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インターコンチネンタル札幌がラグジュアリーな北海道体験ツアー ウイスキーやワインの奥深さを知る

2025年10月1日に開業したIHGホテルズ&リゾーツの「インターコンチネンタル札幌」が、札幌市内に誕生した外資系ラグジュアリーホテルとして注目を集めている。42平方メートル以上を基本とする客室は全149室。同ブランドとしては北海道初進出で、JR札幌駅からのアクセスの良さから道内観光やビジネス利用の滞在拠点としても期待されている。

札幌にラグジュアリーホテルが進出しなかった背景には、ビジネスと観光が混在する地方都市ゆえの市場特性がある。高価格帯の宿泊費が通用する市場環境が整っておらず、その役割は冬のリゾート地としてインバウンドに人気のニセコが担ってきた。ニセコ地区には、ザ・リッツ・カールトンやパーク ハイアット、ヒルトンなどのラグジュアリーホテルが次々と進出。いわゆるジャパンパウダースノーを求め、長期滞在する外国人旅行客の目的を叶え、需要を取り込むことで世界水準のリゾート地として発展してきた。

ところがインバウンドの回復増加と嗜好の変化により、札幌のホテル市場がいま変貌しつつある。北海道新幹線の延伸やそれに伴うJR札幌駅前の再開発などインフラ整備が進んでいることも大きな要因だ。札幌をハブとした道内観光の需要が大きく見込まれることから、札幌市内ではホテルの新規開業や大型改装が相次いでいる。

訪日客や富裕層が求める「唯一無二の体験」

インターコンチネンタル札幌のベンジャミン・ライトライトゲップ総支配人は、札幌に進出した理由についてこう話す。

「リピーターの訪日客の間では最近、他にはない新たな体験ができる目的地として北海道の人気が高まっている。例えば、雪を見ながらおいしい食も買い物も体験できる都市はアジアではほかにない。また航空路線の拡充により、アクセスが大幅に改善されたことも札幌の人気が上昇している背景といえる」

同ホテルが差別化戦略の一環として打ち出したのが、北海道の自然や文化の魅力を最大限に生かした宿泊者限定の特別体験プログラムだ。「インサイダー パートナーシップ」では、地域の企業や団体と連携し、非公開エリアの見学など地域に根ざした唯一無二の体験を提供する。インターコンチネンタル東京、大阪に続き、札幌でのコラボレーション第1弾としてパートナーに選ばれたのが、近年クラフトスピリッツで評価を高めるウイスキーの「ニセコ蒸溜所」。製造現場や普段非公開の貯蔵庫を見学でき、シークレットバーで特別なテイスティングも体験できるツアーを用意した。

一方、ゲストに合わせた特別なひとときを提供するプログラム「インクレディブル オケージョン」は、インターコンチネンタルブランドが創業以来、大切にしているホスピタリティのひとつ。誕生日や食事会などのプライベートな場でちょっとした驚きや思い出に残る体験をゲストに提供する。ホストの個性や思いを空間演出やおもてなしで表現。ホテルのコンシェルジュが中心になり、ホストとともに特別なイベントをプロデュースする。

「北海道という場所は豊かな物語性と独自の体験価値にあふれている。この恵まれた環境を生かし、これからの数年間で新たな体験や特別なパートナーシップをさらに育て、世界中から訪れるお客様に届けていきたい」と、ベンジャミン総支配人は意欲を見せる。

客室や立地、価格だけでは差別化が難しくなったホテル市場では昨今、特別な体験サービスを強化する潮流がある。とくにラグジュアリーやライフスタイル系ホテルでは「泊まる理由」を体験として提示できるかどうかで競争力が左右される。そこで、インターコンチネンタル札幌が提供する2つのプログラムを実際に体験。“泊まりたくなる理由”を探った。

未公開のウイスキー貯蔵庫とバーに潜入

札幌のホテルからニセコ町にあるニセコ蒸溜所までは、専用車で片道約2時間。世界的なスキー場のある山として有名なニセコアンヌプリの山麓は、前日から降り続く雪のせいで一面の銀世界と化していた。

「えぞ富士」の異名をもつ羊蹄山を望むニセコ蒸溜所は、新潟の銘酒「八海山」で知られる八海醸造グループが2019年に設立。20年12月に建物が竣工し、翌年3月からウイスキーの製造が始まった。敷地内には、ショップとバーを併設する蒸溜所と第1貯蔵庫があり、離れた場所に非公開の第2貯蔵庫がある。

このあたりの12月の気温は寒い日で最高気温がマイナス6℃。豪雪地ならではの上質な水に恵まれているうえ、冷涼な気候と高すぎず低すぎない湿度もウイスキー製造に適しているという。

参加した「インサイダー パートナーシップ」では、製造担当の富原健一氏が施設の概要を説明した。その後、通常の見学ツアーでは立ち入ることのできない製造現場の深部まで案内してくれた。

ウイスキーの製造は、大麦麦芽の粉砕に始まり、仕込み槽で麦汁にした後、発酵槽でもろみをつくり、蒸留を経て原酒が完成する。約4日間の発酵でもろみができるが、ニセコ蒸溜所では、木製の発酵槽を使うことでもろみに複雑な味わいと独特な香味を与えている。さらに、スコットランド製の形の異なる蒸留器で2度蒸留する伝統方式を採用。原酒は、木の樽に詰める際に割り水で60度に調整してから貯蔵熟成される。

「麦芽1トンを使った1回の仕込みでできる原酒は樽2つか3つ分。それを2日に1回のペースで仕込んでいる。ウイスキーの熟成が始まって5年目だが、社長の方針で納得のいくものができてから発売する予定だ」

21年10月からはクラフトジン「オホロ ジン」を発売。ジンは香味成分のボタニカルを浸漬・蒸留して完成させるため、熟成期間が短い。ニセコ蒸溜所では、レモン、オレンジ、ゆず、ライム、グレープフルーツといった5種類の柑橘系の皮に、町内の自社農場で栽培したヤチヤナギとニホンハッカを入れて香りづけしながら蒸留するのが特徴だ。

その「オホロ ジン」が24年に国際的なコンペティションで2つの賞を受賞した。世界一の評価を獲得したことでさらに人気が高まっている。

蒸留現場の次は、第1貯蔵庫の見学へ。現在第1貯蔵庫に約400本、第2貯蔵所に約500本と計約900本の熟成樽を保有する。樽はアメリカ製のバーボン樽のほか、ホワイトオーク樽、シェリー樽など主に5種類を使用し、フレーバーに多様性を持たせているという。

庫内の温度は0~-5℃程度。「天使の分け前」と呼ばれる樽から蒸発したアルコールの香りがほのかに立ち込める。これが夏場の30℃程度になると、蒸発量が増え、アルコール度数が下がるとともに内容量も減る。そういうリスクはあるものの、「ウイスキーは自然の成り行きと土地の風土で育てるという考え方から、エアコンや空調設備を使用せず、外気の温度に任せている」(富原氏)。

ツアーの最後は、一般公開されない第2貯蔵庫へ。併設されたバーで、初出しされた熟成途中のウイスキーの原酒3種類をテイスティングした。約4年熟成されたウイスキーは、樽によってフレーバーが異なる。筆者は強いアルコールは苦手だが、敷地内の井戸から汲み上げたという仕込み水で割り水して香りの変化を味わった。

ウイスキー作りの奥深い世界を堪能できる宿泊者限定の体験ツアー「インサイダー パートナーシップ」は26年1月15日から予約受付をスタートした。ツアーを記念し、インターコンチネンタル札幌の「ノーヴァ バー」では、オホロ ジンをベースにした限定カクテル「フォレストネグローニハイボール」を期間限定で提供される予定だ。

幻のワイン「ドメーヌ・タカヒコ」と北海道の食を堪能

インターコンチネンタル札幌には、2つのレストランがある。ひとつはオールデイダイニングの「オーブラン」、もうひとつはカウンター席でインタラクティブな食事体験ができる「サワカ」。今回のプレス向けの「インクレディブル オケージョン」ではオーブランで特別な食事会が企画され、筆者も参加した。

食事会のホストは余市町に拠点を置くワイナリー「ドメーヌ・タカヒコ」のオーナー・栽培醸造責任者の曽我貴彦氏。ワイン作りの常識を根底から覆したドメーヌ・タカヒコのワインは、世界No.1レストラン、ノーマのワインリストに載り、いまでは発売と同時に完売する人気ぶりだ。入手困難で幻のワインともいわれる「ドメーヌ・タカヒコ」のワインとペアリングする北海道産の食材を使った料理は、レストラン「サワカ」料理長のフェルナンド・ヒモロ氏が腕をふるった。

食事会のテーマは北海道のガストロノミー。自社ワインのPRよりも「北海道の食を世界に発信していくことが大切」と強調した。余市ワインが注目を浴びて以降、「ドメーヌ・タカヒコ」のワイナリーには世界中の食通や三つ星レストラン関係者も訪れる。なかでも彼らが注目しているのが、和食ならではの「うまみ」や「出汁」だ。

「北海道は昆布の産地であり、昆布を中心としたうまみや出汁は、これから日本食を世界に広めていく大きな武器になる。昆布を中心としたうまみとわれわれのワインとのペアリングは非常におもしろい」とし、他のワインとの違いを説明した。

一品目に出されたのは、味噌カマンベールといくらが添えられだし巻き、そしてキャベツのエスプーマとウニの組み合わせが絶品の昆布パウダー入りタルト。モダンな和の料理にペアリングされたのは「KONDOヴィンヤード スパークリング2015」だ。本来、ワインと魚卵は相性が悪いとされているが、二次発酵するスパークリングなら低亜硫酸のため、魚卵にも合うという。

「僕が北海道に興味を持ったのはスパークリングがきっかけ。当時、余市はフランスのシャンパーニュに近い気候で、スパークリングの町として面白いんじゃないかと思った。シャンパーニュと違い、北海道は火山性土壌ではあるが、ピノ・ノワールを使うことでうまみを表現できる。海外のワイン愛好家は、シャンパーニュのコピーではなく、日本独特の味わいをその土地ならではの個性として価値を見出している」と、余市ワイン人気の背景を話す。

日本のワインは土壌や水質の特性上、軟らかいのが特徴で、長期間の熟成を待たずに早く飲める点も世界からもてはやされている理由だという。

メーンディッシュには、旭川のブランド牛「松ノ山牛」のイチボ肉を使用した。そこに赤しそと粒マスタードを発酵させたものと、千歳産舞茸と十勝産百合根のグリル、利尻昆布を使い、有機栽培の黒ニンニクをピューレにしたものが添えられた。ペアリングのワインは「ドメーヌ・タカヒコ」のフラッグシップワイン「ナナ・ツ・モリ2016」。「このワインの香りのゴールは“森”。神社仏閣の裏山のような香り、松茸のような香りをめざしている。味わいは土瓶蒸しのような、薄いけれども膨らみがあって余韻の長い味わいが目標だ」

ワイン談義は、独自の哲学に始まり、余市ワインを持続させるための研修生育成制度や余市町の将来にまで及んだ。

曽我氏のワイン作りはちょっと特殊だ。「農家さんが真似できない作り方はしたくないので、シンプルな方法でワインを作ることにこだわっている」。例えば、収穫したぶどうはそのままポリタンクに入れ、選果や除梗などの手間をかけない。働く時間も朝8時から夕方5時までとし、夏は約2週間、3月からは1か月の休暇を取る。ワイン作りが特別な仕事ではないこと、農業に対するマイナスのイメージを払拭するためだ。

「僕のゴールは、子供がワイナリーを継ぎたい、この町に残りたいと言ってくれること。そして余市町を北海道の食のまちとして発展させること」と曽我氏。

余市町はニセコと札幌の中間地点にあり、今後、北海道新幹線が札幌まで延伸すれば、国内外からの観光客でにぎわうことが見込まれる。余市ワインのブランド力はその大きな原動力になるだろう。

今回、インターコンチネンタル札幌で体験したふたつの特別プログラムは、通常の観光では辿り着けない北海道の新たな魅力と可能性を体感できる至極のツアーだった。同時に、“泊まりたくホテル“の条件とは、施設の豪華さや充実度以上に、地域とのつながりや体験価値にどれだけ重きを置き、真剣に取り組んでいるかどうかだということを実感した。

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