ファッション
連載 ヒキタミワの水玉上海 第14回

中国のオタクの祭典「ビリビリワールド2025」、プロのメイク視点でレポート【ヒキタミワの水玉上海】

1993年から上海在住のライターでメイクアップアーティストでもあるヒキタミワさんの連載「水玉上海」は、ファッションやビューティの最新トレンドや人気のグルメ&ライフスタイル情報をベテランの業界人目線でお届けします。今回は中国最大のオタクの祭典「ビリビリワールド 2025」について。抽選のみの入場で3日間で40万人を集める同イベントを、プロのメイクアップアーティスト目線でリポートします。

3日間で抽選で選ばれた40万人が来場
会場は東京ビッグサイトの2.5倍

日本のアニメ制作大手アニプレックスの中国子会社の幹部の女性のメイクをするという仕事をいただき、アニメ・カルチャーの祭典「ビリビリワールド(Bilibili World) 2025」(上海)に参加するチャンスを得た。このイベントは、中国の動画配信プラットフォーム「ビリビリ(Bilibili)」が主催する大規模な複合型エンターテインメント展示会である。7月11〜13日の3日間にわたって開催され、合計来場者数は40万人。会場面積は東京ビックサイトの2.5倍との試算もあり。1日目は全体の約30%、2日目は約50%、最終日は約20%の来場者を集めた。この40万人は事前抽選で選ばれた人数であり、もし人数制限がなければ100万人を超えていた可能性もあると関係者は述べる。それだけ人気の高いイベントに参加できた私はとてもラッキーだ。

「Bilibili」は2009年に設立され、ACG(アニメ・コミック・ゲーム)文化を中心とした動画配信サービスとして成長してきた。動画上に弾幕コメントを流す独自機能が特徴で、ユーザー参加型の創作文化を形成している。現在は動画・ライブ配信にとどまらず、ゲーム、アニメ制作、アニソンやゲーム音楽を中心としたミュージックライブ、EC、教育、テクノロジーなど多角的な事業を展開しており、若年層を中心に強い影響力を持つ。アクティブユーザー数は3億人を超えるとされる。

アニメ・マンガだけでなく
国内外の一流ブランドも出展

今回のイベント会場には、アニメやゲーム関連企業だけでなく、製菓メーカーの「上好佳(シャンハオジャー)」や、中国のテックジャイアンツ、国産EVブランド、文具メイカーのDele、宝飾大手の周大福(ジョーダーフー、日本語読み:しゅうたいふく)、ディズニーやソニーピクチャーズ、マーベルまで出展しており、ジャンルを超えた企業が一堂に会していた。一流企業含む数百以上の出展企業の幅広さに加え、物販や限定グッズの販売、抽選企画、スタンプラリー、オフィシャルコスプレーヤーとの撮影会、新しいゲームタイトルの試遊会など、会場限定のコンテンツも豊富に用意されており、また各ホールにはライブ(直播)ステージが設置されており、会場は終始大勢の来場者と招待メディアで混雑していた。どこを見ても人、人、人。来場者たちは人混みをかき分けながら、それぞれの目的地へと進んでいた。

私もここぞとばかりに列に並び、キャラクターとの撮影を楽しみ、企業ブースではキャラクター入りの大型バッグやお菓子など、いくつかの配布グッズも手に入れ、すっかりこのイベントを満喫してしまった。

クオリティーの高い
麗しきコスプレイヤーたち

会場を歩いていると、そうしたにぎわいの中に混じって、完成度の高い衣装に身を包んだコスプレイヤーの姿も多く見かけた。アニメに詳しくない私でも、誰がどのキャラクターかはわからずとも、その再現度の高さには目を引かれた。彼らは「ビリビリワールド」が提供するフリースペースで自撮りや動画配信を行ったり、専属のカメラマンとともに撮影をしながら会場内を回っていた。また会場の至るとこで、ACGコミュニティによる集まりや新しい出会いの場と化していることが印象的だった。

このイベントの大きな見どころは、ARやプロジェクションマッピング、音声認識、センサー技術など、最先端テクノロジーを活用したインタラクティブな展示だ。仮想空間と連動した体験型ブースや、リアルタイム操作が可能なデモンストレーションを展開する企業も多く、来場者は技術を通じて自然とイベントに巻き込まれていくような感覚を楽しんでいた。誰もが夢中になって体験に没頭する様子が印象的だった。私もソニーのブースで、「Fate/Grand Order」の世界観をテーマにした新しいゲーム体験に参加。設定は「過去に時間旅行して人類絶滅を防ぐ」というもので、指示された位置に立ち、コマンド通りのポーズを取ると足元が振動(Sonyが開発するHaptics Technology)し、まるで荒野で戦っているかのような臨場感と没入感を同時に味わうことができた。

「ビリビリワールド 2025」は、アニメやゲームのイベントにとどまらず、最新テクノロジーとユーザー体験を融合させた展示が多数揃い、アミューズメントパークにいる以上に誰もが楽しめる構成となっており、人気の高さとアニメやゲームの世界観を実感することができた。

プロのメイクアップアーティストから見た「コスプレ」メイク

最後に私目線で、今回のイベントで特筆したいことを2つ。1つ目は、会場内をスーツケースに“跨って”移動する人々の姿だ。最初は目を疑ったが、よく見るとそれは「自動走行型」のスーツケースだった。多くの来場者がコスプレ用の荷物を詰めたスーツケースを“引いて”移動していたが、一部の来場者はまるで小型の乗り物のようにスーツケースに乗り、スムーズに会場を滑走していた。最先端の個人移動手段がACGイベントの現場に自然に溶け込んでいて、未来の様子を見た気がした。もう1つは、コスプレイヤーの肌はほぼ100%マット仕上げだったということ。世間ではこんなに水光肌が流行っているのに、生身の人間さを必要としない二次元の世界では「ツヤゼロ」という事実!テクノロジーや来客数の多さはもちろんだが、これら2つにかなりの衝撃を受けたのだった。

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