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日本伝統の金継ぎをジュエリーで表現 「ミラモア」の稲木ジョージに聞くクリエイション

 ニューヨーク発、メード・イン・ジャパンのジュエリー「ミラモア(MILAMORE)」の最高経営責任者(CEO) 兼ブランドビジョニアの稲木ジョージ氏が、百貨店でのポップアップショップ開催のため一時帰国した。稲木CEOは「アメリカン アパレル(AMERICAN APPAREL)」のPRとして同ブランドの渋谷店の売り上げを世界一にした立役者だ。2014年に渡米しデジタルPRとして起業し、さまざまなブランドのイベントのコーディネートやインフルエンサーの起用などを手掛けている。そんな稲木CEOが19年、ジュエリーブランドを立ち上げた。祖母のニックネーム“ミラ”にちなんで「ミラモア」と名付けた自身のブランドに込めた思いを聞いた。

WWD:「ミラモア」を立ち上げたきっかけと目的は?

稲木ジョージCEO(以下、稲木):「ミラモア」設立のきっかけは、代々一族で宝石商を営んできた大和梓氏から企画書を受け取ったこと。日本の文化を取り入れた工芸品などはあるが、ジュエリーがないと思ったし、小学生のときからネックレスを、中高学年ではピアスなどジュエリーを着けることが好きだった。昔話に登場するツルやカメ、金魚などがモチーフのジュエリーはお守り的な意味も持つと思ったから。社会的な責任を持ちつつ、ジュエリー製造における日本の職人を支援していくのが目的だ。日本の文化を継承していきたいという強い思いがある。

WWD:「ミラモア」という名前は祖母のニックネームからだそうだが?

稲木:フィリピンで9歳まで祖母に育てられて、大好きな人だから。“ミラ”はイタリア語で目的という意味もある。ブランドのロゴマークは金魚だ。

WWD:金継ぎという技法に出合ったきっかけと、それをジュエリーで表現した理由は?

稲木:ユーチューブでタイ人の男の子が金継ぎの哲学を語っているのを見て面白いと思った。金継ぎは割れたものを漆でつなぐという技術。裕福だろうがそうでなかろうが、傷ついたことのない人はいない。ある意味、金継ぎは傷ついたことを乗り越える挑戦のように思えた。だから、それにフォーカスしてジュエリーにしてみたいと思った。壊れたものを直してそれを勲章として着ける。そうすることで、自分が完成するといった、新たな価値観の提案だ。

また、金継ぎおよび、それに関わる日本の職人技を後世に残したいという思いもある。

WWD:金継ぎをテーマにしたジュエリーはどのように作られるか?

稲木:共通の友人を通して知り合った輪島の漆職人の桐本滉平さんとコラボレーションで作っている。桐本さんは27歳で、地元の漆産業を担う若手職人だ。漆の歴史は1000年以上前にさかのぼる。縄文時代から魔除けとされていたし、茶道にも深い関係がある。なぜなら、陶器が割れたら漆を接着剤として使用し金粉をかぶせて金継ぎして使っていたから。金継ぎは日本のわびさびを象徴するものだと思う。マザー・オブ・パール(MOP)を使用したのは、中国から渡ってきた螺鈿(らでん)に着想を得た。また、私が育ったマニラは東洋の真珠と呼ばれている。MOPを割って漆で接着し,金粉を施すとマットなテクスチャーに仕上がる。

WWD:クリエイションの過程は?

稲木:物と情報が溢れた世界に生きているので、クリエイティビティーそのものより編集能力が評価される。デザインに関しては、全く新しいものを打ち出すのはほぼ不可能だ。私にとってデザインとはビジョンであり、それをどう語るのかが重要だと思う。PRをしていたこともあり、人にどう伝えられるかということを常に考えている。だから、フィロソフィーからクリエイションに入るようにしている。ニューヨークに7年間住んで、日本の文化についてあらためて考えた。歴史や文化について語れないと恥ずかしいということがよく分かった。

WWD:今後のコレクションの予定は?

稲木:金継ぎからインスパイアされたチェーンを出すつもりだ。チェーンと言えば円。円=縁を大切にしたいと思う。それはいいカルマも意味すると思うから。また、10月には星座のチャームも出す予定だ。

WWD:今後の目標は?

稲木:ただのジュエラーではなく、ジュエリーブランドとして確立したい。日本のブランドはグローバルブランドになりにくい。ゆくゆくは世界的なラグジュアリーのコングロマリットの傘下に入れたらいいと思う。今は外国のブランドばかりだけど、日本のブランドも入れたらいいなと思う。または、自分でジュエリーブランドのコングロマリットをつくるということも視野に入れている。こだわって作ったキャンドルをはじめとするフレグランスのビジネスも強化していきたい。ロックダウン中にECのオーダーに手応えを感じたので、デジタルの施策にも注力するつもりだ。

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