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特集 令和のプレイングマネジャー 第6回 / 全18回

とことん誠実に 効率よりも納得【サティス製薬 開発部 森下建チームマネジャー】

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PROFILE: 森下建/開発部 チームマネージャー

森下建/開発部 チームマネージャー
PROFILE: 1992年生まれ。幼少期、「困っている人を助けられるヒーローになりたい」という思いを持つ。生命科学が好きだったこともあり、学生時代に「自分が倒すべき敵は病気なのでは」という思いから、薬学部に進学。卒業後、生命科学分野の大学院に進学。修士号を取得後、最もチャレンジングな選択として縁が遠かった外資系メーカーに入社。マーケティング業務に従事する。2018年にサティス製薬に処方開発職技術職として入社。人事に興味を持ち、公募で21年7月に人事部に異動。22年6月末で任期を満了して開発部に戻る PHOTO : TAMEKI OSHIRO

現場と経営層とをつなぐ需要な役割を果たすのが、中間管理職(課長クラス)だ。プレイヤーでありながら、マネジャーとしてチームメンバーを鼓舞し、成果を出す――ファッション&ビューティ企業で活躍する、そんな「令和のプレイングマネジャー」たちに、マネジメントの秘訣を聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年7月14日号からの抜粋です)

SATICINE MEDICAL

化粧品OEMを展開するサティス製薬の森下建さんは、技術者として難易度の高い処方開発や製剤検討に取り組む一方、6人チームのリーダーとしてマネジメントに従事する。さらに、研修生や若手メンバー複数人の評価と育成を担い、教育設計、KPI設定、経営との合意形成、企画のとりまとめ、メンバーの進捗管理にも取り組む。

MY RULES

〇 誠実・真摯であること
〇 成長マインドセット
〇 結果と数字だけを見る

誠実であるのは“ありたい姿”だから

森下さんがマネジメントの軸に据えるのは「誠実であること」。「これはマネジメントのための手段ではなく、自分が人と接する上での“ありたい姿”なんです」。

その姿勢を実践に落とし込むために、2つの指針を持っている。1つは「成長マインドセット」、もう1つは「過程ではなく、結果と数値で見る」ことだ。「どんな相手でも成長したいと願っていると信じて接する。そうでないと、建設的な言葉は出てこない。『このくらいでいい』と言われても、『そっか』で終わってしまえば、変化は起きませんから」。

「プロセスを見すぎない」のも誠実さの一部だという。「主観が入りすぎるとフェアでなくなってしまう。評価や判断は、誰に対しても同じ軸で行いたい。経験のあるメンバーにはできる限り委ね、若手にはフェーズに応じたティーチングやコーチングを意識しています」。

自分も迷ったからこそ寄り添いたい

現在のマネジメントスタイルの背景には、揺らぎの経験がある。理数系の大学、大学院と進学し、そのまま技術職に就いたかと思いきや、キャリアの出発点はマーケティング職だった。当時の自分にとって最も縁遠くチャレンジングな道として選択したが、「生命科学への想い」を捨てきれずに短期間で退職。20代は「自分のキャリアの軸が定まらず、失敗も繰り返し、もがいた時期だった」と振り返る。短い職歴から書類選考に通らない状況が続く中、サティス製薬との出合いは、事情を知る元社員との縁によって生まれた。「自分も悩んだからこそ、その人らしく働いてほしいという思いが強い。人事やマネジメントに興味を持ったのもこの経験がきっかけです」。

この思いは日々の対話にも反映されている。大学時代の塾講師のアルバイトで身につけた「傾聴スキル」は、現在もコミュニケーションの基礎となっている。例えば日常的なコミュニケーションで「なぜ?」と聞くと詰問のように感じられてしまうため、「何か理由はありますか?」など、言い方や伝え方を工夫する。

さらに大切にしているのが「意図を聞く」姿勢だ。効率よりも納得感を重視し、一対一で丁寧に向き合う。「『会社が言っているから』ではなく『僕はこう思う』と伝える方が腹落ちしやすい。そこに誠実さがあれば関係性はよりフラットになっていくと思います」。

マネジメントのやりがいは「チームでなければ到達できない場所」にあるという。「経営と合意したKPIに向かって進んでいく中で、想像を超える技術や製剤がメンバーから生まれる。その瞬間が非常にうれしい。ありがたいなって思います」。

一方で難しさについて問うと、「大変さはあるが難しさと捉えていない」と一言。強いて挙げるとしたら「目標設定」だと言う。「達成したい気持ちが強すぎて、つい目標を低く設定してしまうことがある。でもそれだと退屈になってしまうし、高すぎるとやる気が出ない。経営の意図とメンバーの状況を踏まえ、挑戦と実現可能性の“絶妙なライン”を探るのが難しいですね」。

全体を俯瞰する冷静さと一人一人と丁寧に向き合う誠実さ。再現性を重視するマネジメントにおいて、森下さんは“人”に寄り添いながら信頼を築くアプローチを選ぶ。「その人がその人らしく輝いて働ける状態をつくること。それができたらハッピーじゃないですか。そうできるように僕自身が相対し、手助けがしたい。それは結果的に成果にもつながり、皆のハッピーにもなる。そういうマネジメントをしていきたいです」。

SCHEDULE for ONE DAY
06:00 起床、準備、子どもの送迎
08:30 出勤3S(整理・整頓・清掃)活動※社内用語
09:00 経営会議のアジェンダ設定&資料準備
09:30 処方設計、大学教授との研究進捗打ち合わせ
11:00 顧客との打ち合わせの最終確認
12:00 ランチ
13:00 メンバーと1on1面談
13:30 メンバーと製品体験のすり合わせ
14:00 チーム進捗管理
15:00 人事部との部署研修打ち合わせ
16:00 顧客と商談
17:00 部長との面談
17:30 開発部内会議資料の作成
18:30 退社
20:00 帰宅、子どもと一緒に習い事と入浴
21:00 子どもの寝かしつけ(1歳と3歳。絵本を読む)
21:10 ご飯、家事、自分の時間
22:00 就寝

COMMENTS

推薦者コメント
六本木華月/執行役員営業部長兼人事部長

経営が求めていることを理解した上で、チームの活動に実装できる点で大変優れていると思います。また、キャリアにおける経験の幅が広く、技術面とリーダーシップの両面において能力があります。興味分野が幅広く、多面で成長意欲がある点からも、今後のさらなる活躍を期待しています。

チームメンバーコメント
佐藤玲央奈/開発部

処方開発や発表資料の作成など、行き詰まっている時に「今回の狙いってなんだっけ?」など、本質を一緒に振り返りながらアドバイスをしてくださいます。特に、理念をかみ砕いて「当社らしさ」を意識したアドバイスや「顧客」や「消費者」目線での話はとても勉強になります。


EDITOR’S VIEW

編集部コメント
沼璃子/編集部記者

感情に流されずに物事を判断する論理的な思考をベースに持ちながら、根底には「誠実でありたい」という人生を通して貫く他者への優しさが感じられる。多くを学びながら、「自分に合った形」として手段を選んでいくその姿勢は自分への誠実さでもある。そうした一貫性こそが周囲に信頼や安心感をもたらしていると感じた。

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