フォーカス

「おっぱい、ブラで隠しちゃダメですか?」 久しぶりのミラノ・コレクション取材で考える

 数年ぶりにミラノのウィメンズ・コレクションを取材すると、驚くことがイロイロあります。会場周辺のインスタグラマーの数から、すっかり様変わりしたフロントローの面々、予想以上に多かった市街の「スターバックス(STARBUCKS)」までさまざまですが、その中の1つに「こんなに、おっぱい見えたっけ?」というのがあります。

 発表しているのは、2020年春夏コレクション。暑い時期に着るコレクションですから生地が薄くなるのは当然で、ランウエイにはオーガンジーやシフォンなどのシースルー素材があふれます。そして、時代はリラックス。結果、Vネックが深くなったり、シルエットがちょっぴり大きくなったり。するとモデルが歩くたび、バスト周辺の生地は揺れ、不意におっぱいが見えるんです。フィッティングの問題と信じたいところですが、明らかにドレスのデコルテラインが下過ぎて、そもそもおっぱいを隠しきれていないドレスも出てきます。そんな時、ふと思うのです。

 「おっぱい、そろそろ隠してあげても良くないですか?」と。

 ショー会場を訪れるゲストは、そのほとんどが洋服に興味・関心を抱いているワケで、正直、モデルがブラを身につけていたって、誰も気にしないと思います。パーソナルな感想ではありますが、「アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」のコレクションでは、今をときめく、僕も大好きなカイア・ガーバー(Kaia Gerber)のおっぱいが見えたのですが、「カイアのおっぱい(喜)!!」とはならず、「カイアのおっぱい(驚)……」というのが正直な感想でした。おっぱいが見えることが、プラスに寄与することはありません。

 しかも世の中にはヌーブラ的な、洋服にほとんど影響を与えないブラジャーがたくさんあるワケで、今時「ノーブラじゃないと、洋服が美しく見えない」は、通用しない言い訳だと思うのです。

 確かにオープンバック、背中がバックリ開いたドレスの場合、ブラジャーのヒモは“余計なモノ”かもしれませんが、例えばニューヨークブランドの「セルフ-ポートレート(SELF-PORTRAIT)」は、オープンバックのトップスにストラップを取り付け、ブラジャーのヒモを隠したり、それをデザインの1つとして取り入れちゃったりの工夫を採用することで「ブラジャーをつけても問題ない」洋服に昇華しています。ブラジャーもデザイナーも進化し続けているのです。もはや「ブラジャーがあると、キレイじゃない」なんて状況ではないでしょう?

 今回、特におっぱいがたくさん見えたのは、「ブルマリン(BLUMARINE)」のランウエイショーでした。イタリアで長年、大人気のブランド。ショーは満員御礼、スタンディングもたくさん、という空間です。そこに送り出されてウォーキングしている間、会場にいる数百人の視線が一斉に注がれる中で、おっぱいが見え続けているモデルの気持ちは、どうなんでしょうか?アンダー20、ティーンも数多いモデルの世界です。「自分だったら?」と考えると正直、彼女たちの胸元は直視できません。

 モデルには、「おっぱいが見える洋服はNG」という女性もいます。「おっぱいが見える洋服を着るときは、ギャラアップ」なんてブランドも多いです。そう考えると、「おっぱい?そんなの気にしているの?」なんて業界人は少数派で、モデルもブランドも、「おっぱいが見える洋服を着るのは、勇気がいること。ツラいこと。断ったり、ギャラをアップしたりしなければいけないもの」と認識しているワケですよね?そう考えると、「もう、本当にブラジャー着けましょうよ」と思うのです。

 そんな話を、「WWDジャパン」のために長年バックステージでの撮影を続けているフォトグラファーの景山郁さんに振ったら、悲しいエピソードを教えてくれました。バックステージで泣いていたモデルの話です。

 彼女は「おっぱいが見える服」を着てランウエイを歩きました。するとその後、その写真が「ペチャパイ」的な辛らつなコメントとともにSNSに上がってしまったのだそうです。悔しくて涙が止まらず、バックステージのヘア&メイクアップアーティストに慰めてもらっていた、そんな話です。

 そう、今は、誰もが撮影できて、誰もが世界中に向けてデジタルの世界に写真をアップできる時代なのです。昔とは違います。「おっぱいが見えてしまった」モデルの写真は、(私たち「WWD JAPAN.com」も写真は加工・修正しないので、片棒を担いでしまっているのかもしれませんが)世界中に出回り、永遠に残ってしまうのです。もうマジでブラジャー着けて良いでしょう?これでもまだ、ダメですか?

 ちなみにインスタグラムなどでは、おっぱいが見えている写真はアップ禁止。削除されてしまいます。「おっぱいが見える洋服」は、プロモーションにとっても効果的ではないのです。

 「ブルマリン」などの会場に行くと、こちらがビックリするくらいセクシーな洋服で自信満々の女性もいます。お尻が半分、おっぱいも半分見えているケースは少なくありません(笑)。でも、それは彼女たちの意志。「おっぱいが見える服」から逃れられないモデルとは、事情が全く異なります。洋服は、とても素敵です。美しい体を見せつけることは、人に勇気を与えることだとも思います。でも、それは選択できる状況であるべき。そんな状況にないモデルのおっぱいが見えると、洋服さえ素直に賞賛できない自分がいます。そんな人は、少なくないのではないでしょうか?

 だからこそ、ブランドには通例にとらわれず、考えて欲しいのです。

 「それでもまだ、ブラジャーはつけられませんか?」。