ファッション

「ブルックス ブラザーズ」はパーソナルオーダーに光明 コートは前年同期比35%増

 米ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)が、チャプター11を申請して経営破たんしたのが今年7月8日。同社が株式の60%を持つブルックス ブラザーズ ジャパンが、日本における旗艦店青山店を閉店したのが8月30日。表参道店のオープンが9月4日と、激動の4カ月を過ごした「ブルックス ブラザーズ」。当然、これらを覆うようにコロナショックによる影響があり、コロナ以前から仕事着のカジュアル化が“スーツの「ブルックス ブラザーズ」”に暗い影を落としていた。表参道店の初速や好調だというパーソナルオーダーについて、大平洋一ブランドアンバサダーに聞いた。

WWD:逆風とも言える状況の中で、表参道店がオープンして約2カ月。初速は?

大平洋一「ブルックス ブラザーズ」ブランドアンバサダー(以下、大平):オープンからひと月ほど、1階入り口付近に“シャツラボ”という特設スペースを設けていたこともありシャツの売り上げがよかった。

WWD:取材を通じて日々“シャツは厳しい”と聞くが、「ブルックス ブラザーズ」では売れている?

大平:われわれが“ポロカラーシャツ”と呼ぶボタンダウンシャツは、「ブルックス ブラザーズ」が1896年に作ったものだ。「ブルックス ブラザーズ」にとってのアイコンであり、ここ2年ほどはポロカラーシャツや紺ブレなど、われわれのアイデンティティーと言えるアイテムを特にプロモーションしており、それが20代を中心とする若年層にも響いていると感じる。雑誌「ポパイ(POPEYE)」(マガジンハウス)や「ビギン(Begin)」(世界文化社)が、編集コンテンツとして取り上げてくれたことも大きい。また3年ほど前からはビームスやユナイテッドアローズなどへの卸にも力を入れており、これが新客の掘り起こしにつながっている。

WWD:ほかに売れているものは?

大平:日本上陸40周年を記念して2019年に明治神宮外苑で行ったランウエイショーで、ショーピースとして作ったベースボールキャップを表参道店オープンに合わせて商品化した。“B.B.”のロゴを大きくあしらったウール製で初回生産分はMade in USAだ。完売したカラーもあり、現在は日本製に切り替えて多色化展開している。税込みで9900円という価格から、“ファースト・ブルックス ブラザーズ”として購入される方も多い。

WWD:旗艦店機能を青山店から表参道店に移したことで客層も変わった?

大平:採光性の高いガラス張りの店構えによる入りやすさや、周りにアパレルショップが多い立地から気軽に入店される新客が増え、それが売り上げにつながっている。青山店は重厚感があり、通り沿いに他店もなく目的買いのリピーターが中心だったので。

WWD:スーツで9万9000円~のパーソナルオーダーも人気だと聞いた。

大平:毎年、秋冬シーズンの立ち上がり時に全国でパーソナルオーダーフェアを行っており、今年はコロナ禍にもかかわらず好調だった。仕事着のカジュアル化やリモートワークの常態化に伴い既製スーツの売り上げは落ちているが、ありがたいことにオーダー数は横ばいだ。特に、今年はカシミアなど高級生地を使った30万~60万円のオーダーが増えている。またコートの受けもよく、前年同期比35%増だ。スーツについては集計中だが、こちらも前年の数字をクリアする見込みだ。コロナ疲れを打破したいという消費マインドや、特別定額給付金の後ろ支えもあるものと見ている。

WWD:パーソナルオーダー利用客の顔ぶれは?

大平:中心は40〜50代のブランドファンで、パーソナルオーダーを5、6回経験しているリピーターが多い。仕事着のスーツは減っているが、“ここぞ!”の時のハレ着としてのスーツは健在な印象だ。そして「ブルックス ブラザーズ」は、そういう大人をこれからもつくっていかなければならないと思う。

WWD:ずばりパーソナルオーダーの魅力は?

大平:既製スーツの場合、“マディソン”“リージェント”“ミラノ”と主に3種類あるフィッティングを上下で変えることはできず、上下のサイズバランスも決まっている。パーソナルオーダーなら、これをアレンジ可能だ。例えば“マディソン”のパンツのウエストを1インチ上げて、一方でワタリ幅を狭くするなどのパーソナライズできる。

WWD:好調さキープのための次なる施策についても教えてほしい。

大平:オーダーにつきまとう敷居の高さを払拭して、より多くの方に体験してほしいとの思いで11月4日から多摩南大沢、入間、幕張のアウトレット3店舗でもパーソナルオーダーの受付を開始する。価格は50%オフだ。実は“アウトレットの「ブルックス ブラザーズ」にしか行ったことがない”という方も多く、ここにビジネスチャンスを感じている。またウィメンズには引き続き“ジャケット”のトレンドがあり、ここに紺ブレを提案したい。アラウンド管理職はもちろん、20代にもダッドジャケット的にオーバーサイズを勧めたい。カーディガン感覚で、紺ブレを肩掛けするスタイリングを想定する。

WWD:最後に、大平ブランドアンバサダーの見る「ブルックス ブラザーズ」のビジョンについて聞きたい。

大平:「ブルックス ブラザーズ」は200年を超える歴史を持つ。ポロカラーシャツや紺ブレのみならず、ナンバーワンサックスーツやレップタイなど今日のメンズ服の根幹をなすオリジナルも多く、こういった定番品は困難な状況に強いと思う。このストロングポイントを売り場からいっそう発信していきたい。

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