中にある隠れ家的スポットでも、初めての体験でも、好奇心を掻き立てられるものでも、ワクワクするような新しい何かを見つけるのが大好き。でもそれと同時に、ただリラックスして生きていることのシンプルさを楽しむだけという、何もしない時間も大切にしています。

9:自分にとっての1番の宝物は?

宝物は一つではなく、たくさんあります。物を捨てることが苦手なので、ちょっと困ることもあるんですよね.......。でも、もし一つだけを選ばなければいけないなら、私にとって一番の宝物は姉。彼女は、どんなことがあっても私のそばにいてくれる心の支えです。

10:これから叶えたい夢は?

私の夢は、健全で順調に成長する会社を築くこと、そして、過去であれ未来であれ人々に夢を抱かせるようなブランドを確立することです。

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