ビューティ

イオンとウエルシアHDが共同出資で販売の仏「イヴ・ロシェ」 “手に届くナチュラルコスメ”のヒット商品は?

 イオンとウエルシアホールディングスが共同出資会社イオンレーヴコスメを設立して独占販売を開始したフランスのボタニカルビューティケアブランド「イヴ・ロシェ(YVES ROCHER)」により、イオンは利便性の高い店舗でラグジュアリーから手ごろな価格帯、ナチュラル・オーガニックブランドまでを取りそろえ、多様なニーズに応える体制を整えた。環境や健康意識の高まりから日本のナチュラル・オーガニックコスメ市場のさらなる伸長が予想される中、世界約90カ国6700以上の店舗で展開し世界的知名度の高い「イヴ・ロシェ」の日本上陸から現在までの商況と今後について中島裕子イオンレーヴコスメ社長に聞いた。

フランスでは誰もが知るメジャーブランド

WWD:2019年11月の日本でのブランドデビューから1年以上が経過した。これまでの商況は?

中島裕子イオンレーヴコスメ社長(以下、中島):関東地区112店舗からスタートしましたが、21年1月時点で全国に970店舗、4月には1500店舗まで拡大する予定です。上陸時は25年までの2000店舗体制が目標でしたが、前倒しで達成できそう。デビュー直後に新型コロナウイルスの感染が拡大して、店頭ではテスターを撤去して接客販売を自粛。GMS(総合スーパー)とドラッグストアの販路は店舗休業という影響は受けていませんが、想定より厳しいスタートでした。ただ、スター商品のヒットと手に取りやすい価格帯も手伝って、後半は大きな成果を上げました。

WWD:取扱店舗の拡大を早めた理由は?

中島:「イヴ・ロシェ」はフランスではNo.1ビューティケアブランドですが、日本では無名。まずは手に取って、使用感や効果を実感していただくのが一番と考えたためです。当初は関東エリアでブランド認知を高めてから全国に広げる予定でしたが、ヘアトリートメントの“リンシングビネガー”(150mL、1000円)が非常に好評で、全国から導入の要請が多く、まずは取扱店舗を拡大してリアルなタッチポイントを増やす戦略に変更しました。

WWD:改めてブランドの特徴は?

中島:創業はナチュラルコスメの中でも歴史が長い1959年。創業者イヴ・ロシェの「全ての女性にボタニカルビューティを届けたい」という思いから、自然と女性をリスペクトし、植物と愚直に向き合い研究を続け、他社に先駆けて自然を守る活動にも取り組んできました。植物の専門性と革新性、機能性、それに伝統が詰まった商品は、天然成分をぜいたくに高配合しながらもリーズナブルな価格。日本では「ナチュラルコスメはぜいたく品」というイメージが根強いかもしれませんが、「イヴ・ロシェ」はナチュラルコスメ市場の裾野を広げる可能性を持っています。

WWD:ターゲットと展開アイテムは?

中島:ブランド認知を広げるという意味では、10~20代の女性と親世代の40~50代の女性です。手ごろなので若年層も使い続けられるでしょう。若年層は新しい商品に敏感で、サステナビリティへの意識も高いのでターゲットに設定しています。トータルビューティケアブランドとして本国フランスではスキンケアからボディーケア、ヘアケア、メイクアップ、フレグランス、メンズラインまで幅広いカテゴリーで多彩な商品を販売。どこでも買える身近なブランドであり、年齢や性別を問わず誰にでも合う商品があるのも魅力です。膨大な商品の中から日本市場に合う商品を厳選し、約1割を導入しています。

WWD:日本市場でのカテゴリー別売り上げ構成比は?

中島:一番大きいのがヘアケア、次いでボディーケア、フレグランスと続きます。シーズンによっては、ギフトが上位に。ホリデーシーズンには香り豊かな商品のギフト提案を行うなどシーズナブルなマーケティングを展開し、ベーシックケアでのファン作りと同時に新客獲得にも注力しています。現状ではヘアケアが主力ですが、今後は各カテゴリーをバランスよく訴求したい。ゆくゆくはメイクアップの導入なども視野に入れています。

酢の力でサラ艶髪になる“リンシングビネガー”が大ヒット

WWD:最も売れているスター商品は?

中島:ヘアトリートメントの“リンシングビネガー”は、シャンプー&コンディショナーの後に使うものですが、水のようにさらさらのテクスチャー、一番人気のラズベリーなど豊かな香り、髪が重たくならずツルツル・サラサラになる使用感。そんな驚きの連続が口コミにつながっています。ここ数年は時短コスメがトレンドでしたが、コロナ禍で“おこもり美容”のニーズが高まり、ヘアケアは好調カテゴリーの一つに。「もうひと手間かけたい」というニーズに対応するプラスワンアイテムとしての新鮮さもご好評いただいています。まずは使っていただきたいので、取扱店舗を増やしたほか、美容誌の付録に付ける施策などを実施。社内外で行ったアンケートでは9割以上から「効果を感じる」「さらさら艶々になる」との回答をいただきました。特にアジアで人気で、韓国でも大ヒットしています。

WWD:他社に先駆けてきたサステナビリティの取り組みとは?

中島:「自然から得たものは自然に返す」を基本理念に創業期から取り組んでいます。例えば環境保全への取り組みや全工場用地において生物多様性の保護に努めていることが評価され、96年と2011年にはフランス環境省から表彰されました。工場では排水の削減、再生可能エネルギーの使用に取り組むほか、プラスチックバッグは2006年に撤廃。これにより200トンのプラスチックを削減しました。1989年には動物実験を廃止したほか、昨年には2008年にスタートした植樹活動が5大陸35カ国で1億本を達成。通常のシャワージェルと比べて水分を1/4に圧縮することで、プラスチックの使用量や輸送にかかる環境負荷を削減した“濃縮シャワージェル”を1本購入いただくごとに1本の植樹を行う取り組みで、世界で約3秒に1本のペースで植樹を行っています。日本では19年11月の発売以来、約7万本を輸入販売しています。植樹はグローバルな取り組みですが、今後は日本独自の取り組みをスタートする計画もあります。

WWD:今後のプロモーション戦略は?

中島:店頭に並んでいるだけでは手に取ってもらえないので、口コミがとても大切。デジタル上で話題の商品が身近なGMSやドラッグストアの店頭で目に留まり、実際に触れることで購入への障壁が一気に下がり購入につながります。デジタルとリアルの融合で、さまざまな場所で話題にしてもらえるきっかけ作りを行います。店頭での存在感を示すため、店舗との信頼関係を築きたい。信頼関係がなければ、無名のブランドが人通りの多い一等地に並ぶことはありませんからね。ブランドの理解が深まるとお客さまに知っていただきたくなりますから、商品開発にかける思いや研究の深さは店舗にも伝えるようにしています。その次は、伝えきれていなかったブランドのポリシー、地球環境を考えたモノ作りの姿勢で認知を高めたいと思います。4月にはメディア向けにサステナビリティ活動をお伝えする機会を設け、夏まで環境に配慮したヘアケアカテゴリーとスキンケアで新商品を発売する予定です。

WWD:コロナ後の展望は?

中島:われわれの一番の強みは、リアル店舗でのタッチポイントがたくさんあること。コロナが収束すれば、その強みをさらに生かせます。収束後も、わざわざ遠方まで買いに行くのではなく、近場で気軽に体験したいというニーズは続くと考えています。そのニーズに応えるブランドとして、取扱店舗の拡大とデジタルでの情報発信を同時に進めてブランドを育成。今までナチュラルコスメに出合ってこなかった客層を取り込むことでナチュラルコスメ市場を拡大したいと思います。

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