
「WWDJAPAN」のソーシャルエディターは毎日、X(旧Twitter)やFacebook、Instagram、TikTok、そしてThreadsをパトロールして、バズった投稿や炎上、注目のトレンドをキャッチしている。この連載では、ソーシャルエディターが気になるSNSトレンドを投げかけ、業界をパトロールする記者とディスカッション。業界を動かす“かもしれない”SNSトレンドの影響力や、投稿がバズったり炎上してしまったりに至った背景を探る。今、SNSでは何が起こっているのか?そして、どう向き合うべきなのか?日々のコミュニケーションのヒントにしたい。93回目は、またまた韓国コスメに新たな潮流!?という話。
ソーシャルエディター浅野:韓国コスメの魅力といえば、ユニークなパッケージやブランディング。最近はジェンダーレスでシンプルなパッケージがメインストリームですが、新たなトレンドがやってきそうです。それは、コスメのファッションアイテム化です。
フレグランスなどが中心の「タンバリンズ(TAMBURINS)」は、たまご型のフレグランスをアクセサリーのように持ち歩けるチャームやケースなどを販売し、入手困難になるほど人気に。続くようにY2Kやストリートのムードを感じさせる「ブレイ(BRAYE)」は、シルバーのスライド式ケースのリップバームと、ネックレスやストラップにカスタマイズできるチェーンをセット販売しました。ファッションアイテムに振り切ったデザインです。「キューテン(Qoo10)」でも日本向け公式販売が始まったことで人気がじわじわと高まっています。SNS映えも抜群な“ファッションコスメ”は、これからどんどん増えてくると睨んでいます。
記者村上:「ブレイ」、最近よく見かけるようになりましたね。先日韓国に出張した「WWDJAPAN」記者も、購入して帰国しています。もうすぐ記事をアップするみたいです(笑)。ドッグタグ(って今、言うのかしらw?)だと思ったら、「ブレイ」のリップにもチークにも使えるマルチバームだった!という感じ。ネックレスとして使ったり、スマホと組み合わせたり、ベルトループから垂らしている人を時々見るようになりました。「ディーゼル(DIESEL)」とか好きそうな人が身につけそうだな、って思っています。

ファッションアイテムとして使えるコスメ、で思い出すのは、やっぱりファッションブランドとコラボして生まれたビューティ製品でしょうか?個人的に「いいだろ〜」って自慢できるのは、「ビューティフルピープル(BEAUTIFUL PEOPLE)」と「ネイルズインク(NAILS INC)」のコラボネイル&レザーポーチ。時々使うポーチにはAirPodsとか入れればいいのに、律儀にコラボネイルを持ち歩いています。
「ヴァレンティノ ビューティ(VALENTINO BEAUTY)」も、持ち歩けるクッションファンデやリップを出していますよね。「ヴァレンティノ(VALENTINO)」の洋服は高くてなかなか着られないけれど、コンパクトに格納したリップを肩にかけて「ヴァレンティノ」のショー会場に行ったら、洋服のPRにお褒めいただいたことがあります。
「WWDBEAUTY」の2024年上半期ベストコスメに輝いた“ミス ディオール ブルーミング ブーケ ミニ ミス”だって、究極言えば持ち歩きたい可愛らしさが大ヒットの理由では?と思うんです。「エルメス(HERMES)」や「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「プラダ(PRADA)」など、ビューティに参画するファッションブランドには、こうしたアイテムを期待してしまいますね。
単一成分コスメ同様
韓国勢は振り切っている
浅野:「ブレイ」などの韓国コスメの面白いところは、コスメのファッションアイテム化。コスメは使用感や実用性が重視されるのに、使い勝手はほぼ度外視で商品化しており、「ぶっちゃけ使いにくい!でも可愛いからよし!」といった感じです(笑)。低価格帯のコスメはトレンドの影響を受けやすく似たアイテムで溢れがちですが、「ファッションアイテムとして身につけたい」という新しい選択肢は低価格帯コスメ市場では新鮮です。可愛い系やモード系など、もっと色々なアイテムが出てくるのを期待しています!
村上:「ブレイ」のバームは実物を見たけれど、硬質なメタリックは実はプラスチック製。しかも比較的安っぽいプラスチックで、私的には「な〜んだ」って感じでした。でも、「これでいい」という若い世代は多いだろうな、と思います。使い勝手度外視って、一点突破戦略が上手な韓国ブランドらしいですね(笑)。単一成分コスメよろしく、ファッション性だけを追求したってカンジなのでしょうか?

ファッションもビューティも扱う「WWDJAPAN」で働く身として、ファッションとビューティって、案外近いようで遠い存在だな、と思っています。でも、例えば富士フイルムの男性向けスキンケアシリーズ「アスタリフト メン(ASTALIFT MEN)」はかつて、バッグや革小物ブランドの「ダニエル&ボブ(DANIEL&BOB)」とコラボーレーション。オリジナルの巾着ポーチとアスタリフトメン全4アイテムをセットにした限定のキットを販売した伊勢丹新宿本店メンズ館に話を聞いたら、「男性には、ビューティはまだ敷居が高い方もいらっしゃる。馴染みのあるファッションとのコラボレーションで、手に取りやすくなったら」とおっしゃっていました。ファッション性の高いビューティって、大きな可能性を秘めていると思うんです。
次回は、ファッションのトピックをお送りします。
村上 要 「WWDJAPAN」編集長 / 浅野 ひかる ソーシャルデスク