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「ディオール」と一緒に女子大生が個性について考える 東京で開催のエンパワーメントプログラム潜入レポ

 「ディオール(DIOR)」はこのほど、若い女性がキャリアを築く上でのサポートを目的とした交流・学びの場「ウーマン・アット・ディオール(WOMAN @ DIOR)」の東京でのプログラムを開催しました。東京でのイベントには、就職活動を通して人生のビジョンを描き始めた大学生ら16人が参加。自己分析と自身に対する自信、それらを踏まえた上での他者との違いなどを考える座学とワークショップに挑戦した後、シャンパンで乾杯し、親睦を図る“女子会”で終了しました。以後参加者は社会貢献活動に取り組みつつ、ここからさらに選抜される代表7人(予定)は来年3月パリに渡り、世界の参加者を前にして活動の成果を発表します。今年、このプログラムには、フランスはもちろん、イギリスやイタリアなどのヨーロッパ、アメリカ、中国、韓国、そしてアラブから450人以上が参加しています。

 プログラムを担うエマニュエル・ファーヴル(Emmanuelle Fabre)クリスチャン ディオール クチュール ヒューマンリソーシズ ディレクターは趣旨を、「才能ある女性が彼女たち自身、ならびに夢を自覚するためのサポート。特に自信を持ち、仲間と強固なネットワークを築く価値という、学校では教えてくれない学びの機会を提供したい」と話します。重要視するのは、「強固なネットワーク」なのでしょう。彼女は次世代を担う女性を「私生活を犠牲にせず、つながり、ネットワークを深め、正直に、競争を恐れずリーダーシップを磨ける人物」と捉えます。一人のカリスマではなく、個性豊かなコミュニティーで社会をけん引しようというのは、実に今っぽいところ。とは言え率直に言ってプログラムは、日本の女性が置かれている現状よりもずっと先、女性が男性同様に活躍する社会を実現するための過程でもありながら、さらに先の未来でもある印象です。エマニュエル・ディレクターは、「これは、CSR(企業の社会的責任)だけではない。社会的価値を創造し、ポジティブな社会変革を促進するプログラムなの」と壮大な野望、そして夢を語ります。アーティスティック・ディレクターに就任して最初に発表したコレクション「私たちは皆、フェミニストであるべき(We Should All Be Feminists)」以来、絶えず女性のエンパワーメントを考え続けるマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)同様、ビジョンは壮大です。

 東京でのプログラムは、応募者多数につき事前選考が行われました。選考基準は、大きく分けて3つ。「才能、野望、そして寛容さ」だそうです。2つ目の「野望」は、ともすれば日本ではネガティブな印象を受けるかもしれません。でも、エマニュエル・ディレクターが目指す「社会的価値の創造」は、確かに遠大な野望です。こんなに強い言葉を、臆せず、堂々と発する「ディオール」を頼もしく思うし、受講者の多くが将来、同様に野望を語る人物になればと願います。

 と、42歳のオジさん、女子に勝手なお願いをしましたが、それは杞憂みたいな願いでした(笑)。僕が親戚のおじさんなら「立派になったねぇ〜」としみじみしてしまうほど、参加者、デキる!!大半が英語を流暢に操る(ちなみにプログラムは全編英語でした)バイリンガル(以上)の語学力を有していましたし、発言を求められると次々挙手。一般的な日本の授業風景とは全然違います。この子たちなら、自分の野望をかなえ、将来、マリアやエマニュエル、そして「ディオール」が願う真の意味で平等な社会を作れるのかもしれない。マジでそう期待させるガールズが集結した、そんな印象です。

 プログラムはまず、「シンギュラリティー」を学ぶことから始まりました。デジタルの世界に足を突っ込む僕にとっての「シンギュラリティー」は、2045年までに訪れるとされる“AI(人工知能)が、人間を超えてしまうとき”のことですが、一般的には「特異性」という意味。他の人にはない、自分だけのアイデンティティーに迫ろうという講座でありワークショップです。ここで彼女たちの背中を押したのは、オスカー・ワイルドの(Oscar Wilde)の「Be Yourself, the Others Are Already Taken!(自分らしくあれ!誰かの真似をしても、その人には決して追いつけないから)」という言葉。アイルランド出身の詩人オスカー・ワイルドは、退廃的な19世紀末文学の代表家でしたが、同性愛者だったがゆえに収監されて失意のままに没した人物です。こういう耽美な人物が登場するのは、フランスメゾンならではですね(笑)。

 その後は、自分の「シンギュラリティー」をノートの表紙に表現するワークショップや、完成した表紙について語り合うディスカッションが続きます。プログラム中は随時「ディオール」のスタッフがメンターとなって、参加者をフォローアップ。自己分析や社員との交流など、就職活動に女性のエンパワーメントについての学びがプラスされたようなプログラムです。あ、美味しいスイーツもプラスされてました(笑)。

 このプログラムを担当したのは、パリで女性のエンパワーメント活動に尽力する作家でありジャーナリストのフローレンス・サンディス(Florence Sandis)。ここでは、(男性ではありますがw)僕が聴講して心に残ったフローレンスの言葉をいくつか紹介しましょう。

・「嫌われることへの恐怖は、身を守るために大事なこと。でも、それは脇に置きましょう。自分のゴールや目標に向かう道の前には置かない方が良いの」
・「勇敢になるための第一歩は、声に出すこと。『自分は、強くなんかない』と理解してもらうこと。その上でリスクを覚悟すること」。
・「一人は、Invisible(その姿は見えてこない)。仲間と一緒なら、Invincible(無敵)」。
・「世界で働く女性エグゼクティブ99%は、結婚したり、パートナーと幸せな生活を送っていたりする。オトナになったら、パートナーがいなくちゃダメ。素敵な人を見つけて」。

 最後のフレーズからは、パリを感じませんか(笑)?

 そのあとは、働く女性を支援する会社ポピンズの轟麻衣子社長がスピーチ。メリルリンチ(MERRILL LYNCH)を経て、「シャネル(CHANEL)」「グラフ(GRAFF)」そして「デビアス(DEBEERS)」で要職を歴任した轟社長のキャリアや考え方は、すぐに真似したり実践できたりするものではなかいかもしれないけれど(笑)、刺激になったことは間違いないでしょう。

 参加者に話を聞くと、「自分を周りの人と比べると悲しくなる時もあったけれど、大事なのは自分らしくいること。日本は周囲に溶け込むことに価値を置くけれど、それはグローバル・スタンダードではないことを知った」や「高価なバッグや素敵な洋服で女性を彩っているブランドというイメージは持っていたけれど、本当に女性を大事に捉えているんだと知った。好きな洋服を、好きな時に着ることは、自分の自信に繋がることも学んだ」「『女性らしく』ではなく、『自分らしく』を応援してくれるブランドと感じた」などの反応がありました。

 エマニュエル・ディレクターは、「ウーマン・アット・ディオール」はスタッフにとっても自身が働くメゾンの意志に気付く1つの契機となり、「インクルーシブな価値観が広がることで、恒常的な成長の原動力になっている」と話します。メリットは参加者のみならず、メンター、そしてメゾン、ひいては業界、さらには世界にまで広がる可能性を秘めていることを教えてくれました。