ファッション
連載 コレクション日記

帰ってきたメンズコレドタバタ日記Vol.10 三浦春馬&森星が「ポール・スミス」50周年をお祝い 「アクネ」のメンズが見られない!?

 1月19日、晴れ。天候に恵まれたパリメンズも、いよいよ今日が最終日。例年この日は、「もう終わっちゃうのか~」と「やっと終わるのか~」というアンビバレントな気持ちが交互に訪れる穏やかな日曜日です。

10:40 ランバン

 さぁ、最終日のトップは「ランバン(LANVIN)」。「ロエベ(LOEWE)」でジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)のもとメンズウエア・デザイン・ディレクターを務めたブルーノ・シアレッリ(Bruno Sialelli)のメンズランウエイも2回目になりました。会場は、パリ市外(苦笑)。日曜日で渋滞こそないものの、疲れたカラダには堪えます。

 コレクションからは、まだまだ“ジョナサン臭”が漂います。出自ゆえニオイをゼロにする必要はないかと思いますが、ロング丈のジャケット、独特なシルエットのパンツ、リブ編みのニットで作るラペル、違和感を覚えるカラーコンビネーション、キッチュなアクセサリーのすべてが揃ってしまうと、どうしても既視感に繋がってしまうのは否めないところ。2日前に「ロエベ」、4日前に「JW アンダーソン」のショーを見ているので、尚更です。

 子ども服から大きくなった「ランバン」にとって、“キッチュ(ちょっと奇抜)”なムードは大事かもしれません。でもメンズのセットアップやウィメンズのドレスなどを見る限り、ブルーノは、同じく子ども服に欠かせない“イノセント(無垢)”なムードの表現も上手みたい。次は、そちらを強く意識して欲しいなぁ、と思うのです。

12:10 クレイグ グリーン

 お次は、ロンドンメンズから移籍した「クレイグ グリーン(CRAIG GREEN)」。「コレは洋服?それともアート?」と唸っちゃうクリエイションの持ち主です。

 今回も、終盤4ルックには度肝を抜かれます。完全にロボットです(笑)。「ワレワレハクレイググリーンナノダ」。そんなデジタル音が聞こえてきそう(笑)。細部を見ると、日除け用のブラインドが洋服の骨組みを担っています。奇想天外ではありますが、このあたりは「クレイグ グリーン」らしい、さまざまが繋がって構成される万物をシンボリックに表現するコレクションピースです。

 進化が際立っていたのは、そんなアイデアを希釈してリアルクローズに落とし込んだ前半のパートでした。アイデアは最後のコレクションピース同様、万物、この場合は「パーツ」と呼ぶのがピッタリの小さな布の組み合わせ。けれどその一個一個が、白いシャツ生地やダウン、パラフィン、サテンなどで作られており、「あぁ、着られそうだ」と思わせるのです。キャンバスに見立てた純白のコットンに大きな花を描き、それをイーゼルに立てかけるかのようにボディに貼り付けたワンピースは、秀逸な美しさでした。拍手喝采。パリに移って、大正解です。

14:00 ダンヒル

 パリのシンボル、グラン・パレに移動して「ダンヒル(DUNHILL)」へ。センス抜群のマーク・ウェストン(Mark Weston)による「ダンヒル」は、あくまでリアルクローズながら、ドラマティックな要素をひと匙。しかも、コレクションピースも店頭でしっかり売ろうという気概に溢れるステキブランドです。

 今シーズンは、ピカピカに光るパテントレザーのパンツを軸に、ボックスシルエットのジャケットやオーバーサイズのコートを合わせ、シルクサテンのストールを首にキュッと巻きつけます。これだけ正統派のエレガンスだと、正直ちょっと気疲れ・着疲れしてしまいそうですが、オーバーサイズだから大丈夫かな?

16:30 ポール・スミス

 お次は、なんとブランド創立50周年の「ポール・スミス(PAUL SMITH)」!!半世紀、しかも創業デザイナーが今も現役。加えてインディペンデントというのは、本当にたいしたものです。ショーの前には、日本人アンバサダーの三浦春馬さんと、森星ちゃんを撮影。2人はそれぞれ、ジャケットの着こなしが対照的で、写真に収まる姿もバラバラ。「ジャケットって、個性的に着こなせるし、個性的に振る舞えるモノなんだなぁ」なんて思います。

 ショーは、50年を振り返るムービーからスタート。うまく撮影できないアングルだったのが悔やまれます。コレクションは、近年トップラインでイメージ発信を強化する、大人カラーのセットアップがメーン。最近は、英国紳士もノーネクタイ。タートルネックのトップスや、ポールさん手描きのロゴを拡大プリントしたシャツなどを合わせます。終盤は、美しきスカイブルー。50年経っても明日のため、未来のために空を見つめているのかな?ベリー・エモーショナルです。

17:30 アンブッシュ

 お次は「アンブッシュ(AMBUSH)」。先日、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」などを擁するニューガーズグループ(NEW GURADS GROUP) が買収というビッグニュースが飛び込んだのは、記憶に新しいところです(詳細は、コチラ)。

 展示会場に行くと、ウエアの提案、メチャクチャ増えています。きっと次は、バッグやシューズですね。

 「カントリーサイド」と銘打ったコレクションは、作務衣や長着、市松模様など、日本の伝統文化とストリートを融合。着物合わせのMA-1(風)がベリークールです。ニューガーズ入りを決めた理由と今後のビジョンについて、日本に帰ったらVERBALさんに取材したい旨を伝えつつ、YOONさんには「ディオール(DIOR)」のシルバー&パールジュエリーが素晴らしかったこともお伝えして、失礼しました。

18:30 アクネ

 次はルーブル美術館で「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」。今回は同じ会場、同じ時間に2020-21年秋冬のメンズとウィメンズを同時に発表。でもランウエイは分かれていて、2つを同時に見ることはできません(苦笑)。「Why~、なぜに(by 矢沢永吉)」状態とはこのコト。なぜ、一緒に見られるようにしないのか?ナゾではありますが、「アクネ」っぽいカンジでもあるので、仕方なしに僕はウィメンズ、後輩オーツカはメンズに分かれ、会場入りです。

 会場は、こんなカンジ。中央に大きな壁がそびえ立ち、メンズ側からはウィメンズを、ウィメンズ側からはメンズを見ることができません。唯一、天井の鏡越しには、チラッと見えるのかな?

 ウィメンズは、タペストリーのように肉厚の生地や、洗いをかけたベルベットなどで作る、大人色のボディコンドレスが主軸。袖や裾はフレアでデカダン、退廃的なムードが漂います。

 一方のメンズは、どうだったんでしょう?あ、こんなカンジか。結構違ったんですね(笑)。

17:30 「1017 アリックス 9SM」

「1017 アリックス 9SM」のショー会場。パリメンズのフィナーレにこの混雑。マジでカラダにこたえます(笑)。

 さぁ、パリメンズのラストは、「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM)」。会場は、ご覧の大混雑です。この手のブランドは毎回こんなカンジなので馴れっこですが、最後の最後にこの人混みは、実にキツい(笑)!!もみくちゃになって、会場入りです。

 コレクションは、正統派のフォーマル。「ちゃんと着る」価値観を提案した20-21年秋冬メンズを象徴するかのようでした。「アリックス」でタイドアップなのです。

 正直、皆が皆フォーマルを提案しなくて良いのでは?と思います。でもコレができないと、メンズブランドとして長生きできないのも分かっています。僕自身も、スーツの美しさをブランドの評価基準の1つにしています。でも働き方が自由になってリモートワークが増える世の中、スーツはどこまでメンズの中心であり続けるのでしょう?需要は再び、盛り上がるなんてコトあるのでしょうか?

 ショーのあとは、そんなことを考えながらホテルに戻りました。これから半年、みなさんと一緒にじっくり考え、悩み、アクションしていきたいと思います。

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