ファッション
特集 繊維商社2026 第15回 / 全15回

【スタイレム 瀧隆太社長】商社×メーカー、ハイブリッドの深化

服地卸のトップ企業として長年にわたり君臨してきたのが、スタイレム瀧定大阪だ。グローバル拠点を拡大する一方、この数年は国内のサプライチェーンへの投資も積極的に行ってきた。昨年10月には東京を加えた大阪・東京の2本社制とし、今年8月には社名を「スタイレム」に変更する。グローバル市場で存在感を高め、進化する老舗の今後を聞いた。

国内サプライチェーンにも
積極投資

WWD: 足元の事業環境は?

瀧隆太社長(以下、瀧):仕入れ先からのコストアップの話は、この数カ月間かなり多い。ナフサ不足から来る原燃料価格の高騰が一番大きいものの、為替や物流など広範囲かつ複合的な要因が重なっているという印象だ。

WWD:コストアップ分は売価に反映していくのか。

瀧:そのまま価格転嫁するつもりはない。色々と工夫をし、ある程度は当社で吸収できるというのが問屋業でもあるわれわれの考え方だ。服地の場合は企画や開発の仕方の工夫で対応できる部分も多い。インフレが進む中で、アパレル・小売り各社もプロパー消化率を高める動きが出ている。重要なのは、価格転嫁する・しないではなく、生活者が「いいな」と思い手に取ってくれる商品を作ることだ。

WWD:この数年、国内への投資が目立ってきた。背景は?

瀧:それぞれ個別の事情があるため一概に語るのは難しいが、大きな方向性としては「価値あるものをいかにして届けるか」。スタイレムならでは、ひいては日本ならではのモノづくりを進めるためのサ
プライチェーンを構築していくことが、考え方のベースにある。コロナ禍以降、テキスタイル生産のリードタイムが長期化しているという課題があった。原因を探ると、糸、生地、染色加工の各段階・各産地でこれまで当たり前にできたことができなくなっていたり、重要な工程を担う企業が廃業していたりと、サプライチェーンが途切れてしまっていた。服地ビジネスに関して当社は、自ら企画し、発注したテキスタイルを在庫して販売しており、商社というよりファブレスメーカーに近い。海外拠点や海外調達を増やしてきたが、いまなお過半を日本で調達している当社にとって、日本の産地は運命共同体だ。今後についても慎重に検討しつつも、必要があればより踏み込んだ出資や M&Aという選択肢も排除はしていない。グローバルで競争力のある日本の技術や要素がある企業、あるいは産地とは積極的に取り組んでいきたい。

WWD:総合職の女性採用は増える一方で、現状では女性管理職の比率は低い。今後をどう考える?

瀧:当社の総合職の女性採用比率は例年2割ほどだが、管理職に関してクオータ(人数割り当て)制のような形で無理に実績を作るやり方は考えていない。育成し、引き上げられるかどうかが本質だ。特に女性は、出産などのライフステージの変化が離脱の原因になりやすい。だからこそ働き方改革が重要だ。

WWD:昨年から東京にも管理部門を置き、2本社体制に変えたのも、それが理由?

瀧:東京本社の狙いは営業活動における新たな効果を生み出すことだ。ガーメント事業は以前から東京が中心になっており、今回テキスタイル事業を東京にシフトさせたことで、テキスタイル事業とガーメント事業が物理的に近くなり、糸から製品まで一貫した開発・コミュニケーションがしやすくなった。ただ、これまでは大阪から毎週のように東京へ出張するスタイルが当たり前で、出張を前提とした働き方が「上に行くための条件」だという考え方が染みついてしまっていたことは、男女を問わず、特に女性にとっては体力的にもハードルになりやすかったのは事実だ。その一方で、関西出身者や夫婦で大阪在住という社員にとっては、東京シフトが必ずしもメリットとは限らない。一律に「東京へ」というわけではなく、今も出張ベースで大阪を拠点に働いている社員も多い。出張者の宿泊所を整備するなど、柔軟な対応を進めている。

WWD:女性のキャリア継続について、スタイレムらしい工夫は?

瀧:常識に縛られず、本質的に有効であれば取り入れる、というのが当社の強みだ。一見突飛に見えても、合理性があれば柔軟に取り入れていく。

WWD:環境が変わる中で、求める人材像の変化は?

瀧:当社のリスクを取るビジネスモデルは、当時としては革新的で、それを実行し、結果を出せば評価されてきたと思う。ただ、一時代を築いたビジネスモデルも時代とともに必ず変化していかなければならない。当社もリスクビジネスの強みを生かしながらも、変化し、新たなことにチャレンジしていく。このような時代だからこそ、物事の本質を見極め、構築する力、課題を発見する力、思考の柔軟性や幅広い視野 —こういったことが、より重要になってきている。求めているのは、もともとの自身の強みを今の時代の変化にどうフィットさせるか、という発想ができる人材だ。

COMPANY DATA
スタイレム瀧定大阪
沿革:1864年に初代・瀧定助が創業。2001年8月、瀧定(現・瀧定名古屋)から会社分割により瀧定大阪として設立。15年にグループ経営体制へ移行し100% 子会社スタイレムを設立。21年2月にスタイレムを吸収合併し、スタイレム瀧定大阪に変更。26年8月スタイレムに社名変更

本社所在地 大阪本社:大阪府大阪市浪速区湊町1-2-3 マルイト難波ビル11階/
東京本社:東京都渋谷区神宮前2-34-17 住友不動産原宿ビル18階
従業員数:535人(2026年2月時点)
業績:売上高914億円、営業利益51億円(2026年1月期グループ連結)
事業比率:原料:2.1%、生地:47.8 %、衣料製品:43.8 %、ライフスタイル製品:4.6 %、その他:1.4%
拠点:〈国内〉東京、〈海外〉中国(上海、深圳、香港、北京、厦門、成都、杭州)・韓国・ベトナム・インドネシア(バンドン、ジャカルタ)・タイ・インド・イタリア(プラート、ミラノ)・フランス・アメリカ

問い合わせ先
スタイレム瀧定大阪