旅の質が重視される今、気分や価値観に添い、心から満足できるサティスファクション パフォーマンス=サティパのいいホテルが求められている。日本を代表する箱根温泉の老舗宿も日々進化。歴史ある箱根強羅に佇む湯宿「ラフォーレ箱根強羅 湯の棲」の新館「ラフォーレ箱根強羅 湯の棲 綾館(あやのかん)」はレトロなのにモダン、洗練されているのに安心感に包まれた箱根強羅滞在を約束する。
歴史ある温泉地での湯あみを、こころゆくまで楽しむ懐かしくて新しい宿
「ラフォーレ箱根強羅 湯の棲」の新館として2024年に開業した「ラフォーレ箱根強羅 湯の棲 綾館」はレトロなのにモダンな宿。ほっとする安心感と、非日常さえ感じる洗練さを両立した、温泉宿と貸別荘のいいとこどりのような機能を持つ。例えば大浴場は「湯の棲(本館)」の温泉へ。露天風呂では新緑や紅葉、雪景色など、四季折々の景色を味わえる。サウナでじっくりとととのうのもいい。箱根火山の噴煙地として有名な大涌谷を源泉とする温泉は、硫黄、カルシウムを含む硫酸塩泉で、美肌、動脈硬化の予防などが期待できる力強い温泉。滞在中は何度でも通えるので、自分のペースで湯あみを楽しもう。
社内の独自の試験をパスした「温泉アドバイザー」の資格を持つスタッフが数人所属しているので、気軽に効果的な入浴方法について聞いてみるのもおすすめ。ここ箱根強羅はもちろん、伊東、那須、修善寺など各施設の泉質を熟知しているので、悩み別の入浴法や滞在の楽しみ方を提案してくれて頼りになる。毎週末、土日の夕方には「温泉アドバイザープレゼンツ ONSENレクチャー」が開催され、宿泊者は無料で参加できるのだ。
箱根強羅の湯は、その昔、鹿や猿が自噴する硫酸塩泉の湯に浸かって傷を癒していたという伝説が残るほど、古くから重宝されてきた力強いお湯。源泉はかなり強い酸性で、アストリンゼントという作用によって肌をひきしめ、すっきりさせてくれる効果が期待される。湯治気分でゆったりと過ごすのがいい。
新館の「綾館」には各客室に温泉露天風呂を備えている。ゆったりとした大浴場と、誰にも邪魔されずに「個」の時間を過ごせる部屋の露天風呂の両方を楽しめるのがうれしい。
どこか懐かしい昭和の名作住宅のような空間にほっこり
「ラフォーレ原宿強羅 湯の棲」は昭和の名作住宅のような心が落ち着く空間。風合いのあるレトロなタイルの壁など、なんだか懐かしい気持ちになる。いわゆる温泉旅館のように入り口では履物は靴箱におさめ、素足で歩く。
開業したのは1984年だが、2014年にリニューアルし、より快適になった。ロビー前には新緑に包まれた囲炉裏リビングがあり、到着後にはウェルカムドリンクや、食後にはコーヒーなどを飲みながらくつろぐ。このゆるやかな時間がなんとも贅沢だ。
箱根外輪山の山並みを一望できる「ダイニング旬菜蔵」では暮れゆく山々を見ながらディナーを。和のぬくもりにスタイリッシュな洋が融合した「和‐なごみ‐Fusion」は、お箸でいただけるフレンチという、これもまた斬新なのに安心感のあるコースだ。魚料理は「真鯛と蛤のナージュ 桜と地酒箱根山の香り」、肉料理は「国産牛フィレ肉の網焼き 季節の温野菜 御殿場天野醬油と玉葱の和風ソース」などフレンチに和の食材、調味料をプラスしたほっとできる味。最後は炊き込みご飯と和で〆る。出し汁でお茶漬けにしていただくこともできる。優しい!これはあらゆる世代が楽しめ、ワインでも日本酒でも、さまざまなお酒とのペアリングを楽しめるのもいい。デザートも「足柄茶豆乳プリンと桜フレーバーのジュレ」と和テイスト。季節に合わせた食材を生かし、目でも楽しませるプレゼンテーションとなっている。
朝は和のお惣菜が並ぶブッフェスタイル。好きなものを好きなだけ選べる気楽さがいい。もちろん目の前に広がる青い山々もごちそうのひとつだ。朝食後には朝風呂も堪能した。
立食で40人、着席で36人のキャパがあるレストランの個室があるなど、社内旅行など団体旅行にも対応できる古き良き温泉宿という面も。このほどよくレトロなゆるやかさが心地いいのだ。
スタイリッシュで心安らぐ伐採樹木や石材をアップサイクルした綾館
去年オープンした「ラフォーレ箱根強羅 綾館」にはまた違った穏やかさがある。それは天然素材に囲まれたオーガニックなデザイン。世界3大デザイン賞とされる「iFデザインアワード2025」で約1万1000件にのぼる応募デザインの中から、インテリアアーキテクチュア、ホスピタリティインテリアの計2部門を受賞した。インテリアデザイナーの座間望氏設計のもと、地域とともに長い年月を刻んできた植栽を残しつつ、伐採樹木や箱根火山由来の石材をアップサイクルし、土地の記憶の再現を試みたという。“影”にフォーカスした照明設計も心安らぐ。洗練された上質なデザインとオーガニックな心地よさが見事に調和している。目に入る全てのものが優しいトーンでノイズとなるものがない。五感で気持ちが安らぐのだ。
綾館は22室それぞれが独立した貸別荘というイメージ。部屋の中にも温泉露天風呂があるので、滞在中、いつ入浴するのも自由。ずっとこもって自分たちだけの時間を過ごせそうだ。
私は滞在中にリモート会議が入ってしまったのだが、こんな気持ち的に余裕があるリモート会議は初めてだった。幸か不幸か、デスクとして使ったテーブルも広く、資料を広げながらPCに向かう作業もさくさくと進み、せっかくのリゾートなのに、仕事にも没頭してしまった。文豪が温泉地で湯治しつつ、原稿を執筆するように、長逗留したくなる。別荘暮らしを体感できるこの宿に1泊だけなのはもったいない。ああ、いつかはそんな優雅な「原稿合宿」をしたいものだ。
歴史ある温泉地、箱根のホテルには感度の高いインバウンド客も殺到
新宿から小田急電鉄のロマンスカーで「箱根湯本」駅まで2時間弱。絶景の箱根鉄道の終点「強羅」からさらに箱根登山ケーブルカーで3駅の「中強羅」から徒歩5分の距離なのだが、箱根はインバウンド客でごった返していた。列車内もほぼ海外勢。ここが日本だということを忘れてしまいそうだ。強羅の駅は降車してからもなかなか改札を抜けられないほどの混雑。ただその奥の「中強羅」駅までいくと、静謐な空気が流れる。強羅駅のにぎわいと、中強羅エリアのプライベート感を同時に体感できるのも「ラフォーレ箱根強羅」の面白さかもしれない。インバウンドの旅行者が増えたおかげか、駅周辺にもスタイリッシュなカフェやバルが増えていた。
箱根には小涌谷や各美術館など見ごたえのあるスポットの多い観光地なのに、あまりの心地よさに一歩も外に出ず、こもってしまった。それもまたよし。しっかりエネルギーチャージした後に、アクティブに回りたくなったら、無料送迎バスを活用するのもいい。強羅駅行きは1日に9時半から5便、早雲山駅行きは10時に1便運行しているので、観光も気軽にできる。
これからの季節、箱根はますます緑輝く。今こそ、ちょっと懐かしいあの温泉地の進化を見届けに、足を運ぶべきかもしれない。