米小売最大手のウォルマート(WALMART)は、ダグ・マクミロン(Doug McMillon)社長兼最高経営責任者(CEO)が2026年1月31日付で退任することを発表した。後任には、ジョン・ファーナー(John Furner)=ウォルマート米国事業社長兼CEOが2月1日付で就任する。
なお、マクミロン社長兼CEOは26年6月頃に開催予定の株主総会まで取締役会に在籍するほか、業務の円滑な引き継ぎのため、27年1月末までファーナー新社長兼CEOのアドバイザーとして社に残るという。
いずれも時給制の販売職からスタート
マクミロン社長兼CEOは、米テネシー州生まれの59歳。1984年、高校時代の夏休みに時給制の販売員としてウォルマートで働いたことが縁で、アーカンソー大学を卒業し、タルサ大学でMBAを取得した後にウォルマートに入社。さまざまな商品のバイヤーやマーチャンダイジングを経験し、複数の要職を経て、2014年にCEOに就任した。アマゾン(AMAZON)が市場を席巻する中、16年には米EC企業ジェット・ドットコム(JET.COM)の買収を先導。33億ドル(約5115億円)という高額な取引であることから当時は社内に反対意見も見られたが、ウォルマートのEC戦略を競合に先駆けて強化したことが後に高く評価された。なお、ウォルマート本体のEC事業が成長したことを受け、ジェット・ドットコム事業は20年に終了している。その後も販売システムやサプライチェーンのデジタル化を推し進め、従来の実店舗メーンの業態からオムニチャネル化を実現したほか、従業員の福利厚生の拡充やサステナビリティの推進に尽力。同氏の任期中に業績も伸びており、就任当時の14年と比べ、24年の売上高は43%増の6810億ドル(約105兆円)。
ファーナー新社長兼CEOは、米アーカンソー州生まれの51歳。やはり学生時代にウォルマートで時給制の販売員として働き、アーカンソー大学および同ビジネススクールを卒業後にウォルマートに入社した。地域マネージャーやバイヤー、調達部門のグローバル・バイス・プレジデントなどを経て、17年に傘下の会員制スーパー、サムズクラブ(SAM'S CLUB)のCEOに就任。19年11月から現職。
会長およびCEOらのコメント
グレッグ・ペナー(Greg Penner)会長は、「比類のないリーダーシップでウォルマートを導いてくれたダグに、取締役会を代表して深く感謝する。彼は福利厚生を拡充するなど従業員に投資し、ECやデジタル化を推進して包括的な変革を実行したことで、力強く持続的な成長を実現した。後任のジョンは、ウォルマートのあらゆる事業に精通しており、当社の価値観を守りつつ素晴らしい成果を上げてきた。次の段階の成長および変革をけん引するリーダーとして適任だ」と語った。
マクミロン社長兼CEOは、「ウォルマートのCEOを務められたことを大変光栄に思っており、その機会を与えてくれた取締役会と(創業一族の)ウォルトン家に心から感謝する。従業員が成し遂げてくれたことの数々を誇らしく思うと同時に、彼らの顧客や互いへのコミットメント、コミュニティーへの貢献に深く感謝している。ジョンとは20年以上にわたって仕事をしており、彼の会社や従業員への愛情が本物であることはよく知っている。彼は商人であり、イノベーターであり、起業家であり、リーダーだ。ウォルマートのカルチャーや従業員へのコミットメント、またその好奇心とデジタル分野への知見によって、AIを活用して変化していく当社を次の段階へと導いてくれるだろう」と語った。
ファーナー新社長兼CEOは、「取締役会とウォルトン家が私を信頼し、私や多くの人々の人生を形作ったウォルマートを託してくれたことを心から光栄に思う。また、ダグが会社の未来のために築き上げてくれた堅牢な土台はもちろん、そのリーダーシップとメンターシップにも深く感謝している。イノベーションとAIを燃料として発展する新時代を迎えるが、当社のパーパスと従業員が引き続きその中心にあることは言うまでもない。今後も顧客に仕え、従業員を支え、私たちのホームであるコミュニティーの強化に尽力していく」と述べた。
ウォルマートは現在も創業家が過半数株式を保有
ウォルマートは、サム・ウォルトン(Sam Walton)創業者が1950年にアーカンソー州に開いた雑貨店を前身として、62年に1号店をオープン。低価格を武器に地方で急成長し、70年に上場。競合の買収などによって80年代に全米規模となり、90年代初頭に米国最大の小売りとなった。2024年の売上高は前述のとおり6810億ドル(約105兆円)、従業員数はおよそ210万人というマンモス企業だが、現在でも創業一族のウォルトン家が過半数株式を保有している。なお、ペナー会長の妻はウォルトン創業者の孫娘。