ファッション

「ゴルチエ」はドラマチックなイブニングウエアの可能性を探求 ファッションの最高峰、22年春夏オートクチュールVol.4

 比較的シンプルなデザインやデイウエアへのフォーカスが目立つ今シーズンの中で、ドラマチックなイブニングウエアを見せたのは、「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」だ。今回は「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」と「ディーゼル(DIESEL)」のクリエイティブ・ディレクターを務めるグレン・マーティンス(Glenn Martens)をゲストデザイナーに迎えたコレクションを、パリ3区にある本社のホールで発表した。

 先シーズンの阿部千登勢「サカイ(SACAI)」デザイナーに続く2人目となるこのプロジェクトでは、創業者のジャンポール・ゴルチエ自身はクリエイションには関わらず、ゲストデザイナーがブランドのアーカイブやDNAのどこに着目し再解釈するかが鍵となる。その背景には「自分が関わり始めると、ついついコントロールしたくなってしまうから」という思いがあり、今回もゴルチエは客席からショーを見守った。マーティンスにとって「ジャンポール・ゴルチエ」は、08年にアントワープ王立芸術アカデミーを卒業後、ジュニアデザイナーとしてキャリアをスタートさせた古巣。そんなブランドを内側から理解している彼が、どのように初のクチュールを手掛けるかに期待が高まる。

 「私にとってのクチュールとは、純粋な美とエレガンス。ストリートで見かけることのないようなデザインを意味する」と話すマーティンスが、今回の軸にしたのはロングラインのイブニングウエア。“エッジの効いたセクシー”というのは2人の共通点とも言えるが、彼はヒップ周りを誇張したシルエットやコルセット、マリンボーダーなどゴルチエの象徴的なデザイン要素と、自由なシルエットやシワを生み出すワイヤー入りの素材、中世など歴史的なインスピレーション、ひねりを効かせたシルエット、ダークでアングラなムードといった自身の持ち味を掛け合わせた。

 序盤に登場したルックは、シャープなラインでヒップ周りだけが飛び出したシルエットが際立つ。そこに加えたウエストから股にかけてV字を描くラインやカッティングは、マーティンスを代表するデザインの一つだ。ボーダーやケーブルのニットスタイルは、珊瑚モチーフの立体装飾をふんだんにあしらったデザインで大胆にアレンジしている。一方、長いトレーンを引くドレスやアンサンブルは、コルセットの編み上げディテールを全体に取り入れたり、リボン状に切ったアーカイブの生地を縫い合わせてその上からチュールを重ねたりした複雑なつくり。ベロアのタイトなロングドレスのウエストやデコルテにはワイヤーを仕込んで、アクセントを加えている。シルクタフタのドレスは大きくうねり、モデルがランウエイを歩くと観客の足にあたるほどのボリュームでインパクト満点だ。

 この2シーズン、「ジャンポール・ゴルチエ」はクチュールの世界に新たな刺激をもたらしてくれている。来シーズンのゲストデザイナーはまだ発表されていないが、その人選を楽しみに待ちたい。


 2022年春夏オートクチュール・ファッション・ウイークが、1月24日から27日まで開催された。オートクチュールとは「高級仕立て服」のこと。職人たちが何百時間もかけて作り上げる贅を極めた作品が披露されるだけでなく、クリエイティビティーの実験ラボという側面もある。複数回に分けて、キーブランドの現地リポートをお届けする。

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