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丸井グループはいかにしてESG経営先進企業になったのか

 日本の小売業界で、新しいビジネスモデルに挑戦する先進企業として知られる丸井グループ。これまで“売らない店舗”として従来の店舗から体験型ストアへの転換を推進するなど、新たな領域に参入してきた。その丸井グループはESG(環境、社会、ガバナンスを重視した会社運営)でも高い評価を得ている。ESGの格付けランキングとして知られる「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス」でもスコア96と高得点をマークしている。

 丸井グループは2016年、環境への配慮、社会的課題の解決、ガバナンスの取り組みがビジネスと一体となった“共創サステナビリティ経営”を行うためにESG推進部を新設し、情報開示の強化・推進の体制を整えてきた。どのようにしてESG経営先進企業になったのか。そのきっかけを同グループの関崎陽子サステナビリティ部長に聞く。

WWD:サステナビリティの分野の先進企業にとって、そうなる契機は自社とサプライチェーンの環境負荷を知ったとき、と聞くことが多くあります。丸井グループのきっかけは何でしたか?

関崎陽子サステナビリティ部長(以下、関崎):丸井グループでは、以前より省エネ・省資源をはじめ環境保全に配慮した取り組みを進めてきましたが、大きなきっかけになったのは2005年のCSR推進部(17年4月サステナビリティ部に)発足でした。それを機に環境省が定める「環境会計ガイドライン」や「温室効果ガス排出量算定報告マニュアル」等を参考に、エネルギー使用量・CO2排出量、水資源使用量・排水量、廃棄物排出量等について経年で把握し、08年以降、CSRリポートやウェブサイトでのデータの開示・充実を図ってきました。

そして14年以降、私たちは丸井グループ自らの温室効果ガス排出量(Scope 1&2:1は事業者自らによる直接排出、2は他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)に加え、サプライチェーンにおける排出量Scope3の算定に着手しました。きっかけは、CDP(英国のNPOで、投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営)などの外部評価機関等のアンケート調査への対応でした。調査項目を確認する中で、たとえばScope3といった新たな概念が社会的要請として高まっていることを知ったのです。

この算出を通じて、丸井グループ内の環境負荷(Scope1&2)のみならず、原材料の調達から輸送や、お客さまご購入後の排出量(Scope 3)を含むサプライチェーン全体の排出量の見える化ができ、お客さま・社会と共に進める環境負荷低減という視点を持つきっかけになりました。

WWD:環境負荷を知ることによって何が変わりましたか?

関崎:自社排出の温室効果ガスの多くが電力に由来していることを知りました。その電力を再生可能エネルギーに切り替えることによって環境負荷低減に貢献しようと、18年にRE100(使用する電力の100%を再生可能エネルギーによる電力にすることに取り組む企業が加盟する、国際的な企業連合)に加盟し、30年までに再生可能エネルギー100%を達成するという目標を掲げることにつながりました。なお、2020年度は50%達成の見込みです。

WWD:廃棄物のリサイクルも強化しているとか。

関崎:はい。事業所での廃棄物を詳細に把握することが、リサイクル率向上の取り組みにつながっています。15年には59%だった資源リサイクル率は19年には63%に向上しました。現在、25年に75%以上を達成する目標を立てて、廃棄物置き場のエコファクトリー化を進めています。

WWD:エコファクトリーとは?

関崎:資源リサイクル率を高めるため、生ごみのリサイクルに重点的に取り組んでいます。マルイファミリー溝口では、ビル管理会社のみぞのくち新都市と共同で、19年にごみ処理施設のリニューアルを行い、「ノクティ エコファクトリー」と名称も変わりました。集積場のレイアウト変更や、テナントごとのごみ排出量の見える化などを実施しています。導入3カ月で生ごみのリサイクル率は100%に、資源ごみ全体のリサイクル率も30%以上向上し、76%となりました。今後は全店の資源リサイクル率を高め、さらなる環境負荷の低減をめざしています。

WWD:現状把握、目標設定、そして取り組みへの移行についてはどういうプロセスで行っていますか?

関崎:16年以降、丸井グループでは、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)やFTSE(株価指数の算出・管理や、関連する金融データの提供サービスを行う企業)、CDPをはじめとするESG評価機関やサステナビリティに関するさまざまな調査に対し、積極的に回答・開示を進めています。こうした調査は私たちにとって、企業が注目すべき点・対応が求められる環境項目などの気づきとなり、グローバル基準を知るきっかけにもなります。

毎年ESGデータブックとして開示する中で、環境項目についての不足点や開示を拡充する点がないかを考えるとき、こうした外部評価機関からの投げかけは大変貴重なものです。また、実態の把握や今後の取り組みを検討するためには社内の連係が欠かせず、それにより、事業戦略にサステナビリティ戦略が組み込まれていくことにつながると考えています。

WWD:環境負荷を減らしていくために、何を参考にしていますか?

関崎:SBT(SCIENCE BASED TARGETS:環境省の定義は「パリ協定の基準が求める水準と整合した5~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標」)やTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:G20の要請を受け、金融安定理事会が気候関連の情報開示および金融機関の対応をどのように行うかを検討するため、マイケル・ブルームバーグ氏を委員長として設立。企業などに対して気候変動関連リスクの項目を開示することを推奨)といったイニシアチブにも積極的に参加しています。自社の環境負荷について現状を把握することによって課題が明確になり、環境負荷低減の取り組みの必要性と具体的目標が明確になります。

私たちは今後も、自社の環境負荷低減はもちろんのこと、ビジネスを通じて、環境という社会課題解決に向けて取り組みを推進していきたいと考えています。

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