ビューティ
連載 ファッション業界人も知るべき今週のビューティ展望 第19回

女性支援活動の背景にあるESG投資のムーブメント

有料会員限定記事

 ファッションとビューティ、オフラインとオンラインを結びつける「WWDジャパン」がスタートした「ビューティ・インサイト」は、「WWD JAPAN.com」のビューティニュースを起点に識者が業界の展望を語る。識者は、美容媒体の編集長やコンサルタント、エコノミスト、そしてサロンスタイリスト。ビューティ業界の半歩先は、ファッション業界の“道しるべ”にもなるだろう。今週はエコノミストによる「女性支援とEGS投資」と「オピニオンリーダー」の話。(この記事はWWDジャパン2021年3月15日号からの抜粋です)

今週の識者
崔真淑/エコノミスト

 ポーラがシワ改善ブランド「リンクルショット」の3月の売り上げの一部を女性支援団体に寄付するという。国際女性デーに合わせた施策なのはもちろん、現在株式市場で浸透しているESG(Environment=環境問題、Social=社会問題、Governance=企業統治)も大きく影響している。

 国際連合が2006年に作成した責任投資原則(Principles for Responsible Investment、以下PRI)は、投資を通じてESGを考慮するための必要な6つの原則を明示しているが、このPRIに賛同し署名した投資家は投資行動にESGの課題を取り込まなければいけない。20年度はPRIに署名した投資家の運用金額が1京円を超えているほど、ESGが企業価値において存在感を増している。そして、世の中には日経平均株価に連動するファンド(インデックスファンド)があるように、ESGスコアの高い企業にのみ投資するファンドも存在する。投資家に対し、それらの金融商品に投資を促すのが今の流れとなっている。

 世界には企業のESGスコアを格付けする会社が乱立しているが、そもそもどのようにESGのスコアを評価するのか。大きく3つのスクリーニングで判断している。1つ目は、反社会的な活動に関わったり、労働や人権を侵したりしていないかなど問題点を投資対象から除外する「ネガティブ・スクリーニング」。2つ目は女性幹部の割合など経営を持続可能なものにすることを目的とした経営改善を判断する「インテグレーション・スクリーニング」。3つ目にはESG評価の高い企業やプロジェクトを投資対象として組み入れ投資比率を高める「ポジティブ・スクリーニング」がある。

 日本ではこのESGスコアに無関心な企業が多く、有価証券報告書(事業年度ごとに作成する企業内容の外部への開示資料。金融商品取引法で規定されている)にESGスコアを記載している企業は東証一部上場企業でも半分ほど。世界的に見ても、とても遅れている。

 ポーラに話を戻すと、ポーラ・オルビス ホールディングスは昨年、ドイツのESGスコア評価会社による「ESGスコア日本企業ランキング」で4位の評価を受けている。ESGスコアが高いという評価があるからこそ、女性支援団体に売り上げの一部を寄付するなどの施策に前向きに取り組むことができる。そして単に社会に優しいことをするという理念だけではなく、ESG投資を積極的に行う流れがある中で、投資家にポーラの株をアピールするきっかけにもなる。そんな経済合理性が見えるニュースだ。

オピニオンリーダーを求める人が増加

 SISIが展開する新ブランド第1弾製品は、公式発売に先駆けてクラウドファンディングサービスを活用した。その理由の一つに「早期にオピニオンリーダーに注目してもらえるように」とあるが、インフルエンサーではなくオピニオンリーダーを意識している点に注目した。

 いまインフルエンサーは数多く存在し、飽和状態である。そんな中でどのようなインフルエンサーが残っていくのか?それは、自身の見解や知識を持ち、しっかりと自分の言葉で思いを発信する人だと考える。「自身の志向や価値観をこの商品がどう変えてくれたのか」「この商品やトレンドはこんな広がりを見せるだろう。なぜならば……」など、フォロワー数だけではなく論理展開できる人がオピニオンリーダーであり、そんな人が今後マーケティングにより生かされていくのではないか。特に今回はD2Cブランドのためマスを狙っていない。その状況でコアな顧客になりうる人に対しどう発信していくのか。それはインフルエンサーによる拡散ではなく、商品の性能や比較など分析ができるオピニオンリーダーだ。

 私自身も「長く必要とされるにはどうしたらいいか?」と考えるが、まず意識するのは「炎上を起こさないこと」。炎上マーケティングで一時的にフォロワーは増加すると思うが、“炎上の人”というレッテルを一度つけられてしまうと、オピニオンリーダーとしての仕事は来ないだろう。ほかにも、「経済の話以外はしない」と決めている。コロナ禍でも「経済への影響」「ワクチンが広がると経済がどうなるか」などを発信し、プライベートは決して話さない。そうすると、フォロワー数は少なくとも“経済を常に発信し続ける人”を求めるコアなフォロワーが多いように思う。ビューティ業界に置き換えると、メーカーだけでなく消費者側もオピニオンリーダーを求める人はさらに増え、今後はより一層マスメディア広告とオピニオンリーダーを使ったマーケティングに二極化するのではないか。


「WWDジャパン」3月15日号には、前週のビューティアクセスランキングTOP5を掲載。下記をチェック!(集計期間:2021年3月1日~7日)

1位 韓国で“皮膚再生”と話題!「シカクリーム」に新たなトレンド
2位 イオンとウエルシアHDが共同出資で販売の仏「イヴ・ロシェ」
3位 「ナーズ」から新作クッションファンデが登場ブルーライトやPM2.5をカット
4位 マツキヨココカラ&カンパニー誕生 売上高1兆円・3000店舗体制の業界首位へ
5位 ヘアカラーに合わせた眉メイクを提案「インプレア」からアイブロウアイテム誕生

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2026-27年秋冬パリも「愛着」のムード TASAKIの新トップインタビュー、阪急うめだ本店の改装も【WWDBEAUTY付録:「第9回 WWDBEAUTY ヘアデザイナーズコンテスト 2026」結果発表】

3月23日発売の「WWDJAPAN」は、2026-27年秋冬パリ・ファッション・ウイークの特集です。メンズやミラノに続き、パリも「愛着」のムード。TASAKIの新トップインタビュー、阪急うめだ本店の改装など、ニュースも盛りだくさんです。「WWDBEAUTY」は「第9回 WWDBEAUTY ヘアデザイナーズコンテスト 2026」の結果発表です。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。