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ジャンポール・ゴルチエが語る、ミュージカルとクチュールへの愛 「ファッション・フリーク・ショー」日本公演に先駆け特別インタビュー

 ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)が手掛けるミュージカル、「ファッション・フリーク・ショー(FASHION FREAK SHOW)」が日本に上陸する。ゴルチエの半生を描く同作は、2018年にパリで初演し、約25万人を動員。22年7月のロンドン公演を皮切りに、世界15カ国で上演する予定だ。登場する衣裳は、貴重なアーカイブから同作のための新作まで200点以上。オリジナル楽曲は、マドンナ(Madonna)の「ライク・ア・ヴァージン」やデヴィッド・ボウイ(David Bowie)の「レッツ・ダンス」を生み出した音楽プロデューサーのナイル・ロジャーズ(Nile Rodgers)が担当する。5月に開幕する日本公演を前に、同作が誕生した背景やオートクチュールへの思い、一流デザイナーとしての矜持や今後などについて「WWDJAPAN」が聞いた。

ジャンポール・ゴルチエ

PROFILE:1952年、フランス・パリ郊外生まれ。70年に「ピエール・カルダン(PIERRE CARDIN)」でアシスタントとしてキャリアをスタート。その後「ジャック エステレル(JACQUES ESTEREL)」や「ジャン パトゥ(JEAN PATOU)」(現「パトゥ」)などを経て、76年に自身のブランドを立ち上げた。96年に初のオートクチュール・コレクション「ゴルチエ パリ」を発表。2004-05年秋冬から11年春夏まで「エルメス(HERMES)」のウィメンズのデザインを担当した。15年に自身のブランドのプレタポルテを終了し、20年1月に20年春夏オートクチュール・コレクションのショーをもってランウエイを引退した。以降はゲストデザイナーを迎えて発表している。自身のコレクション以外では、マドンナ(Madonna)のツアー衣装や、映画の衣装などを手掛けている。

WWDJAPAN(以下、WWD):「ファッション・フリーク・ショー」について。このようなミュージカル形式で自身の半生を描こうというアイデアは、どう思いついたのか。

ジャン・ポール・ゴルチエ(以下、ゴルチエ):以前から、ミュージカルやショーを制作してみたいと思っていた。幼いころから映画が大好きだったが、やがてファッションにも興味を抱くようになったので、映画の衣装を作りたいと夢見ていた。そうした中、たまたまファッションショーに関する映画を見て、子ども心に私がやりたいのはこれだと思ったんだ。幕が開くと、大勢の観客が見守る中、美しい服を着たモデルたちが音楽に乗って歩いていく。その華やかさに心奪われ、ファッションと音楽を組み合わせたミュージカルやショーが大好きになった。私のコレクションのショーでも、いつも音楽や演出は大切な要素だった。とはいえ、私は小説家や脚本家ではないので、ストーリーを一から紡ぎ出すのは難しい。でも衣装を作ることはできるし、それなら自分の半生を描くのはどうだろうと考えたんだ。われながら、なかなか面白い人生を送ってきているからね。

WWD:ミュージカル好きであることは、自身のクリエイティビティーにも影響した?

ゴルチエ:もちろんだ。私は華やかで、強くて、ユーモアがあるものが好きだが、そうした傾向はミュージカルやキャバレーなどと通底する。ファッションショーは一般にクラシカルでエレガントな雰囲気であることが多いが、私は自分のショーではシンデレラのような(可愛らしくおとなしい)少女ではなく、パワフルでセクシーな女性像を描いてきた。

WWD:2020年1月に発表したクチュール・コレクションが最後となったが、カムバックする予定はあるか。また、そうしたいと思うことはあるか。

ゴルチエ:全くないよ(笑)。それに正直に言えば、(復帰するのは)難しいと思う。優れたデザイナーは、常に世界や社会の“今”と密接に繋がっていなければならない。仮に私が復帰するのであれば、自分でも納得のいく作品を発表する必要があるが、かつて張りめぐらせていた敏感なアンテナを休めるようになってしばらく経つからね。ファッションや何かを作ること自体は好きだし、今でも関心を持ったさまざまなことに取り組んでいるが、時代の空気や瞬間を鮮やかに切り取って提示するような、第一線で活躍するファッションデザイナーに戻ろうとは思わない。コレクションを作り上げるには胆力がいるし、私の主な表現方法はファッションから違うものへと移ったと感じている。

WWD:クチュールのゲストデザイナーとして、「サカイ(SACAI)」の阿部千登勢デザイナー、「ディーゼル(DIESEL)」および「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」のクリエイティブ・ディレクターを務めるグレン・マーティンス(Glenn Martens)、「バルマン(BALMAIN)」のオリヴィエ・ルスタン(Olivier Rousteing)=クリエイティブ・ディレクター、そしてハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)を招へいしている。ゲストデザイナーを選ぶに当たり、何か条件はあるのか。直感で決めることもある?

ゴルチエ:直感で決めることは大いにあるし、これまで何らかの形でつながりを感じたデザイナーを招いている。一人目のゲストだった千登勢はクリエイションの面で共感する部分が多く、同じスピリットを感じるが、それに加えて私とは全く異なる何かをもたらしてくれることを期待して招へいした。グレンやオリヴィエ、ハイダーもそうだ。それぞれタイプは異なるが、「ジャンポール・ゴルチエ」のコードを大切にしつつ、その人ならではの強みや特別な何かをプラスしてくれるデザイナーを選んでいる。

WWD:プレタポルテを終了してからも、最後までクチュール・コレクションを発表していたのは愛着があるから?

ゴルチエ:その通りだ。私は(デザイン系の)学校を卒業したわけではなく、アシスタントとして働いたクチュールメゾンの現場で全てを学んだ。そこが私の学校だったんだ。クチュールでキャリアをスタートしたので、最後もクチュールで締めくくるのがいいと思ったのかもしれない。今は大量生産の時代で、ある程度の品質の製品が安価で手に入るという意味でそれは必ずしも悪いことではないが、美しい手仕事には格別のものがあると思う。

WWD:最近はどのような日々を過ごしている?何か新たなプロジェクトの予定などはあるか。

ゴルチエ:いろいろなことをやっているが、今は「ファッション・フリーク・ショー」だね(笑)。パリで開幕した当初、これほどの成功を収めるとは思っていなかったが、日本公演も実現してとてもうれしく思っている。ほかにも新たなプロジェクトが動いているが、それはまだ秘密(笑)。いずれ発表するので、楽しみにしていてほしい。

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