ファッション
連載 コレクション日記

「シャネル」「ルイ・ヴィトン」「ミュウミュウ」「メゾン マルジェラ」が競演!! デジコレでドタバタ対談パリ最終日

 2021年春夏のコレクションサーキットのラストとなるパリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)も6日目となりました。パリからはベルリン在住のヨーロッパ通信員が現地取材の様子をお届けしますが、オンラインでも日本の記者たちが対談レビューという形で、“できるだけリアルタイムに近いペース”で取材を進めていきます。最終回は、2人の編集長対談。「WWDジャパン」の向千鶴編集長と、「WWDJAPAN.com」の村上要編集長が語り合います。

ヴィルジニーの「遺産をモダンに」の挑戦続く「シャネル」

:インスタグラムなどで発表されたティザーにはロミー・シュナイダー(Romy Schneider)、アンナ・カリーナ(Anna Karina)、そしてジャンヌ・モロー(Jeanne Moreau)ら、ハリウッドで活躍した往年のフランス人女優がたくさん出てきていたので、ショー会場の大きくて真っ白な「CHANEL」のボードを見て納得。ハリウッドの世界とパリが出会った、まさにそんなイメージのショーでした。ちなみに、引用された映画は、ジャック・ドレー(Jacques Deray)監督の 「太陽が知っている」や‎ジャン・リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard)監督の「勝手にしやがれ」「女は女である」「軽蔑」「気狂いピエロ」など、いずれも1960年代の映画です。

村上:着想源の1つは、そんな女優がフォトコール、カメラマンに囲まれてフラッシュを浴びる瞬間の姿みたいですよ。美しいドレスに身をまとっているけれど、やっぱり緊張して、ちょっぴりぎこちない。そんな生身の姿が美しいと感じたそうです。今ではジャンヌ・モローが緊張していたなんて想像できませんが、60年代は、まだ30代。レッドカーペットを歩いた時は、緊張していたかもしれませんね(笑)。ゲストの数はいつもより少ないようですが、グラン・パレに巨大なオブジェ!!「シャネル」健在!!パリコレ健在!!を誇示しているかのようで、頼もしく思えました。

:スカートの丈が短く、素足を見せるあたりも60年代の女優風。ヴィルジニー ・ヴィアール(Virginie Viard)がファッション・コレクション・アーティスティック・ディレクターに就任してから「シャネル」の服はぐっと親しみやすく、リラックスしたものになったよね。フィナーレの先頭で見せたライダースジャケットが象徴的。ライダースだけどゆったり目で、ざっくり羽織れる感じ。これまでの「シャネル」にはなかったムードです。バッグはぐっと小さくなってほぼネックレス、でした!

村上:ブラックやエクリュ、ホワイトに、ペールからショッキングまでのピンクを合わせるカラーコンビネーションが新鮮ですね。しかもピンクのセットアップにブラックやグレーのインナーを合わせるコーディネイトから、ブラックとピンクの糸をミックしたツイードまで、色の合わせ方が多面的です。ココ・シャネル(Coco Chanel)やカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)の遺産を継承しながら歩みを進める、ヴィルジニーの重責と決意を象徴しているように感じました。そして、その決意をとってもポップに表現しているのが、今っぽいなぁとも。ラグランでオーバーサイズ気味のブルゾン、カプリパンツ、ミニスカート、フラットシューズ、スマホだけ入れば十分くらいのミニバッグ、いずれも現代のライフスタイルとマッチしていますね。今シーズンは、ロゴドリブンなスタイルも印象的です。ほんの1年前までは、「キャッチーなロゴではなく、王道のエレガンスへ」という流れでしたが、コロナによってデジタルトランスフォーメーションが進む中、「画面上でも魅力が伝わる」ロゴや原色の価値も見直されている印象があります。その流れも意識しているのかな?

みんなでキャピる“違和感”あるガーリー路線の「ミュウミュウ」

:最初に確認しておくと、「ミュウミュウ(MIU MIU)」にラフ・シモンズ(Raf Simons)は関わっておらず、引き続きミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)によるデザインです。ので、安定のガーリー路線。今回はそこにスポーツの要素を加え「そうだ、2021年は仕切り直しの五輪イヤーじゃないか」と思い出しました。その割には、他ではあまりスポーツの要素は見かけなかったですよね。

村上:「トム ブラウン(THOM BROWNE)」のコレクションの舞台はオリンピックスタジアムでしたが、洋服はいつも通りのフォーマルでしたからね(笑)。個人的には、「プラダ」にラフが加わった分、ミウッチャは「ミュウミュウ」に全力投球では?と思い期待しています。そして期待通り!!カワイイ路線は色濃いものの、ミニマルやインダストリアルも融合した、“違和感”のあるスポーツスタイルでした。ミウッチャは、こうじゃなくっちゃ。

:「プラダ(PRADA)」同様、各都市で先行視聴会が開かれ、東京は東京・表参道のジャイル(GYRE)4階のレストランで行われました。画面の中にはZoomのようなスクリーンがたくさん並んでおり、フロントローの常連とおぼしき女性が映し出され、彼女たちが見守る中でショーが進みます。スポーツの無観客試合をファンが遠方から盛り上げる感じですね。この皆でキャピキャピ盛り上がる感じそのものが「ミュウミュウ」の世界観。うっかりお酒がすすみました。

「ルイ・ヴィトン」が大統領選直前に「VOTE」トップスの意味は?

:最終日、リアルなショーのトリは、今回も「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」でした。会場は、セーヌ川沿いに建つ建物で、あれは確か老舗百貨店サマリテーヌ(LE SAMARITAINE)の跡地ですね。LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESY LOUIS VUITTON以下、LVMH)が保有しているのになかなか進展がなかったけれど、いよいよ来年春に複合施設としてオープンするそうです。

村上:パリのど真ん中にあるのに“お化け屋敷”みたいでしたから、サマリテーヌのオープンは、本当に良いニュースですね。百貨店やホテル、レストランなどの複合施設になるそうです。

:ところで要さんは何でショーを見ましたか?私はユーチューブ、インスタグラム、ティックトック、さらに「ルイ・ヴィトン」から送られてきた“自分専用カメラ”を行ったりきたりしてみて、途中で迷子になりました(笑)。ソーシャルディスタンシングを設けた客席の間に棒状のカメラがたくさん立っていましたが、あれが“自分専用カメラ”ですね。新しい体験で面白かったけれど、結果は大画面のユーチューブで見るのが一番迫力があってよかったかな。カメラ席から撮った映像が一番きれいで見やすいからね。

村上:僕は“自分専用カメラ”にアクセスしました。隣は、米「WWD」の大御所マイルズ・ソーシャ(Miles Socha)でした(笑)。コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)社のショーで隣になることが多いのですが、“自分専用カメラ”も、そのあたりに配慮してくれてたのしょうか(笑)?“自分専用カメラ”は、360度、上にも下にも自由にスクロールできて、サマリテーヌの屋根なんかもちゃんと見えました。とは言え、YouTubeでもちゃんとサマリテーヌの内観は大画面で映りましたけれどね。

:スポーティー×クラシック、そこにアニメチックなプリントや色を合わせるのがウィメンズ・アーティスティック・ディレクター、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)が得意とする世界観。ヴァーチャルの世界は、相性が良いよね。この感じでどんどんデジタルの世界に投資して、新しいファッションショーの姿を創ってほしいな。それにしてもきになるのが「VOTE(投票しよう)」のTシャツ 。シー・ナウ・バイ・ナウで、アメリカ大統領選の前に発売するのかな?

村上:え~、あと1カ月もありませんよ(笑)。ただ、アメリカ大統領選「VOTE」して欲しいですね。ニコラ、ワンピースは安定のミニ丈ですね。シルバーやメタルパーツも盛りだくさんで、アクセサリーを中心に未来的なムードはいつも通り色濃かったものの、オーバーサイズのジャケットやコートなど、クラシックなメンズウエアに刺激を得たムードも垣間見え、性差に関係なく、より大勢が楽しめるスタイルに進化した印象です。実際、メンズモデルも登場していますね。クロップド丈のグラフィティトップスに、ショートパンツ、そしてモコモコブーティのスタイルが、ベリー可愛かったです。大好物!!

今回もガリアーノがたくさんおしゃべりの「マルジェラ」

:オートクチュールに続いて、今回もジョン・ガリアーノ(John Galliano)はよくしゃべった。本当に楽しそうにコレクションのインスピレーションからモノづくりのテクニックまで隅々まで話してくれて、間に物語も差し込まれるから一ファンの私としては嬉しいけれど、深夜に取材として見ると長く感じそう。このフィルムプロジェクトは今回がラストだそうです。全部話してくれてありがとうジョン。

村上:背中の4本ステッチ以外多くを語らない、それが美学というイメージだった「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」とジョンが、メチャクチャ喋ってくれたことに驚きを禁じ得なかったのが、前回のオートクチュールですね(笑)。デジタル・ファッション・ウイークの大トリを飾ったのは、「スイマセン、ウチのムービー44分もあるので、後ろのブランドの影響しないよう、最後にしてください!!」なんて考えがあったのかもしれません。

:コレクションは、アルゼンチンのタンゴとそのステップがインスピレーションでした。リリースには、「人々が離れ離れの生活を余儀なくされている今こそ、人との繋がりに新たな価値が見出されます。人が誰かに頼る時、直感と信頼を頼りに二人で踏むステップが不可欠」とある。だからイメージ映像の中ではモデル同士が情熱的にぶつかりあうシーンが何度も出てきます。体に吸い付くようなタンゴのドレスは、ジョンが元来好きなスタイルですしね。

村上:「カワイイ!」&「エラい!!」って思ったのは、ジョンもちゃんとステップを学んで、パートナーと支え合い完成するタンゴの真髄を体感したこと。あえて体感する、って、コロナでデジタルトランスフォームが進んでいる今だからこそ、さらに価値を増している気がします。伊達男が着るジャケットが切り裂かれて合間からフリルがのぞくトップスは、ライナーを解体するというアプローチが「マルジェラ」らしいし、男と女というパートナーが融合して1つになるタンゴの表現でもあるし、ジェンダーレスという価値観の象徴でもあるような気がしますね。ステップに欠かせないシューズは、ポインテッド。パートナーのシューズは、やっぱりメリー・ジェーンですね!

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