ファッション

「ルメール」のバッグも手掛けるデザイナーによる「ボナストレ」 アフォーダブル・ラグジュアリーなバッグ作りへのこだわり

PROFILE: フェルナンド・ボナストレ・デ・セリス/「ボナストレ」創業者兼クリエイティブ・ディレクター

フェルナンド・ボナストレ・デ・セリス/「ボナストレ」創業者兼クリエイティブ・ディレクター
PROFILE: スペイン北部のカンタブリア出身。大学卒業後、フランス・パリに移住し、「クリスチャン ラクロワ」でキャリアをスタート。ウィメンズのプレタポルテやオートクチュールのデザイナーとして経験を積んだ後、「クロード モンタナ」を経て独立。2011年に自身のバッグブランド「ボナストレ」を立ち上げ、13年にマレ地区に旗艦店をオープンした。好きなブランドは「ヨウジヤマモト」と「リック・オウエンス」

ラグジュアリーブランドを中心にレザーグッズの価格が高騰し、手が届きにくいものになっている今、デザイン性とクオリティー、そして6万〜10万円台というリアリティーのある価格帯を併せ持つレザーバッグへのニーズは高まっている。2011年にパリで設立された「ボナストレ(BONASTRE)」は、そんなニーズに応えるブランドの一つだ。創業者兼クリエイティブ・ディレクターのフェルナンド・ボナストレ・デ・セリス(Fernando Bonastre de Celis)は、ファッションデザイナーとしてキャリアを積んだ後、バッグデザイナーに転身。「ボナストレ」を手掛ける傍ら、「ルメール(LEMAIRE)」や「マリーン セル(MARINE SERRE)」といったデザイナーズブランドのバッグ制作にも携わっている。パリのマレ地区に構える旗艦店で、彼にデザインやモノづくりへのこだわりを聞いた。

バッグは服よりも持ち主にとって親密な存在

WWD:バッグデザイナーになろうと思ったきっかけは?

フェルナンド・ボナストレ・デ・セリス「ボナストレ」創業者兼クリエイティブ・ディレクター(以下、ボナストレ):もともとプレタポルテ(既製服)のデザイナーとして働いていたが、次第にとてもインダストリアル(工業的)だと感じるようになった。けれど、私が求めていたのは、もっと“手”を使ったものづくり。その点、世代を超えて受け継がれる技術を有する職人によって生み出されるレザーバッグには“人間味”が感じられ、バッグデザイナーに転身することを決めた。

WWD:ファッションとバッグではデザインのアプローチなども異なるのでは?

ボナストレ:レザーの知識や扱い方は、「クロード モンタナ(CLAUDE MONTANA)」で働いていたときに培った。服は常に特定の女性の体を基に考える必要があるが、バッグはオブジェを作るようにより自由な発想で取り組むことができるし、建築の設計にも似ていると思う。そして、バッグは服よりも持ち主にとってインティメイト(親密)な存在。それは、持ち主に必要なパーソナルなアイテムを詰め込んだもの、すなわち、その人の“生活”を入れて持ち運ぶようなものだから。プレタポルテでは感じられない感覚だと思う。

WWD:「ボナストレ」だけでなく、「ルメール」や「マリーン セル」など他ブランドのバッグ制作にも継続的に関わっている。「ルメール」ではヒットバッグの“クロワッサン(CROISSANT)”も生み出したが、そもそも取り組むことになったきっかけは?

ボナストレ:約7年前、「ルメール」がバッグビジネスを本格化させようとしているときに、もともと親交のあったサラ=リン(・トラン、Sarah-Linh Tran)から声をかけてもらった。それまで「ルメール」で提案されていたバッグはとても硬い印象だったが、必要だと感じたのはクリストフ(・ルメール、Christoph Lemaire)とサラ・リンが提案するポエティックで柔らかな服と同じように軽やかで自然と体に寄り添うようなバッグ。そこでコンセプトから一緒に構想した。“クロワッサン”はアイコニックなアイテムになったが、もともと“イットバッグ”を生み出そうとしたわけではなく、ブランドの世界観に溶け込むものを作った結果と言える。

WWD:デザインを手掛ける際、自身のブランドと他のブランドで違いはあるか?

ボナストレ:「ボナストレ」では建築から着想を得ることが多く、クリーンなラインを生かしながら、平面から彫刻的なボリュームを作ることを意識している。一方、他のブランドと仕事をする時に大切なのは、そのブランドのDNAやデザインコードにフィットすること。例えば、「ルメール」と「マリーン セル」はコンセプトもスタイルも顧客も全く異なり、それぞれに合ったバッグのアプローチや戦略がカギになる。

WWD:他のブランドと取り組む基準は?

ボナストレ:クリエイティブ・ディレクターがナイスな人柄であること(笑)。そして、自分がDNAに共感できないブランドとは仕事をしないと決めている。

“典型的なレッテルにとらわれず、
それぞれの個性を引き立てるものを生み出したい”

WWD:「ボナストレ」のバッグをデザインする上で、特に大切にしていることは?

ボナストレ:「ボナストレ」では、男性用や女性用といったようにジェンダーを分けてデザインしていない。それはジェンダーや年齢、スタイル、シーズンなど典型的なレッテルや枠にとらわれることなく、それぞれの個性を引き立てるものを生み出したいから。そこで重要なのは、バッグとしての機能性に優れながらも、表面的なトレンドに左右されることのないシンプルなスタイルであること。ミニマルに仕上げるには本質を突き詰めなければいけない。それは、デザインを加えることよりもずっと難しい。

WWD:使用している素材や生産背景についても教えてほしい。

ボナストレ:ヨーロッパではイタリアのフィレンツェとスペイン南部のウブリケが高級レザーバッグの生産地として知られているが、「ボナストレ」もウブリケにあるラグジュアリーブランドも手掛ける工房で全てのバッグを生産している。使用するレザーはスペインのものが大半。ただ、イタリアやフランスのタンナリーから調達したものもある。

WWD:レザーバッグの価格が高騰している現状について、どのように考えているか?

ボナストレ:バッグビジネスを知る者としては、今の状況は馬鹿げていると思う。ビジネスを続けていく上でマージンが必要なことは分かるが、過剰な値上げは消費者に対して失礼だ。

最初の顧客はトゥモローランド
最大市場は設立以来ずっと日本

WWD:ビジネスの現状と売れ筋のアイテムは?

ボナストレ:卸先は現在、世界15カ国に約30アカウント。実は最初のクライアントは日本のトゥモローランド(TOMORROWLAND)で、それ以来ずっと日本が最大の市場だ。日本ではトゥモローランドやヒビヤ セントラル マーケット(HIBIYA CENTRAL MARKET)、ジャーナルスタンダード レサージュ(JOURNAL STANDARD L’ESSAGE)、ビュートリアム(BEAUTRIUM)などで扱われている。現在のベストセラーは2つあり、昨冬にローンチした“ライダー(RIDER)”と昔ながらのキャンディーの包み紙からヒントを得た“ボンボン(BON-BON)”。2月には、“ボンボン”に特化したポップアップストアもデ・プレ(DES PRES)丸の内店で開催した。

WWD:そんな日本には、どのような印象を持っている?

ボナストレ:日本の文化も食べ物も人々も大好きで、毎年訪れている。日本のお客さまは、クオリティーやクラフツマンシップを重視し、プロダクトの背景にあるストーリーへの関心も高い。もちろん知名度やロゴで有名ブランドのバッグを選ぶ人もいるが、日本ではデザインがクールというだけでなくプロダクトとしての完成度や独創性を大切にする人が多いと感じている。

WWD:今後の展望は?

ボナストレ:チームの成長とともに、「ボナストレ」のビジネスをさらに発展させていく。特にデジタルに力を入れ、お客さまと直接やりとりすることができる公式ECサイトをさらに強化していきたい。また卸しに関しては、これまで通り私たちのバッグの背景にあるストーリーをしっかりと理解してくれる小売店とだけ取り組んでいく。

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