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閉店後の渋谷パルコにロンドンバス! 36種類の職業を表現した「ミントデザインズ」の無観客ショー

 勝井北斗と八木奈央によるファッションブランド「ミントデザインズ(MINTDESIGNS)」は、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO 以下、RFWT)」の中止を受けて、ショーを開催予定だった3月21日の午後9時45分に無観客ショーの動画を配信した。会場は東京・渋谷パルコ1階の歩行者専用通路であるナカシブ通り。渋谷パルコにはかつて「ミントデザインズ」の1号店があり、現在も小規模な店舗が入るブランドのホームと言える場所。さらに2007年にも、同館にあったパルコブックセンター内でショーを行ったことがあるゆかりの地でもある。今回は貸し切りの真っ赤なロンドンバスを歩行者専用通路に停車させて、閉店後の通路をランウエイにモデルたちが歩いた。

コレクションの出発点は
ロンドンの多様な人々

 今季のテーマは「Route 88(88番線)」。勝井と八木は学生時代を過ごしたロンドンのバスに乗る多様な乗客を思い浮かべてデザインをしたという。2人は昨年、「ミントデザインズ」を着用したさまざまな職種の人々を撮影する10年越しのプロジェクト「ハッピー ピープル(happy people)」の制作をロンドンで行った。母校であるセント・マーチン美術大学の講師やギャラリスト、画家、バーテンダーなどさまざまな職業に就く人々と触れ合って撮影を行ったことが、今季のコレクションの出発点となったという。

36種類の職業に就く人を
全36ルックで表現

 ショーに登場した36ルックのそれぞれには、バスの運転手やバスガイド、庭師、花屋の店員、学芸員、ファッション学生など職業のイメージがつけられていた。その彼ら彼女たちが夜遊びをしに行くという設定でスタイリストの入江陽子がコーディネートを組んだという。ショー前に演出家から「それぞれの職業を意識したポーズをしてほしい」と告げられると、モデルたちの顔に笑顔が溢れて各自がその役になり切って演技するなど、にぎやかな雰囲気に包まれていた。

久しぶりの男性モデルが登場
“初めてメンズウエアとしてデザイン”

 今季は久しぶりに男性モデルを採用した。「以前もコレクションでメンズモデルにユニセックスのウエアを着せたことがあったが、今回はメンズウエアとしてデザインしたものを発表した」という。ジャケットやパーカなどはメンズウエアのサイズを用意し、女性も着用できるようにユニセックスで提案。また、インスタグラム上で行ったモデルの一般公募から選ばれた3人も登場した。ファッション学生風のルックを着用したモデルのRISEはプライベートでも現役のファッションの専門学生で、今回が初めてのランウエイデビューだったという。

渋谷パルコへ出発進行!
バスの乗客となったモデルたち

 ショーのバックステージは、会場の渋谷パルコではなく表参道にある青山スタジオだった。モデルたちは資生堂チームによるメイクを済ませて、着替えを終えるとロンドンバスに乗って表参道から渋谷パルコへと向かった。今季のウエアは、古いロンドンの地図やバスをモチーフにしたプリントやスカーフが特徴的。“MINTDESIGNS”のロゴが入ったロンドン地下鉄のマーク風のバッジなども合わせている。

渋谷パルコでのショーを続行した
デザイナー2人の思い

 もともと使用する予定だった渋谷パルコでのショーを敢行し、「無観客ということ以外は変更なし」というが、「映像では見えない部分も多いため、映画のようなストーリー仕立てにして強い印象を残せるように工夫した」と勝井デザイナー。モデルがバスに乗り込む姿や車内で過ごすシーンを撮影し、プロローグとして動画に記録した。

 八木デザイナーは「本当は生で見てほしかった」と明かし、「渋谷パルコに突然バスが入ってきてファッションショーが始まったら、一般の人にも楽しんでもらえたと思う。渋谷パルコはこんな社会状況でなければ、外国人観光客や幅広い年齢層の人が集まる場所。今回はメンズも含めて多種多様な方に向けた服を作ったので、観客を入れることがかなわなかったのは残念だった」と悔しさをにじませる。

 新型コロナウイルスの影響でイベントの自粛ムードが続く中、「RFWT」の中止でもさまざまなブランドが創意工夫とともに新たな表現方法を見出している。18年目の「ミントデザインズ」は、東京のデザイナーズブランドの中でもベテランで、今回が37回目のコレクションだった。デザイナーの2人は、バックステージやバス、会場間を移動するイレギュラーな段取りでも普段と変わらない様子で取材にも対応し、安定したコレクションを披露していた。無観客でも“今できること”を見極めて、明るく豪華なショーを東京で披露する姿は頼もしかった。

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