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「繊維の追跡技術がアパレル生産の透明性を変える」 インドのスタートアップ企業トップが語るトレーサブル革命

 インド発のテキスタイルジェネシス(TEXTILEGENESIS)は、あらゆる繊維をトレーサブル(追跡可能)にする技術「ファイバーコインズFibercoins」を開発し、有力力テキスタイルメーカーから注目を集めている。ブロックチェーンの技術を用いて、繊維の製造から販売までの過程を追跡可能にする「ファイバーコインズ」は指紋のような役割を果たし、素材ごとの独自のIDを発行するという。すでにオーストリアの繊維大手レンチンググループ(LENZING GROUP)とも協業し、同社の新技術開発にも携わっている。

 テキスタイルジェネシスは、H&Mファウンデーション(H&M Foundation)が主催するイノベーションコンペ「グローバルチェンジアワード(Global Change Award以下、GCA)」をこの4月に受賞した。アミット・ガウタム(Amit Gautam)創業者にその技術について聞いた。

WWD:なぜ、トレーサビリティーの技術に注目したのか。

アミット・ガウタム創業者(以下、ガウタム):テキスタイルジェネシス創業以前に、サステナブル繊維生産において先導的なレンチング社と協業していた。ブランドやアパレル関係者との顧客会議を続ける中で、ファッション業界におけるセルロース繊維やリサイクルポリエステル、RWS(Responsible Wool Standard、羊と牧草地の福利に関するグローバル基準)などのサステナブル繊維のトレーサビリティーとその証明が決定的 な課題であることが次第に明確になっていった。有力ファッションブランドの大半が、これから3~5年の間に100%サステナブル繊維への切り替えを目標に掲げている。しかしながら、繊維の出所から販売までのトラッキングを行えているのはその5%以下。これを私は“透明性ギャップ(Transparency gap)”と呼んでおり、私たちの提供するトレーサビリティー技術「ファイバーコインズ」を通してこのギャップを埋めたいと考えている。

WWD:サステナビリティを追求するときにはトレーサブルで透明であることをまず実現すべきだといわれているが、それはなぜだと思うか?

ガウタム:衣料品や靴などのファッション製品はシンプルに見えて、実はそのサプライチェーンはグローバル規模であり、長く、しかも非常に断片化されたものだ。そのためバリューチェーンが不透明なものになりやすく、多くのサステナビリティに関する計画では素材、サプライチェーンのいずれにおいても、信用性を高めるためにますます透明性を重視する状況が生まれている。透明性とサステナビリティは相互に深くつながっており、透明性による裏付けがなければ、説得力のあるサステナビリティのストーリーは伝えられない。

有力アパレル・ファッションブランドが次の3~5年で100%サステナブルな繊維への切り替えを目標に掲げているが、衣料品に使用されている繊維のサステナビリティの証明さえできないのに、どうやってこの目標を達成するのか。トレーサビリティーによって裏付けされていなければ、信用性のあるサステナブルな道のりは伝えることができない。

多様なバックグラウンドを持った7人で開発

WWD:開発にかかった期間と、特に大変だったことは?

ガウタム:ベータ版を開発するのに約1年かかった。私たちのチームはファッションやテキスタイル産業、ブロックチェーン技術など多様なバックグラウンドを持った7人の専門家から構成されており、全員でこのプラットフォームを開発している。私たちの最も大きな課題は、この技術をどのようにアパレル産業に導入するかの情報を持ち合わせていなかったことだった。

WWD:「ファイバーコインズ」で、どのようにしてトレーサビリティーを実現するのか。

ガウタム:「ファイバーコインズ」は、アパレルのサプライチェーン全体においてテキスタイル製品の追跡と管理ができる技術だ。“デジタル・ツイン(現実世界のデータを用いてデジタル空間に現実と双子のようなコピー環境を再現する技術)”のようなもので、特定の繊維に対して作り、実製品の物流とともにサプライチェーンを通して転送、追跡できる。繊維内の化学物質やDNAマーカーを検証するためにランダムに実製品のサンプル監査を行い、デジタル上の情報と実際の製品がしっかりとリンクしているかを確認している。

WWD:実用化へのストーリーは?

ガウタム:実用化が可能なだけでなく拡大さえも可能だ。すでにいくつかの市場でテストを成功させ、商業向けのバージョンを今年の後半に導入開始予定だ。これは年間購入モデルとなり、より多くの関係者がこのプラットフォームを導入できるような「サービス」として価値付けようとしている。

WWD:あらゆる素材で可能なのか?

ガウタム:私たちのトレーサビリティー技術には多様な可能性があり、私たちは“テンセル”、モダールなどのセルロース繊維、ウールやカシミアなどの天然素材から、リサイクル合成繊維(ポリエステルやナイロンなど)までを対象としている。

WWD:現在の課題は?

ガウタム:現在のような新型コロナの影響下であっても、透明性とトレーサビリティーが重視されるべきであると信じるサプライチェーンパートナーを得ることだ。

WWD:あなたと同じようにトレーサビリティーを実現する技術で注目している企業とその理由は?

ガウタム:テキスタイル・エクスチェンジ(TEXTILE EXCHANGE)だ。アパレル産業におけるグローバルスタンダード組織であり、オーガニックコットン、RWS、リサイクルポリエステルなどサステナブル繊維の業界スタンダードを採用して、トレーサビリティーの確保に力を入れている。

WWD:他に注目しているサステナブル技術は?

ガウタム:シーチェンジテクノロジー(SEACHANE TECHNOLOGIE)。私たちと同様にGCAの受賞者で、排水から汚泥を取り除き、化学物質排出と温室効果ガスを削減する技術を開発した。

WWD:注目しているファッションブランドは?

ガウタム:「アームドエンジェルス(ARMEDANGELS)」「オールバーズ(ALLBIRDS)」「リフォーメーション(REFORMATION)」。

WWD:新型コロナウィルスはファッション業界にどのような変化をもたらすと思うか。

ガウタム:新型コロナによって欧米では需要が消滅し、アジアのサプライチェーンでは発注の停止・延期が相次ぐなど、ファッション業界は大きな混乱を目の当たりにしている。小売業界ではテコ入れが行われるだろうし、サプライチェーン関係者は効率化とキャッシュフロー管理の推進により注力していくことになるだろう。

アジアの途上国の衣料品生産における数百万の半熟練従事者の生活に直接的な影響が出るため、理想的なシナリオは、すべてのブランドが発注済みのオーダーに責任を持ち、いかなる発注も停止しないことだと思う。

WWD:ポストパンデミックの世界はどんな世界になっていると思う?

ガウタム:私たちはポジティブな側面を見つめたい。人々が人生のより大きな物事の重要性に気づき、必要なもののみ購入し、できるかぎりムダを減らし、自然が回復するよう、継続的につましくあることを信じている。

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