ファッション

「ダイヤモンド調達の透明性が購入動機に」 ティファニーCEOが語る今後の戦略

 ティファニー(TIFFANY & CO.)は、0.18カラット以上のダイヤモンドについてトレーサビリティーを開示すると発表した。その取り組みは「クラフトマンシップ ジャーニー」と名付けられ、産出地、仕分け、カットと研磨、グレーディング、セッティングが行われた全てのロケーションを証明するものだ。この取り組みは、ダイヤモンド(0.18カラット以上)に産出地証明を付けて販売するという2019年にスタートした動きの延長線にあるもので、ティファニーのダイヤモンド鑑定書に含まれる。これらの取り組みはティファニーのような大規模なジュエラーにおいては初めてだ。ジュエリー業界は、労働条件や持続性に関する宝石調達の不透明性について長年闘ってきた。特にエンゲージメントリングやブライダルリングを購入するミレニアル世代による要求の高まりにより、これまで以上に取り組みが盛んになっている。

 アレッサンドロ・ボリオーロ(Alessandro Bogliolo)=ティファニー最高経営責任者(CEO)は、「われわれはこの取り組みを20年前から始めているが、発表するのには今が最適なタイミングだ。この取り組みは私の前任者による決断で、消費者にわれわれが過去20年間取り組んできたことを提供できるのを幸運に思う」と話す。ティファニーは何年も前から垂直統合に投資してきたが、ダイヤモンドの原産地などの詳細を公表することはボリオーロCEOの新戦略における決定だ。この取り組みはティファニーのダイヤモンドの価格には影響しないという。「多くの投資と調査が必要なことなので、競合企業が簡単にまねできることではない」とボリオーロCEOはきっぱり。「この取り組みが、販売されるあらゆるダイヤモンドの原点と調達経路を知る権利があると消費者が考えるきっかけになればいいと思っている。たとえダイヤモンドが倫理的に不透明性を持つものであると思われても、正しい取り組みは可能だということを証明できる。この取り組みは、ジュエリー業界のスタンダードを根本から変えるはずだ」。

 ボリオーロCEOは、ティファニーのこの取り組みは特に若い消費者から反響があるという。「かつて両親がエンゲージメントリングを購入したとき、それは慣習だった。今は、個人がそれを購入するかしないか決断する時代だ。われわれのトレーサビリティーの取り組みに対する価値は絶大だ。なぜなら、それが購入動機になり得るから。トレーサビリティーは多くの顧客がダイヤモンドを購入する際の説得材料になるはずだ」。トレーサブルかつサステナブルに採掘された宝石の需要に関して、ボリオーロCEOは、「オーストラリアではジュエラーはより高いエシカル基準を要求される。中国市場でさえ最近はそれらに対する関心が高まっている。このような消費者の動向は中国やアジア市場で見られており、特に若年層はエシカルなものを購入することへの関心が高い」と話す。

 ティファニーのアニサ・カマドーリ・コスタ(Anisa Kamadoli Costa)=チーフ・サステナビリティ・オフィサーは、「ラフ(原石)からダイヤモンドを調達し自社で加工するということは、トレーサビリティーだけでなく、『ティファニー』のダイヤモンドの工程に携わるコミュニティーに良い影響を与えていることを表す」と話す。ティファニーがトレーサビリティーの取り組みを色石にも適用するかという点に関しては、カマドーリ・コスタは、「ダイヤモンドにビジネスチャンスがあるので、今はそれに注力する。約8割の色石は小さな鉱山から産出されるため、その原産地を知るのは困難であるというのが現実だ」と言う。

 ティファニーのトレーサビリティーの取り組みは、新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンで、より多くの消費者がジュエリーをECで購入するようになった動きに対するものでもある。ボリオーロCEOは、ロックダウン中の消費傾向について「ECにおけるエンゲージメントリングやマリッジリング、ダイヤモンドリングの購入が急速に伸びた。以前は、カップルで店舗に行って選んでいたが、それが不可能になったためだ。ありがたいことに95%の店舗の営業が再開した」と述べている。「一方で、ロックダウン中に購入せず店舗が再開してから購入する顧客もいた。これらの顧客は衝動買いではなく計画的に購入を考えている」。

 ティファニーはLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)による買収の途上にある。7月にLVMHのジャン・ジャック・ギヨニー(Jean Jacques Guiony)=チーフ・フィナンシャル・オフィサーは162億ドル(約1兆7000億円)を投じてのティファニー買収に関する進捗について、約6件の独占禁止法がらみでとん挫しているがどの国かに関しては言及しておらず、「前進しているがいつ成立するかは分からない」とコメントしている。

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