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アラタナ創業者の濱渦氏が「ホテルのD2Cブランド」を起業 すでに10億円を調達

 アラタナ創業者の濱渦伸次氏はこのほど、新たにホテルのD2Cブランド「ノットアホテル(NOT A HOTEL)」を立ち上げる。同名の新会社は4月1日付に設立、起業家で投資家の佐俣アンリ氏の率いるベンチャーキャピタルANRIをリードインベスターに、GMOベンチャーパートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル、個人投資家などからすでに10億円を調達しているという。濱渦氏はアパレルECサイトの制作会社アラタナを2007年に宮崎県で起業し、15年にはスタートトゥデイ(現ZOZO)に売却後、今年3月31日付でZOZOを退社していた。なぜこのタイミングでホテルなのか。決め手は、ZOZO創業者の前澤友作氏からの一言だったという。濱渦氏に聞いた。

WWD:コロナ禍でホテル業などの観光産業は大打撃を受けている。なぜこのタイミングでホテル事業を?

濱渦:ホテルで起業をしようと決めたのは、昨年の年末あたり。昨年9月に前澤(友作ZOZO創業者)さんがZOZOを引退することになってから、僕もなにか新しいことをやりたいと思って、新事業を探し始めた。探すにあたって、日本の人口が少なくなる中でも産業自体が大きくなる分野を考えた。昨年の10月、11月だったかな、前澤さんに相談というか会って食事をしたときに、「起業するなら、かっこいいことじゃなくて好きなことをやったほうがいいよ」と言われ、それが決め手になった。観光産業は21世紀最大の産業になるとも言われ、当時はインバウンドも盛り上がっていて、何より僕自身が旅やホテルが大好きだったので。

WWD:4月の設立のタイミングはコロナ禍の最中。方針の変更は考えなかったのか?

濱渦:ホテルって、僕らがアラタナを創業したころのアパレル産業と似ているんですよ。10年前はアパレルのほとんどが自社ECサイトを持っておらず、業務フローもデジタル化されているとは言いがたかった。でも今はだいぶ変わってますよね?それに比べるとホテル業界って、アパレルに比べてテクノロジーが二週くらい遅れています。利益率は決して高くないのに、予約はほとんどが大手の予約サイト経由で、自社比率は2割以下。それに投資にも無駄が多く、例えば旅館の投資の半分は部屋ではなく共用部に使われていて、宿泊者よりも従業員の方が多い。テクノロジーで無駄を徹底的に省いたD2Cモデルならば、大きな商機がある。

WWD:新たなD2Cモデルなら商機があると?

濱渦:そうです。ブランド名の「NOT A HOTEL」には、そういった意味を込めました。従来のホテルとはまったく違う。予約やチェックインなどはすべてアプリで完結し、部屋に設置したIoT端末でテレビやエアコンの操作、問い合わせなどに対応し、極限までオペレーションにかかるコストを抑える。来年夏頃に8カ所のホテルを開業予定で、1ホテルあたりの部屋数は最大で10室以下、運営人数も2〜3人以下に抑えます。

ファッションブランドとのコラボも

WWD:どんなホテルになる?

濱渦:詳細はまだ言えませんが8つのホテルは、いずれも異なった建築デザイナーと協業し、さまざまなタイプを作ります。故郷の宮崎県や北海道。熱海、那須、あと東京の都心にも1室だけのタイプも。うち一つはファッションブランドとのコラボレーションも水面下で進めています。「NOT A HOTEL」の最大の特徴は初期投資やオペレーションを抑えることで少ない部屋数でもホテルが作れること。例えば都心の店舗やオフィス跡を居抜きでホテルにすることだって可能です。だからこそ、一つの世界観をデザインできるファッションにはとても注目していて、今後も積極的にコラボレーションや提携を行っていきます。

WWD:4月に設立し、すでに10億円を調達。どうやって資金を?

濱渦:当たり前ですが、実際に資金を集め始めたのは前職のZOZOを退社して、会社を設立した4月1日以降です。程なくして緊急事態宣言が発令され、新幹線を使った移動や顔を合わせた打ち合わせなどは一切できなくなりました。投資家との打ち合わせはほとんどがZoomやチャットなどのオンライン。ホテルのロケーションハンティングも現地でフォトグラファーに360度カメラや動画、ドローンを飛ばしてもらって確認しました。全部、まったく問題なかったですね。そもそもNOT A HOTELはオフィスを持っていません。シェアオフィスも借りてませんし、6人の社員がいますが、僕も含め全員ずっとリモートです。この前6月になってようやく全員で顔を合わせました(笑)。

WWD:登記や契約書など印鑑が必要な作業は?

濱渦:それも電子契約サービスの「クラウドサイン」などを使いました。郵便なども基本はすべて電子化していて、それが無理な場合は行政書士の事務所に送ってもらってます。とにかくアセット(資産)はできるだけ持たない。社員10人で上場まで行きたいと思っています。

WWD:今後は?

濱渦:5年で数万室にまで広げたい。スタートは直営のみですが、今後はシステムのみを貸与するリースや運営代行、フランチャイズなどのビジネスモデルをミックスしていく予定です。それもあって部屋に置くタオルやコスメ、シャンプーなどのアメニティは非常に重視していて、今はいろいろな有力繊維企業やコスメ企業と開発している最中です。ホテル業界のデジタルトランスフォーメーションを推し進めることで、ホテル業界の高収益化に貢献したい。予約の開始は早ければ6月ごろの予定です。楽しみにしていてください。