ビューティ

「M・A・C」のデコリップが再バズ 流行語×推し活で売り上げ伸長

自分だけのオリジナルリップケースが制作できる「M・A・C」のLINEミニアプリ限定サービス“デコリップ”が再び注目を集めている。12月1日にXユーザーのおいどんさんが、高市早苗首相の発言「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」をデザインしたリップケースを投稿したところ話題になり、翌2日の売り上げが前年同日の約9倍に跳ね上がった。単なるSNSトレンドだけではなく、背景には流行語大賞の発表という社会的ムードと、推し活や自己表現をめぐる消費トレンドが重なっていた。

利用者の中心は40代 
一転、“バズ当日”は30〜20代が主役に

デコリップは、24年11月にスタートしたサービス。文字によるメッセージ、あるいはハートや星、アルファベットなど200種類以上のモチーフを自由に組み合わせて、人気のリップスティック“ラスターガラス リップスティック”などのケースを無料でデザインできる。

直近半年間の利用者層について、高野里絵 ELCジャパン オンラインマネージャーは「最も多くご利用いただいているのは40代のお客さま。次いで20代、30代、50代がほぼ同程度。男性の利用率は5%前後です」と話す。一方、今回バズが起きた直後の受注データを見ると、明確な変化が表れた。

バズが起こった翌12月2日の受注では30代が最多、次いで20代となり、通常最も多い40代の利用は相対的に少なかった。Xの投稿を見ていくと、おいどんさんと同じく流行語をデザインしたり、推しの名前をあしらったリップケースを画像付きで投稿するケースが目立ち、若年層を中心に拡散されていった様子がうかがえる。

高野マネージャーは「SNS上でのユーザーの発信に加え、新語・流行語大賞発表のタイミング(12月1日)も影響したと捉えています。若年層の間で盛り上がる“推し活”や“自分らしさの表現”といったテーマが話題化する中で、『M・A・C』のデコリップが提供する高いカスタマイズ性や視覚的な楽しさが、その文脈にぴったり合致したことが拡散の大きな要因になったと考えています」と分析した。

“最初から作る”ネオン系×盛りデザインが人気

デザイン傾向も特徴的だ。人気のモチーフはネオン系で、10月に追加したハロウィーンモチーフもネオンカラーが支持を集めた。背景には、平成リバイバルの流れも影響していると見られる。

ワンタッチで完成する既存のデザインも用意しているが、「自身で最初からデザインする方が圧倒的に多い。すでにあるデザインを使う方も、プラスアルファで手を加えるケースが目立ちました」と高野マネージャー。シンプルなデザインよりも、複数のモチーフを散りばめた“盛る”デザインが支持されているという。推しの名前や数字(年齢や西暦など)を入れるケースも多く、ステッカーを貼るようにモチーフを組み合わせ、独自の世界観を表現するユーザーが目立った。

コスメは「自己表現のツール」に

「M・A・C」のデコリップに限らず、通常のリップをデコレーションするユーザーも増えている印象だ。シールを貼ったり、キーホルダーを付けたりと、コスメの楽しみ方は多様化している。

広がる“デコリップ文化”を高野マネージャーは「その年、その時のムードやカルチャーと絡めながら、自分だけの表現として楽しんでいただいていることをうれしく思います。“使うだけ”だったコスメが、トレンドを取り入れた遊びであり、コミュニティーで共有されるアイデンティティーであり、推しへの愛情表現にもなる。これは『M・A・C』がずっと大切にしてきた“メイクアップを通じた自己表現”そのものです」と胸を張る。

「M・A・C」のデコリップの今後については、モチーフや既存デザインの追加に加え、デザインの保存機能やデコリップ対象製品の拡大も検討しているという。

一過性のバズにとどまらず、カルチャーと共に進化するカスタマイズ体験。「M・A・C」のデコリップは、Z世代が求める“自分の好きを表現するコスメ”の代表例と言えそうだ。

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